あなたに本当に足りない栄養素はどれか
シリーズ:栄養素
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この記事のポイント ・約11分で読めます
- 「摂取量が足りない人の割合」は「欠乏症の人の割合」ではありません。ビタミンDでは、両者に約18倍の差があります。
- 欠乏症は、年齢、日光を浴びる量、吸収、出血、制限食、妊娠など、特定できるグループに集中しています。
- 本当の欠乏を補うことには効果があります。足りている人がさらに上乗せしても、ほとんど効果はありません。
- 摂りすぎは現実のリスクで、各国の規制当局は上限を厳しくしつつあります。最も目立つのはビタミンB6です。
どちらも正しく、どちらも米国政府の調査データから出た2つの数字があります。米国人の約94%は、食事から十分なビタミンDを摂れていません。一方、血中濃度が欠乏のリスクがあるほど低いのは、米国人の約5%です。
これまでに目にしたサプリメントの広告は、ほぼすべて1つ目の数字の上に成り立っています。しかし、自分の栄養について役に立つ判断をするために必要なのは、ほぼすべて2つ目の数字のほうです。
この記事では、普通の人が本当に不足しているのはどの栄養素か、本当にリスクがあるのは誰か、サプリメントをきちんと検証した大規模なランダム化試験で何がわかったのかを整理します。そして逆方向のリスクも取り上げます。ビタミンの摂りすぎは現実の問題であり、規制当局も対応に動き始めているからです。
摂取量の数字が示していること
推定平均必要量(EAR)とは、ある集団の健康な人の半数が必要量を満たす摂取量のことです。全国の食事摂取調査をこれと比べると、下のような数字が出てきます。サプリメントの宣伝に使われるのはこの数字です。
推定平均必要量を下回る米国人の割合
食事のみからの摂取量。NHANES 2007〜2010年、4歳以上
出典:Linus Pauling Institute(Oregon State University)がまとめたNHANES 2007〜2010年の習慣的摂取量データ
これとは別に、「米国人のための食事ガイドライン(Dietary Guidelines for Americans)」は、公衆衛生上の懸念があるほど摂取が少ない成分としてカルシウム、カリウム、食物繊維、ビタミンDの4つを挙げ、妊娠中と一部の乳児については鉄を加えています。2026年1月に公表された2025〜2030年版もこの枠組みを維持しつつ、ほかの部分では大きく変わりました。添加糖の基準が厳しくなり、超加工食品に初めて言及し、たんぱく質の目標は体重1kgあたり1.2〜1.6gへと大幅に引き上げられています。ハーバード大学の栄養研究者らは、特に飽和脂肪についてのちぐはぐなメッセージなど、その一部を公に批判しています。
摂取量の数字が問題を大きく見せる理由
摂取量の統計が測っているのは「口に入ったもの」です。血液中にあるものではありません。そしていくつかの栄養素では、この2つは大きく異なります。
ビタミンD:同じ集団を2通りに測ると
食事からの摂取量と、実測した血清25-ヒドロキシビタミンD
出典:Linus Pauling Institute(摂取量)、NIH(米国国立衛生研究所)Office of Dietary Supplements, Vitamin D Fact Sheet for Health Professionals(血清値)
この差は3つの理由で説明できます。まず、皮膚は日光を浴びるとビタミンDを作りますが、食事摂取量の計算にはそれが反映されません。次に、多くの主食的な食品には栄養素が添加されており、かつてよく見られたいくつかの欠乏症は、強化食品によっていつのまにかなくなっています。そして、EARは集団の物差しであって、個人の物差しではありません。EARを下回っていても、その人が不足しているとは限りません。無作為に選んだ人がEARを下回っていれば、不足している可能性がやや高い、というだけです。
実際的な結論ははっきり言っておく価値があります。全国的な不足の統計は、診断ではありません。だからこそ、役に立つ問いは「みんなに足りないビタミンは何か」ではなく、「自分は実際に不足しやすいグループに入っているか」です。
本当にリスクがあるのは誰か
欠乏症は特定の人に集中します。日光、吸収、出血、制限食、特定の薬、ライフステージに沿って現れるもので、一般の人全体に広がっているわけではありません。
保健機関が注意を促すグループと、不足しやすい栄養素
米国の食事ガイドラインとNIHのファクトシートが挙げるリスクグループ
| 当てはまる人 | 気にしたい栄養素 | 理由 |
|---|---|---|
| 高齢者 | ビタミンD、ビタミンB12 | 加齢で皮膚での合成が減る。胃酸が減り、食品からのB12の吸収が落ちる |
| 日光を浴びる機会が少ない、または肌の色が濃い | ビタミンD | 皮膚での合成が少ない。NHANESでは、非ヒスパニック系黒人の成人で欠乏率が最も高かった(17.5%) |
| BMI 30以上、または胃バイパス手術後 | ビタミンDなど | ビタミンDが体脂肪に取り込まれる。バイパス手術で吸収が落ちる |
| クローン病、セリアック病、嚢胞性線維症 | 脂溶性ビタミン(A、D、E、K) | 脂肪の吸収不良 |
| ヴィーガンや厳格な菜食 | ビタミンB12 | B12が天然に含まれるのは動物性食品と強化食品だけ |
| 妊娠中、または妊娠を計画中 | 葉酸、鉄、ヨウ素 | 必要量が大きく増える。葉酸は妊娠後ではなく妊娠前が大事 |
| 月経の出血が多い | 鉄 | ほかの点では健康な成人の鉄欠乏は、続く出血が主な原因 |
| 完全母乳で育つ乳児 | ビタミンD | 母乳だけでは足りず、補給が標準的な推奨 |
出典:NIH Office of Dietary Supplements のファクトシート、Dietary Guidelines for Americans
このリストに当てはまるなら、決め手になるのは広告のうたい文句ではなく血液検査です。医師に頼めば検査してもらえます。当てはまらないなら、正直なところ、大きく不足しているものはおそらくないでしょう。それがなぜ重要なのかは、下の試験結果で説明します。
リスクグループに当てはまる人向け (広告リンク)
検査や医師に不足を指摘されたときに飲む価値があるもの。「とりあえず」で飲むものではありません
マルチビタミンやビタミンB群のサプリを使うなら、ビタミンB6の含有量をこの記事の後半で紹介する上限と照らし合わせてください。処方薬を飲んでいる場合は、何を飲んでいるか薬剤師に伝えましょう。この記事の内容は医学的な助言ではありません。
サプリメントをきちんと検証したらどうなったか
観察研究では、サプリメントを飲んでいる人のほうが健康だという結果が繰り返し出ています。しかし交絡を取り除けるランダム化試験では、たいていもっと地味な結果になります。現在の根拠の状況を決めているのは、次の3つの結果です。
買う前に知っておきたい3つの結論
大規模ランダム化試験と米国予防医学作業部会(USPSTF)のレビュー
出典:U.S. Preventive Services Task Force の勧告声明(2022年6月21日)、LeBoff ら、New England Journal of Medicine、2022年、COSMOS試験、2023年
3つを合わせて読むと、「サプリメントは無意味」でも「誰もが飲むべき」でもないルールが見えてきます。欠乏を補うことには効果がある。すでに足りている人が上乗せしても、ほとんど効果はない。そのことを最もはっきり示したのがVITALです。数万人を対象に妥当な用量で行われたよく設計された試験で、何も効果が見つかりませんでした。大きな理由は、参加者がそもそもビタミンD不足ではなかったことです。
逆方向のリスク:摂りすぎも危ない
これはサプリメント関連の記事がほとんど取り上げない半分であり、リスクを扱うこのサイトで栄養の記事を書く理由でもあります。脂溶性ビタミンは体にたまります。水溶性ビタミンの中にも、気づかないうちに達してしまう量で害が出るものがあります。同じ栄養素が、マルチビタミン、エナジードリンク、「ストレス対策」サプリに同時に入っていることがあるからです。
今いちばんわかりやすい例がビタミンB6です。2023年、欧州食品安全機関(EFSA)は末梢神経障害を根拠に、耐容上限量を25mgから1日12mgに引き下げました。2025年11月には、オーストラリア薬品・医療品行政局(TGA)がさらに踏み込んで販売規制を決めました。2027年6月1日から、1日量あたり50mgを超える製品は薬剤師の関与が必要になり、200mgを超える製品は処方箋が必要になります。
上限はどこにあるか、そして規制当局の見解はどれほど違うか
成人の耐容上限量
出典:ビタミンB6とセレンに関するEFSAの科学的意見(2023年)、オーストラリアTGAの決定(2025年11月)、NIH Office of Dietary Supplements
実際の危険は「重ね飲み」です。用量が控えめかどうかを判断する前に、マルチビタミン、別に飲んでいるB群サプリ、強化シリアル、粉末ドリンクなど、摂っているものをすべて足し合わせてみてください。
まずは食事から。その具体的な意味
米国のガイドラインが本当に摂取不足だとしている4つの栄養素については、錠剤より食事のほうがうまく補えます。不足の正体は実は「加工されていない食品」の不足であること、そして豆の食べすぎで過剰摂取になった人はいないことが理由です。
摂取不足の4つの栄養素と、その供給源
米国の食事ガイドラインで公衆衛生上の懸念とされる成分
出典:Dietary Guidelines for Americans、NIH Office of Dietary Supplements のファクトシート
どんな買い物よりもこれらの数字を動かすのは、2つの習慣です。ほとんどの食事に豆か全粒穀物を入れること、そして週2回は脂の多い魚を食べること。退屈なアドバイスですが、だからこそ何度データと照らし合わせても生き残っているのです。
「食事から」を続けるための道具 (広告リンク)
カルシウム、カリウム、食物繊維は食材で補う問題。これがあれば食材を使った料理が手早くなります
豆に摂取上限が必要になった人はいません。食事から摂れる栄養素なら、上限を気にしなくていいのは食事のほうです。
この記事では、あえてリンクを絞っています。鉄と葉酸の補給は、記事ではなく血液検査と医師の判断に基づいて決めるべきものなので、購入リンクは付けずに説明だけにしています。豆類、オーツ麦、脂の多い魚などの基本食材は、ネットよりスーパーのほうが安く買えます。オーツ麦を買うためにわざわざウェブサイトへ誘導するつもりはありません。
よくある質問
Q. 毎日マルチビタミンを飲むべき?
USPSTFは、心血管疾患やがんを予防するという根拠は不十分だと結論づけています。COSMOSでは、60歳以上の成人で記憶力にささやかな効果が見られました。標準的な用量のマルチビタミンで深刻な害が出ることはまれです。つまり高齢者にとっては、リスクの小さい選択肢として妥当です。ただし何かの代わりになるものではなく、根拠から見て誰もが飲まなければならないものでもありません。飲むなら、B6の含有量を上の上限と照らし合わせてください。
Q. 自分が欠乏しているかどうかはどうすればわかる?
医師を通じて検査を受けることです。基本的には、上のリスクグループに当てはまる場合や症状がある場合に限られます。健康な成人に定期的なスクリーニングは推奨されていません。よくある欠乏症の症状は、疲れ、だるさ、気分の落ち込みなど、困ったことにはっきりしないものばかりです。だからこそ推測では判断できず、広告はそのあいまいさにつけ込みます。
Q. ビタミンDは多いほどいい?
いいえ。VITALでは2万5,000人以上に1日2,000 IUを投与しましたが、大半がもともと足りていた集団で、骨折、がん、心血管疾患のいずれにも効果は見られませんでした。推奨量(RDA)は600〜800 IU、上限は4,000 IUです。それを超えると、効果が大きくなるのではなく、高カルシウム血症のリスクが出てきます。
Q. 人口の半数がEARを下回っているマグネシウムは?
摂取量の不足は事実で、全粒穀物、ナッツ、豆類、葉物野菜の摂取が少ないことを反映しています。ただし、腎機能が正常な健康な人で、臨床的に定義されるマグネシウム欠乏症はまれです。錠剤が必要だという意味ではなく、食生活についてのサインとして受け止めてください。
Q. サプリメントは薬と相互作用する?
はい。しかもあまり知られていないリスクの1つです。ビタミンKと抗凝固薬、カルシウムや鉄と一部の抗生物質や甲状腺の薬、メトホルミンの長期服用によるB12の低下は、いずれもよく知られています。処方薬を飲んでいるなら、どんなサプリメントを飲んでいるか薬剤師に伝えてください。無料でチェックしてもらえますし、薬剤師はこうした確認が得意です。
まとめ
- 「摂取量が足りない人の割合」は「欠乏症の人の割合」ではありません。ビタミンDでは、両者に約18倍の差があります。
- 欠乏症は、年齢、日光を浴びる量、吸収、出血、制限食、妊娠など、特定できるグループに集中しています。
- 本当の欠乏を補うことには効果があります。足りている人がさらに上乗せしても、ほとんど効果はありません。
- 摂りすぎは現実のリスクで、各国の規制当局は上限を厳しくしつつあります。最も目立つのはビタミンB6です。
- カルシウム、カリウム、食物繊維については、答えは食事です。この答えは何十年も変わっていません。
参考文献
- Linus Pauling Institute, Oregon State University, “Micronutrient Inadequacies in the US Population: an Overview,” compiling NHANES 2007–2010. lpi.oregonstate.edu
- NIH Office of Dietary Supplements, “Vitamin D — Fact Sheet for Health Professionals.” ods.od.nih.gov
- US Preventive Services Task Force, “Vitamin, Mineral, and Multivitamin Supplementation to Prevent Cardiovascular Disease and Cancer,” recommendation statement, 21 June 2022. uspreventiveservicestaskforce.org
- LeBoff MS et al., “Supplemental Vitamin D and Incident Fractures in Midlife and Older Adults,” New England Journal of Medicine, 2022. nejm.org
- COSMOS trial, multivitamin and cognition results (2023); summary via the National Eye Institute. nei.nih.gov
- EFSA NDA Panel, “Scientific opinion on the tolerable upper intake level for vitamin B6,” EFSA Journal, 2023. doi:10.2903/j.efsa.2023.8006
- Therapeutic Goods Administration (Australia), “Stronger safety controls to be introduced for products containing vitamin B6,” November 2025. tga.gov.au
- ODPHP, “New Resources Identify Where to Find Key Nutrients,” on the dietary components of public health concern. odphp.health.gov
- Harvard T.H. Chan School of Public Health, The Nutrition Source, “Dietary Guidelines for Americans 2025–2030,” January 2026. nutritionsource.hsph.harvard.edu
この記事は一般的な情報であり、医学的な助言ではありません。医師や薬剤師への相談の代わりになるものではなく、病気の診断や治療に使うべきものでもありません。妊娠中の人、処方薬を飲んでいる人、持病の管理をしている人は、サプリメントを始める前に確認してください。
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