メキシコの建物・産業火災:命で払った教訓

ハリスコ州グアダラハラの中央消防署
資料写真:2023年8月、グアダラハラの中央消防署(Parque de bomberos)。 写真:JavierMunozF(Wikimedia Commons、CC BY 4.0)
教訓が根づかない更新 2026年10月24日

トレンドの要約

  • 国家防災センター(CENAPRED)が化学・技術災害としてまとめる火災、爆発、漏えい、流出により、2022年にメキシコで88人が亡くなりました。災害による死者全体の18%にあたり、被害と損失は約10億7,000万ペソでした。
  • 死者の多い事故はまれですが、起きると規模が大きくなります。2009年のエルモシージョのABC保育所火災では子ども49人が、2013年のペメックス(Pemex)本社ビル爆発では37人が、2019年のトラウエリルパンのパイプライン爆発では少なくとも133人が亡くなりました。
  • 繰り返されるパターンが2つあります。サン・マルティン・テスメルカン(2010年)とトラウエリルパン(2019年)の爆発の背景にはパイプラインからの燃料窃盗があり、メキシコ州トゥルテペックでは花火の爆発が何度も起きています。
  • 建物火災の死者の多くは、炎ではなく煙で亡くなっています。2023年のシウダー・フアレスの移民収容施設火災では男性40人が、2025年11月のエルモシージョのワルドス(Waldo’s)店舗火災では少なくとも23人が亡くなり、その大半は有毒ガスが原因でした。
88化学・技術災害による死者(2022年)
49ABC保育所火災で亡くなった子ども(2009年)
133トラウエリルパン爆発後に数えられた死者(2019年2月)
40シウダー・フアレス移民施設火災の死者(2023年)

数字で見る現状

メキシコには、住宅以外の建物火災や産業火災による死者を毎年数えた統計がひとつもありません。最も近い全国の系列は、CENAPREDが毎年まとめる災害の影響に関する報告書で、火災、爆発、漏えい、流出を化学・技術災害として扱っています。2022年にはこの分類で88人が死亡し、その年の災害死者496人の18%を占めました。被害と損失は10億7,000万ペソ(10億6,716万ペソ)、損壊した住宅は137戸、影響を受けた人は19,692人でした(CENAPRED、2022年版概要)。2020年にはこの分類で80人が亡くなり、災害死者399人の約20%を占めました。被害は約5億6,700万ペソ、損壊住宅は257戸、影響を受けた人は14,357人です(CENAPRED、2020年版報告書)。CENAPREDの化学分類には森林火災も含まれるため、建物火災の件数ではなく、大まかな目安として見る必要があります。

記録を左右しているのは個々の大事故です。2009年6月5日、ソノラ州エルモシージョのABC保育所で火災が起き、子ども49人が亡くなりました。火元は同じ建物にあった州政府の倉庫でした(La Jornada、Excélsior)。2011年8月25日には、モンテレイのカジノ・ロワイヤルが放火され52人が死亡しました。全員が有毒な煙によるもので、非常口は施錠されていました。2013年1月31日、メキシコシティにあるペメックスのB2ビルの地下でたまったガスが爆発し、37人が死亡、101人が負傷しました(Forbes México)。トゥルテペックのサン・パブリート花火市場では、2016年12月20日の爆発から2日後の時点で死者32人、負傷者50人以上でした(La Jornada)。最終的な数はこれより多くなっています。2019年1月18日、イダルゴ州トラウエリルパンで不正に穴を開けられたパイプラインが、燃料を集めに来た群衆の前で爆発しました。イダルゴ州政府は2月下旬までに死者を133人と数えています(adn40)。2023年3月27日、シウダー・フアレスの国立移民庁(INM)の施設で火災が起き、収容されていた男性67人のうち40人が死亡、27人が負傷しました(国家人権委員会(CNDH))。海上では、ペメックスのプラットフォーム火災が繰り返されています。2024年4月のAkal-Bでは作業員1人が死亡、13人が負傷しました(Expansión)。

背景にあるもの

燃料窃盗は、メキシコ特有の要因です。窃盗団がペメックスのパイプラインに不正な穴を開け、漏れ出す燃料に人が集まります。2010年12月19日のサン・マルティン・テスメルカンの爆発は不正な取り出し口から始まり、当初の集計で少なくとも11人が死亡しました(El Universal)。2019年のトラウエリルパンも同じ経過をたどっています(Cunningham、NACLA Report on the Americas、2019年)。検察当局の初期の見立ては、燃料の蒸気の中を人が動いたときに、化学繊維の衣服などから出た火花が引火したというものでした(Animal Político)。建物では、可燃物を人のいる部屋の隣に保管する、出口が少ない、扉が施錠されている、という欠陥が繰り返し見られます。ABC火災を調べたやけどセンターの研究は、この保育所には「惨事を深刻にした防火上の不備が数多くあった」と指摘しています。現場で亡くなった子どもは29人でした(Greenhalghら、Journal of Burn Care and Research、2012年)。

規則は大惨事のたびに厳しくなってきました。2010年12月9日に公布されたNOM-002-STPS-2010は、すべての職場に火災リスクを通常か高リスクかに分類させ、年1回以上の消防訓練(高リスクの職場は2回)、消火器の毎月の点検、高リスクの職場では消防隊の設置を求めています(連邦官報(DOF)、経済省)。ABC火災にちなんで「6月5日法」と呼ばれる2011年10月24日の保育法は、内部の市民防護計画、少なくとも2か月ごとの訓練、煙感知器の設置、50メートル以内に危険な施設がないことを義務づけています(下院)。2012年6月6日の市民防護一般法は、公共・民間・社会のすべての建物に内部の市民防護計画を求めています(下院)。弱点は執行です。2016年に裁判官がABC火災で21人に判決を言い渡しましたが(Excélsior)、シウダー・フアレスの火災から3年たっても確定判決を受けた人はいません(Vanguardia)。

最近の事例

  • 2026年3月27日:40人が亡くなったシウダー・フアレスの移民施設火災から3年となり、人権団体は、INMの職員や警備員らに対する刑事事件がまだ続いており、確定判決は出ていないと訴えました(Vanguardia)。
  • 2026年1月26日:ソノラ州の裁判官は、エルモシージョのワルドス店舗火災をめぐり、過失致死や法的義務の不履行などの罪で6人を公判に付しました。検察は8人と会社を訴追していました(N+、Expansión)。
  • 2025年11月1日:エルモシージョ中心部のディスカウント店ワルドスで火災が起き、少なくとも23人が死亡しました。うち6人は未成年です。州検察は、大半が有毒ガスを吸い込んで亡くなったとし、最初の見立ては店内の変圧器による事故だと述べました(Zeta Tijuana)。

報道発表・公式報告(2023〜2026年)

直近4年分の主な発表を、1年に最大5件、新しい順に載せています。多くは国立統計地理情報院(INEGI)、保健省、国家防災センター(CENAPRED)、国立地震局(SSN)、国家森林委員会(CONAFOR)、海軍省、金融サービス利用者保護委員会(CONDUSEF)、連邦官報などの国の機関、議会、汎米保健機構(PAHO)や世界保健機関(WHO)などの国際機関、学術誌によるものです。公式の記録が残っていない古い年を中心に、主な出来事はラ・ホルナダ、エル・ウニベルサル、エクセルシオール、エル・フィナンシエロ、アニマル・ポリティコ、メキシコ・ニュース・デイリーなどメキシコの報道機関の記事で補っています。タイトルはスペイン語の原文を英訳したものです。2007〜2022年の発表は、2023年の後にある折りたたみリストにあります。

2026

2025

2024

2023

メキシコの建物・産業火災に関する主な発表20年分を見る(2007〜2026年)2007〜2022年の34件、1年最大5件、新しい順

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

5件に満たない年が多く、まだ1件もない年もあります。政府ポータル(gob.mx)の一部、連邦官報、古い機関ページの一部を、リストを作った時点で開けなかったためで、実際に開いて確認できたものだけを載せています。リストには今後も追加していきます。ページに日付がない場合は発行元の一覧にある日付を使い、日付のない年次報告は公表年に入れています。

写真リスト

トゥルテペックの伝統的な花火の塔(カスティージョ)
2016年にサン・パブリート花火市場の爆発が起きた花火の町、メキシコ州トゥルテペックの伝統的な花火の塔(カスティージョ)。2013年3月撮影。 写真:Mosaico Tultepequense(Wikimedia Commons、CC0)
メキシコシティの消防署に展示された復元されたクラシック消防車
資料写真:2018年8月、消防士の日にメキシコシティの消防署で展示された復元済みのクラシック消防車。 写真:Gobierno CDMX(Wikimedia Commons、CC0)

このページのつくり方 数値は上にリンクした公式の統計発表と研究によります。速報値・暫定値は後で改訂されるため、その旨を明記しています。全国の死亡データは国立統計地理情報院(INEGI)の死亡登録によるもので、確定は翌年になります。当局者の発言を伝える報道から引いた数値もあり、その場合は媒体名を示しています。金額はメキシコ・ペソで示しています。見出しや引用はスペイン語からの翻訳です。写真はパブリックドメインまたはクリエイティブ・コモンズの画像で、各キャプションに出典を記しています。「資料写真」は説明のためのもので、キャプションに書かない限り本文の出来事の写真ではありません。このページは傾向をまとめたもので、個別の安全・医療・法律・金融の助言ではありません。