クライミングジムのチョーク粉じん、混雑時は1立方メートル4,000マイクログラムに
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- 混雑したドイツのクライミングジムでは、PM10が1立方メートルあたり1,000〜4,000マイクログラムに達し、そのほぼすべてがチョークでした。一般の体育館はふつう100未満でした。
- 2026年に測定されたルーマニアのジムでは、1日平均のPM10がWHO指針値の2.3〜2.8倍でしたが、利用者は空気を10点満点で8点と評価していました。
- オーストリアのクライマー109人では、粉じんの多いセッションの後に肺機能がわずかに低下し、気道の炎症がある人ほど低下が大きくなりました。長期的な影響はわかっていません。
- 液体チョークはチョーク禁止と同じくらい粉じんを抑えました。チョークボールや固形チョークでは、はっきりした改善はありませんでした。
2025年1月にルーマニアのティミショアラで開業したクライミングジムは、空気の研究者にとって格好の調査対象になりました。最初の冬、研究チームが基準測定用のサンプラーで24時間ずつ空気を採取したところ、気道まで届く粗い粒子であるPM10の1日平均は1立方メートルあたり104マイクログラムと127マイクログラムで、世界保健機関(WHO)の24時間指針値の2.3倍と2.8倍でした。換気装置を止めた混雑する夜には、短時間の値が2,500を超えました。それでも、調査に答えた61人の利用者は空気を10点満点で8点と評価していました。
この粉じんの大半は、クライマーの手から生まれます。クライミング用のチョークは「マグネシア・アルバ」と呼ばれる含水塩基性炭酸マグネシウムで、2008年にドイツの研究者が、屋内の粉じんの大きな発生源であることを示しました。2025年にはウィーンの研究チームが、もう一つの発生源を報告しています。クライミングシューズの靴底から削れたゴムで、自動車タイヤと同じ添加物の一部を含んでいました。
この記事では、チョークが空気中にどれだけの粉じんを出し、肺にどんな影響を与えるとみられるのか、濃度がいつ、どこで高くなるのかを確認します。そのうえで、どんな対策で下げられることが測定されているのか、そしてジム通いをやめるのではなく慎重に登ることが賢い答えである理由を見ていきます。ドイツ、オーストリア、チェコ、ルーマニア、米国での測定をもとにしています。
チョークの粉が空気と肺にもたらすもの
クライマーがチョークを使うのは、汗ばんだ指を乾かすためです。ただ、その効果は評判ほど大きくありません。2001年の実験では、チョークはむしろ指先と岩の間の摩擦を下げました。皮膚が乾いて柔軟性を失うためと考えられています。経験豊富なクライマー19人を対象にした2016年の研究では、摩擦にも前腕の筋活動にも差はありませんでしたが、ホールドにぶら下がっていられる時間はチョークありで62.9秒、なしで49.3秒でした。
その代償は空気中に現れます。ヴァインブルッフ氏らは、ドイツのクライミングジム9か所と一般の体育館5か所を測定しました。クライミングジムのPM10の平均は、ふつう1立方メートルあたり200〜500マイクログラムで、数時間続く混雑時には1,000〜4,000に達しました。粒子のほぼすべてがチョークでした。湿度100%でも溶けず、気道に沈着しうる大きさでした。同じくチョークを使う体操の練習場も、同じくらい粉じんが多くなっていました。
ドイツのクライミングジムのチョーク粉じん
PM10(1立方メートルあたりマイクログラム)。クライミングジム9か所と体育館5か所で光散乱式粒子計数器により測定。棒は報告された範囲の上限を示す。
出典:Weinbruch et al., Journal of Environmental Monitoring 10:648(2008)、WHO世界大気質ガイドライン(2021)。WHOの値は24時間平均で、ジムの値は活動中の数時間の値。
この粉じんがクライマーに何をもたらすかは、小規模な研究でしか調べられていません。オーストリアの研究者は、3か所のジムで平均1.8時間のセッションの前後に、クライマー109人の肺機能を測りました。粉じんが多いほど肺機能の低下は大きく、その差は小さいものの統計的に有意でした。登る前の呼気一酸化窒素が高い人、つまりアレルギー性喘息にみられるタイプの気道の炎症がある人ほど、低下は大きくなりました。この研究のきっかけは、喘息のあるクライマーから「登っている最中や後に症状が悪化する」という声が寄せられたことでした。
症状も決して珍しくありません。ルーマニアのジムでは、調査に答えた61人のうち32.8%が、登っている最中か後に、呼吸器や刺激の症状を少なくとも一つ経験したと答えました。クライマーやスタッフを何年も追跡して長く続く害があるかを調べた研究はなく、ルートセッターなどジムのスタッフ個人の曝露を測った公表データも見つかりませんでした。
粉じんが集中するところ

粉じんは人の数についてきます。ドイツのジムでは、より細かい粒子であるPM2.5がふだんは1立方メートルあたり30〜100マイクログラムで、利用者が多いときには500まで上がりました。米国の二つの大学のクライミングウォールを低価格の測定器で比べた研究では、一方は「良好」、もう一方は「健康に悪い」から「非常に健康に悪い」の水準でした。粉じんの多いほうでは、測定値のばらつきの75%が、一般開放の時間帯かどうかで説明できました。
建物の違いも、人の数と同じくらい大きく効きます。プラハの二つのジムを比べた論文では、一方のPM10は1立方メートルあたり125〜167マイクログラムで、最も混む時間帯にはその4倍にもなりえ、もう一方では最大値が368〜901でした。どちらも屋外の空気の1日あたりの基準を超えていました。大会も人を密集させます。オーストリアで開かれた2日間の大会では、中央の測定器のPM10が初日を通じて上がり続け、1立方メートルあたり500マイクログラムに達しました。
新しいジムとWHO指針値の比較
ルーマニアのクライミングジムで、機械換気を運転した2日間に基準重量法サンプラーで測定した1日(24時間)平均の粒子濃度。WHOの24時間指針値の何倍かで示す。
出典:Nicolici, Ionel & Bisorca, Applied Sciences 16(5):2269(2026)。対象は1か所のジムで、晩秋から冬の測定。外部資金なし。
こうした比較には注意が要ります。WHOの指針値は燃焼由来の粒子が中心の屋外の空気をもとに、1日や1年の平均として作られたもので、クライマーがジムの空気を吸うのは数時間です。ルーマニアの研究者自身も限界を挙げています。光学式センサーは別の種類の粒子で校正されているため値は目安にすぎず、化学分析ではマグネシウムはPM10の重さのわずか0.031%でした。そのため、粉じんの大半がチョークだという主張は直接には定量されていません。調べたのも1か所のジムだけです。
二つ目の発生源は、より新しい発見です。ウィーンの研究チームは5か所のボルダリングジムで空気を採取し、シューズ30足を調べて、15種類のゴム添加物を見つけました。その一つの6PPDは、分解物が川のサケの大量死と結びつけられている物質です。15種類の合計は、靴底1グラムあたり25〜3,405マイクログラム、空気中の粒子で2.6〜37、床などに積もったほこりで1.5〜55でした。一部のジムでは、クライマーとスタッフの1日の推定摂取量(モデルによる推計)が、ほかの経路からの既知の摂取量を上回りました。
クライミングジムのゴム添加物
ゴム由来化合物15種類の合計(試料1グラムあたりマイクログラム)。空気試料はウィーンの5か所、ほこりとシューズは4か国9か所のジムから。棒は各範囲の上限を示す。
出典:Sherman et al., ACS ES&T Air 2(5):930(2025)。著者は競合する金銭的利益はないと申告。人の健康への影響は不明。
同じチームによる2026年の続報では、10か国41か所のジムから、積もったほこりとフットホールドにたまった粉を200以上分析しました。化合物はすべての試料から見つかり、その量とジムの特徴との関連は弱いものでした。著者らは、ジムの運営を変えるだけでは解決は難しく、靴底により安全なゴムを使うことが答えだと結論づけています。
効果が測定された対策

最もよく検証された対策は、液体チョークです。ヴァインブルッフ氏らは続く研究で、7通りのチョークの使い方で管理されたクライミングセッションを行い、PM10の値が25%以内で一致する3種類の測定器で粉じんを測りました。マグネシアをエタノールに懸濁させた液体チョークは、チョークを全面禁止した場合と同じくらい粉じんを低く抑えました。固形に押し固めたチョーク、粉のままのチョーク、2〜4ミリの粗い粒にふるい分けたチョークでは、はっきりした差はありませんでした。
粉を布袋に詰めたチョークボールも同じでした。手の中ではきれいに感じますが、測定では粉のチョークと比べて粉じんがはっきり減ることはありませんでした。著者らは液体チョークを「低予算の選択肢」と呼んでいます。建物の改修は要らず、習慣を変えるだけで済むからです。ただし、試験は一つのルールで行ったセッション全体を比べたものなので、効果を得るには部屋にいる全員が切り替える必要があります。
混雑したジムで機械換気を入れると
ルーマニアのジムで、混雑時に自然換気から機械換気に切り替えたときの粒子濃度の変化。1人あたりの値は、その場にいた人数で調整したもの。
出典:Nicolici, Ionel & Bisorca, Applied Sciences 16(5):2269(2026)。この設備は粗いプレフィルターで室内の空気を循環させるだけで、外気の供給はなかった。
この結果からは学ぶことがあります。換気装置は粗いフィルターで空気を循環させるだけで、著者らは最も細かい粒子が増えた原因を、そのフィルターと、気流がチョークを細かく砕いたことにあるとみています。二酸化炭素ははっきり改善しました。自然換気ではピークが3,500ppmを超えましたが、換気装置を運転すると1,505ppm未満にとどまりました。外気を取り入れ、細かい粒子に合ったフィルターを使うのが理にかなった改善策ですが、クライミングジムでの検証はまだありません。
屋内スポーツ施設の空気に関する2020年の総説は、クライミングジムで最も懸念されるのは粒子だとし、曝露を減らす方法としてフィルター付きの機械換気と適切な清掃を挙げました。ゴムの粉じんについて、ウィーンの研究者は換気と清掃の改善、混雑する時間帯を避けることを勧め、メーカーには添加物を減らすよう求めています。
クライミングをやめることが答えではない理由

ここで数字を冷静に位置づけてみましょう。ドイツの研究チームは、最も混雑したときの値でも、当時のドイツの職場の基準値(吸入性粉じんで1立方メートルあたり3,000マイクログラム、吸引性粉じんで10,000)を下回っていたと報告しています。ただし、有害物質を扱わない職場の目安値は超えていました。米国の炭酸マグネシウムの職場基準は、8時間の勤務で総粉じん15ミリグラム、吸入性粉じん5ミリグラムです。マグネシアそのものの毒性は低いとされ、問題は粒子の量です。
クライミングには多くの良い面があり、主なリスクは指のけがと転落です。クライミングのけがを扱った以前の記事で見たとおりです。健康なクライマーの多くにとって、粉じんの多い夜は短時間の曝露です。より慎重に考えるべきなのは、オーストリアの研究で気道の反応が大きかった喘息のある人と、毎週の勤務時間をまるごとこの空気の中で過ごすスタッフです。
ジムの粉じんと各種の基準値
1立方メートルあたりマイクログラム。職場の基準値は健康な成人労働者を対象にした勤務時間の平均で、WHOの値は一般の人向けの24時間平均。ジムの値はPM10。
出典:米労働安全衛生局(OSHA)化学物質データベース「マグネサイト」、Weinbruch et al.(2008)、Nicolici et al.(2026)、Moshammer et al.(2016)、WHO(2021)。
実践的な対策は多くありません。ジムは液体チョークを用意するか義務づけ、外気をきちんとしたフィルター越しに取り入れる換気を行い、粉じんのたまる場所を掃除し、混雑時に測定値を確認できます。クライマーは液体チョークに切り替え、粉じんが気になるなら空いている時間に登り、セッションの後は手を洗いましょう。喘息のある人は発作止めの吸入薬を手元に置き、ジムでゼーゼーするならやめる理由ではなく、医師に相談するきっかけと考えてください。
行動の手順
役に立つ時期の順に並べている。各項目に根拠の強さを示した:データあり 公的機関の推奨 未検証
起きる前に
起きたら
- 液体チョークを使う。管理されたセッションでは、チョーク禁止と同じくらい粉じんを抑えた。チョークボールでははっきりした改善はなかった。 データあり 参考文献を参照
その後
- セッションの後は手を洗い、屋内で登ると咳、ゼーゼー、息切れが出るなら医師に相談する。 公的機関の推奨 参考文献を参照
してはいけないこと
- チョークボールで空気がきれいに保てると思い込まない。 公的機関の推奨 参考文献を参照
医学的な助言ではありません。発作止めの吸入薬を使っても治まらない重い喘息発作は、ためらわず救急車を呼んでください(日本では119番)。
よくある質問
クライミング用のチョークは有毒ですか?
炭酸マグネシウムの毒性は低いとされ、米国の職場基準は総粉じんで1立方メートルあたり15ミリグラムです。問題は空気中の量で、混雑したドイツのジムではPM10が1立方メートルあたり1,000〜4,000マイクログラムに達しました。
液体チョークは空気の質の面で優れていますか?
現在ある最良の根拠では、そう言えます。管理されたセッションで、液体チョークはチョーク禁止と同じくらい粉じんを抑えました。チョークボール、固形チョーク、粗い粒のチョークでは、はっきりした差はありませんでした。
喘息があっても屋内で登れますか?
喘息のある人の多くが登っています。オーストリアの研究では、気道の炎症の兆候がある人ほど、粉じんの多いセッションの後に肺機能が大きく下がりました。医師と対処法を決め、発作止めの吸入薬を持ち、空いていて換気のよい時間帯を選びましょう。
クライミングシューズ由来の化学物質は健康に害がありますか?
まだわかっていません。ジムのほこりや空気中の濃度は高く、いくつかの化合物は実験室や動物の研究で毒性が示されていますが、人への影響は調べられていません。
まとめ
- 混雑したドイツのクライミングジムでは、PM10が1立方メートルあたり1,000〜4,000マイクログラムに達し、そのほぼすべてがチョークでした。一般の体育館はふつう100未満でした。
- 2026年に測定されたルーマニアのジムでは、1日平均のPM10がWHO指針値の2.3〜2.8倍でしたが、利用者は空気を10点満点で8点と評価していました。
- オーストリアのクライマー109人では、粉じんの多いセッションの後に肺機能がわずかに低下し、気道の炎症がある人ほど低下が大きくなりました。長期的な影響はわかっていません。
- 液体チョークはチョーク禁止と同じくらい粉じんを抑えました。チョークボールや固形チョークでは、はっきりした改善はありませんでした。
- シューズのゴム添加物は新しい発見で、健康への影響は不明です。液体チョーク、十分な換気、空いている時間帯の利用で、慎重に登りましょう。
この記事は公表された研究の要約であり、医学的な助言ではありません。喘息などの肺の病気がある方や、屋内で登ると咳、ゼーゼー、息切れが出る方は、医師に相談してください。症状に合わせたトレーニングの計画は、理学療法士が手助けできます。吸入薬を使っても治まらない重い喘息発作が起きたら、ためらわず救急車を呼んでください(日本では119番)。
さらに読む:液体チョークとチョークボールの比較試験は Weinbruch et al., Journal of Environmental Monitoring 14:2114(2012)。1か所のジムの空気の質を総合的に調べた研究は Nicolici, Ionel & Bisorca, Applied Sciences(2026)。41か所のジムのゴム由来化合物は Sherman et al., Environmental Science: Processes & Impacts(2026)。
参考文献
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