表紙:0人が注意を受けていた。サーファーズ・ミエロパチーになった初心者11人のうち、インストラクターから注意を受けた人はいませんでした。

サーファーズ・ミエロパチー、初めてのレッスンの腰痛がまひにつながるとき

この記事のポイント ・約10分で読めます

  • サーファーズ・ミエロパチーは、初心者に起きる、外傷によらないまれな脊髄下部の脳卒中のような病気です。腰の痛みに続いて、しびれ、脚の脱力、尿が出なくなる症状が、ときに30分以内に現れます。
  • ハワイの23人の検討では、全員のMRIで脊髄の中心に鉛筆のような細長い高信号が先端まで伸びていました。ただし発症直後の画像は正常なこともあります。
  • 前向き研究では、11人全員が最初のレッスンで発症し、回答した10人中7人が45分以上続けてうつぶせでいました。事前に危険を知らされていた人はいませんでした。
  • 効果が証明された治療はありません。ステロイドより血圧を保つ治療が好まれる傾向にあり、来院時に脚が少しでも動く人のほうがはるかに回復しやすいことがわかっています。

2026年8月、リスボンの医師たちが、30代後半の男性の症例を報告しました。3回目のサーフィンレッスンで、板の上にうつぶせの姿勢から体を反らせて立ち上がろうとしたとき、腰の上のほうに鋭い痛みが走りました。男性はそのままレッスンを終えましたが、1時間もしないうちに脚が動かなくなり、感覚がなくなり、尿も出なくなりました。8週間のリハビリの後、足首を動かしたり脚を曲げたりできるようになりましたが、歩くことはまだできませんでした。

何かにぶつかったわけではありません。医師はこれをサーファーズ・ミエロパチー(サーファー脊髄症)と呼びます。健康な初心者に起きる脊髄下部の脳卒中のような病気で、2004年に平均25歳の9人の症例として初めて報告されました。それ以降に発表された症例は100件に満たず、66例を検討した2017年の総説では、各報告に含まれる初心者のうち、その日初めて板に乗った人が89.5〜100%を占めていました。

この記事では、体の中と画像で何が起きているのか、リスクが集まる場面、治療で効果があったこととなかったこと、そして初心者にとって賢明な答えが浜にとどまることではなく、慎重にサーフィンをすることである理由を見ていきます。

サーファーズ・ミエロパチーで実際に起きること

経過は驚くほどよく似ています。初心者が長い時間、背中を反らせて頭を上げた姿勢で板にうつぶせになり、パドリングや立ち上がりの練習を繰り返します。やがて腰に鈍い痛みや急なつるような痛みが出て、脚にピリピリ感やしびれ、次に脱力が起き、膀胱が空にならなくなります。韓国の男性3人のうち2人では、最初の痛みから数分〜30分で脱力が始まりました。

最も有力な説明は血流不足です。脊髄の下部は、アダムキーヴィッツ動脈という1本の栄養血管に大きく頼っていて、その経路は細く、人によって違います。背骨を長く反らせた姿勢を続けると、この血管や、そこに血液を送る細い分節動脈が引き伸ばされたり、折れ曲がったり、けいれんしたりする可能性があります。この動脈が枝分かれする位置は人によって異なり、それが一部の初心者だけが発症する理由のひとつかもしれません。

アダムキーヴィッツ動脈が枝分かれする位置

脊髄下部への主な動脈が背骨のどの高さで枝分かれするかの割合。サーファーズ・ミエロパチーに関する2026年の総説がまとめた値。

下部胸椎(T9〜T12)75%
中部胸椎(T5〜T8)15%
上部腰椎(L1〜L2)10%

出典:Yuniarti、Harisusanti、Tanudjaja、Octavius, Chinese Neurosurgical Journal 12:30(2026)。解剖学的研究を引用。

動脈説には直接の裏づけもいくつかあります。リスボンの症例では、CT血管造影でT11〜L2の高さの分節動脈に狭窄と閉塞が見つかりました。ハワイの前向き研究では、1人の患者の血管造影で、脊髄の前側の主要な動脈に血液を送る椎骨動脈の流れが、背中を反らせると消えることが確認されました。一方で、静脈のうっ血、椎間板の小さなかけらが脊髄の動脈に詰まること、立ち上がるときに息をこらえていきむことなど、ほかの説も残っています。

診断の決め手はたいてい画像です。発症から24時間以内にMRIを撮ったハワイの患者23人を放射線科医が検討したところ、全員に同じ所見がありました。T2強調画像で脊髄の中心に細い「鉛筆のような」高信号があり、中部胸椎から脊髄の先端(脊髄円錐)まで伸び、脊髄が腫れていたのです。異常のある範囲は平均13.8センチメートルでした。造影剤はほとんど役に立ちませんでした。

ハワイの患者23人の来院時の所見

ハワイの3病院で2003〜2012年に診療したサーファーズ・ミエロパチーの後ろ向き検討による、臨床所見とMRI所見。MRIはすべて発症から24時間以内に撮影。

脊髄円錐まで届く中心部のT2高信号(23人中23人)100%
来院時の尿閉(23人中22人)96%
発症時の腰痛(23人中22人)96%
脳脊髄液と同じくらい強い高信号(23人中10人)43%
わずかな造影効果(造影した11人中4人)36%

出典:Nakamoto、Siu、Hashiba ほか, American Journal of Neuroradiology 34(12):2393(2013)。

発症直後の画像は、どちらに転んでも判断を誤らせることがあります。腰から下が完全にまひした43歳の米国人の初心者は、発症11〜12時間後のT2画像が正常でした。23歳の日本人男性には典型的な高信号がありましたが、新しい動脈性の梗塞で通常みられる拡散制限はなく、主治医たちは、動脈ではなく静脈が詰まったことで脊髄が傷ついたのではないかと考えました。

リスクが集中するところ

点描の抽象画:穏やかな地平線に沿って平たく横たわる長く低い点の柱。片方の端が上に反り、中央から細い縦線が立ちのぼって淡い空に消えていく。
明るい弧のまま、長くとどまりすぎて。

発症の場は、ほぼ決まって初心者向けのレッスンです。ホノルルのクイーンズ・メディカルセンターの神経内科医たちは、2021〜2024年に16〜39歳の患者11人(うち男性10人)を登録し、何をしていたかを詳しく尋ねました。11人全員が、初めてのサーフィンレッスンの最中か直後に発症していました。回答した10人のうち7人は、45分以上続けてうつぶせの姿勢をとっていました。初心者が波を待つときの姿勢です。

経験のあるサーファーは、波と波の間はたいてい板の上に座り、腰の負担を抜いています。11人の患者は誰もこの病気を聞いたことがなく、インストラクターから注意を受けた人もいませんでした。回答した10人中7人では、最初の症状が腰痛でした。答えられた9人のうち6人は最初の症状から30〜60分で、3人は30分以内に歩けなくなりました。この速さこそ、最初の痛みが大事な理由です。多くの患者にとって、それが唯一の警告であり、しかもまだ海の中で、もっと続けたいと思っているときにやってきます。

発症したとき、11人は何をしていたか

2021〜2024年にハワイでサーファーズ・ミエロパチーと診断された人の前向き研究。すべての質問に全員が答えたわけではないため分母が異なります。学会抄録で、論文としてはまだ発表されていません。

45分以上続けてうつぶせだった(10人中7人)70%
最初の症状が腰痛だった(10人中7人)70%
30〜60分で歩けなくなった(9人中6人)67%
30分以内に歩けなくなった(9人中3人)33%
インストラクターから注意を受けていた(11人中0人)0%

出典:Bellatti、Choi、Snyder ほか、米国神経学会(AAN)年次総会抄録(2025)、ホノルルのクイーンズ・メディカルセンター。

患者は若くて体力があり、旅行者であることが少なくありません。23人の画像検討では19人が男性で、平均年齢は26歳、多くは数日で帰国する観光客でした。一方で2026年のバリ島の報告は20〜25歳の女性3人で、韓国、中国などから来た人たちでした。米国では43歳の初心者の症例も報告されています。

来院時の重症度は大きく異なります。ハワイの検討では、患者の約3分の1が、米国脊髄損傷協会の尺度でAかB、つまり動きが完全に、またはほぼ完全に失われた状態で来院し、約5人に2人は重力に逆らって脚を動かせるDの段階でした。

来院時、23人はどれほど重症だったか

来院時の米国脊髄損傷協会機能障害尺度(AIS)。Aは損傷部位より下の運動と感覚が完全に失われた状態、Eは正常。

A:完全まひ(23人中5人)22%
B:感覚のみ残存(23人中3人)13%
C:弱い動きあり(23人中5人)22%
D:実用的な動きあり(23人中9人)39%
E:正常(23人中1人)4%

出典:Nakamoto、Siu、Hashiba ほか, American Journal of Neuroradiology 34(12):2393(2013)。

このスポーツの広がりも関係します。韓国と日本の医師はいずれも、サーフィンが自国で大衆的なレジャーになったと書いており、鎌倉の救急チームは日本のサーファーを約200万人と見積もっています。このチームは、国内有数のサーフィンの名所にある病院でさえ、救急医の間でこの病気がほとんど知られていなかったと述べています。

効果が測定された対策

点描の抽象画:地平線の上に置かれた点の球と、その横に立つ細い縦の柱。柱の先端と球を一本の直線が結び、その間の地面に小さな琥珀色の四角が一つある。
細い線を、ふさがずに保つ。

証明された治療はありません。病気がまれすぎて試験ができないからです。医師は脊髄梗塞や外傷性脊髄損傷の治療を借りてきており、報告されている治療は病院によってさまざまです。高用量ステロイド、血圧を上げて脊髄に血液を送り込む治療、腰椎ドレーンで脳脊髄液を抜いて脊髄の周りの圧を下げる処置、抗血栓薬、日本では抗酸化薬エダラボンや高気圧酸素療法も使われました。どれも理屈と個々の症例に基づくものです。

最もよく使われ、最も根拠が乏しいのがステロイドです。ハワイの画像検討では、かつて脊髄外傷に使われた高用量メチルプレドニゾロンの全コースを7人が受けましたが、回復はほかの患者と変わりませんでした。ただし人数が少なく、はっきりしたことは言えません。韓国の男性3人のうち、平均血圧を85mmHg以上に保つ治療だけを受けた1人は1か月でほぼ完全に回復し、ステロイドを受けた2人はまひが残りました。3人では何も証明できませんが、こうした経過から、多くの専門医は血圧を保つ治療を好むようになっています。外傷性脊髄損傷の指針が最初の1週間に勧めている治療です。ホノルルの医師たちは、完全まひで来院し、10時間以内に血管造影を、1日以内に血圧の維持と脳脊髄液ドレナージを受けた男性が、6か月後に前腕杖で歩けるようになったと報告しています。

最初の数日で改善したのは誰か

経過を追えた20人について、来院時から最終追跡時までに米国脊髄損傷協会の尺度で1段階以上改善した割合。追跡期間の中央値はわずか6日。

改善なし(20人中13人)65%
改善、全体(20人中7人)35%
改善、来院時CからE(13人中7人)54%
改善、来院時AかB(7人中0人)0%

出典:Nakamoto、Siu、Hashiba ほか, American Journal of Neuroradiology 34(12):2393(2013)。CからEの値は論文の人数から算出。

回復を最もよく予測するのは、来院時にどれだけ重いかという単純な事実です。ハワイの検討では、AかBで来院した7人は追跡時点で誰も改善していませんでしたが、それ以外の人では約半数が改善しました。とはいえ回復は何か月も続くことがあります。Aで入院した日本人男性は、1年以上後の追跡時には長下肢装具で歩けるようになっており、19歳の日本人女性は9日目に一人で歩けるようになりました。

サーフィンをやめることが答えではない理由

点描の抽象画:穏やかな地平線の上の水平な線に、小さな点の球がまっすぐ座っている。遠く片側には背の高い柱が立ち、球のそばの線の上に小さな琥珀色の四角が一つ置かれている。
座って、水平線を見ている。

発症率の数字はまったくありません。毎年どれだけのサーフィンレッスンが行われているかを誰も数えていないため、レッスン1回あたりのリスクはわかりません。それでも医学文献に載った症例は20年で100件に満たず、日本のあるチームは国内のサーファーだけで約200万人と見積もっています。症例報告は最も悪い結果に偏りがちでもあります。数日で治まる軽い例は診断も発表もされない可能性があると複数の著者が指摘しており、実際の見通しは報告よりよい可能性が高いのです。

フィンや板、溺水といった、初心者にもっと多い危険についてはサーフィンのけがを扱った以前の記事で取り上げました。サーファーズ・ミエロパチーが違うのは、対策がとても簡単なことです。ホノルルのクイーンズ・メディカルセンターの神経科医は、注意点を英語のSPINEの頭文字でまとめています。板の上に座る。腰や脚の痛み、ふらつきや歩けない状態、脚のしびれを危険のサインとして扱う。そして初心者に教える、の3点です。

インストラクターは最初のレッスンで板の上に座る方法を教え、初回は短めにできます。初心者は腰が痛くなったら休みましょう。腰痛にしびれや脱力、尿の出にくさが伴ったら、海から上がって横になり、救急車を呼んでください。歩いてごまかそうとしてはいけません。病院では、サーフィン中に始まったことを伝えてください。椎間板ヘルニアや感染症と間違えられやすい病気です。

行動の手順

役に立つ時期の順に並べている。各項目に根拠の強さを示した:データあり 公的機関の推奨 未検証

起きる前に

  • 初めてのサーフィンは短めにし、腰の痛みや板の上に座ることについて説明してくれるインストラクターを選ぶ。 公的機関の推奨 参考文献を参照

起きたら

  • 波待ちでは、背中を反らせて長くうつぶせにならず、板の上に座る。ハワイの研究では患者10人中7人が45分以上うつぶせでいた。 データあり 参考文献を参照
  • 腰にいつもと違う痛みを感じたら、すぐにやめて休む。 公的機関の推奨 参考文献を参照

してはいけないこと

  • 脚のピリピリ感や脱力を伴う新しい腰痛を、サーフィンを続けたり歩き回ったりしてまぎらわせない。 公的機関の推奨 参考文献を参照

医学的な助言ではありません。脚の脱力やしびれ、尿の出にくさを伴う急な腰痛は救急の状態です。すぐに通報してください。

よくある質問

サーファーズ・ミエロパチーは脳卒中のようなものですか?

似た経過をたどります。多くの専門医は、背中を反らせている間に脊髄下部への血流が失われると考えていますが、正確な仕組みは証明されておらず、動脈ではなく静脈が詰まったことを示す症例もあります。

経験のあるサーファーもなりますか?

報告された症例のほとんどは初心者で、多くはその日が初めてでした。経験者は波待ちで板に座り、背中の筋肉も強いことがその理由かもしれませんが、直接調べられたことはありません。

サーフィン以外でも起きますか?

起きます。逆立ちやバク転などの体操、スタンドアップパドルボード、重い物の持ち上げのあとにも、似たけがが報告されています。どれも背骨を反らせる動きです。

回復しますか?

数日で完全に回復する人もいれば、まひが残る人もいます。来院時に脚が少しでも動く人は、まったく動かない人よりずっと経過が良好です。リハビリで何か月もかけて改善することもあります。

まとめ

  • サーファーズ・ミエロパチーは、初心者に起きる、外傷によらないまれな脊髄下部の脳卒中のような病気です。腰の痛みに続いて、しびれ、脚の脱力、尿が出なくなる症状が、ときに30分以内に現れます。
  • ハワイの23人の検討では、全員のMRIで脊髄の中心に鉛筆のような細長い高信号が先端まで伸びていました。ただし発症直後の画像は正常なこともあります。
  • 前向き研究では、11人全員が最初のレッスンで発症し、回答した10人中7人が45分以上続けてうつぶせでいました。事前に危険を知らされていた人はいませんでした。
  • 効果が証明された治療はありません。ステロイドより血圧を保つ治療が好まれる傾向にあり、来院時に脚が少しでも動く人のほうがはるかに回復しやすいことがわかっています。
  • 慎重にサーフィンを。波待ちでは板の上に座り、最初は短めに。脚の症状を伴う腰痛は、歩いてごまかすものではなく緊急事態として扱ってください。

この記事は公表された研究の要約であり、医学的な助言ではありません。脚の脱力やしびれ、尿の出にくさを伴う急な腰痛は救急の状態です。海から上がって横になり、救急車を呼んでください。サーフィンを習っているときの腰痛や、脊髄損傷からの回復については、医師か理学療法士に相談してください。

さらに読む:23人のMRI所見は Nakamoto ほか, American Journal of Neuroradiology(2013)。韓国の3症例と治療の選択肢の総説は Choi ほか, Journal of Korean Neurosurgical Society(2018)。バリ島の症例と診断基準案は Yuniarti ほか, Chinese Neurosurgical Journal(2026)。

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