クマとヘビ:トウガラシスプレーでヒグマの92%が止まった

クマとヘビのいる山を歩く、スプレーが10回中9回クマを止めた理由

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  • 日本では2026年3月までの1年間にクマによる人身被害が238人、うち死亡が13人で、どちらも過去最多でした。多くは秋の東北で、生活圏での被害も目立ちました。
  • 世界のヒグマ(ブラウンベア)の襲撃では半数近くが子連れの母グマによるもので、北米のアメリカクロクマによる死亡事故の多くは捕食目的のクマでした。
  • アラスカの事例集では、クマよけスプレーが攻撃的なクマを止めた割合は約90%、銃は76〜84%でした。食料をクマから遠ざけたヨセミテでは、トラブルが99%減りました。
  • 米国では毒ヘビにかまれる人が年に7,000〜8,000人、亡くなる人は約5人です。かまれた傷を切る、吸う、冷やす、止血帯で縛る、はいずれも禁物です。

2025年4月から2026年3月までの1年間に、日本ではクマに襲われてけがをした人が238人にのぼり、そのうち13人が亡くなりました。環境省の速報値によると、どちらも過去最多です。これまで最も多かった2023年度は被害者219人、死亡6人でした。10月だけで89人が被害に遭っています。大半は東北地方のツキノワグマによるもので、最も被害の多かった秋田県では、登山者ではなく、散歩や通勤、農作業の途中で襲われた人も少なくありませんでした。

北米でも、ゆっくりと増える傾向があります。アラスカで記録されたクマの襲撃は、1880年から2015年までの平均で年2.6件でしたが、2010年代には年7.6件になりました。山道でもう一つ恐れられているのがヘビです。米疾病対策センター(CDC)は、米国で毒ヘビにかまれる人は年に7,000〜8,000人、亡くなる人は約5人と推計しています。

この記事では、クマやヘビとの遭遇で実際に何が起きるのか、危険はどこに集中しているのかを確認します。続いて、クマよけスプレーや食料保管容器からヘビにかまれたときの応急手当まで、効果が確かめられている対策を取り上げ、家にこもるのではなく注意して山を歩くことが賢明な理由を見ていきます。

クマやヘビに出会うと実際に何が起きるか

ヒグマによる襲撃を最も広く見渡したのは、2019年の研究です。2000年から2015年までに北米、欧州、ロシア、イラン、トルコで起きた664件を集めたところ、85.7%はけが、14.3%は死亡に終わっていました。被害者の半数はハイキングやベリー摘み、キャンプなど余暇を楽しんでいる最中で、63%は1人でした。最も多いきっかけは、子連れの母グマとの遭遇です。

ヒグマの襲撃のきっかけ

2000〜2015年に世界で起きた、人へのヒグマの襲撃のうち、状況がわかっているものの主なきっかけ。複数の要因が重なった例もあります。

子連れの母グマ47%
単独のクマとの至近距離での突然の遭遇20%
犬を連れていた17%
撃たれた、またはわなにかかったクマ10%
捕食目的の襲撃5%

出典:Bombieri et al., Scientific Reports(2019)。既存のデータ、報告書、報道から集計。

アメリカクロクマの行動は違います。2000年から2017年に米本土48州で当局が確認した、死亡に至らなかった襲撃210件では、52%が防御、33%が食べ物目当て、15%が捕食目的でした。死亡事故は事情が異なります。1900年から2009年の死者63人を調べた研究では、88%で捕食者として振る舞うクマが関わっており、その捕食目的のクマの92%が雄でした。身を守ろうとする母グマと獲物を狙う雄とでは、取るべき対応が正反対になります。

ヘビにかまれる事故は規模は小さいものの、後に影響が残りやすいものです。米国の毒ヘビによるかみ傷の95%以上は、ガラガラヘビ、アメリカマムシ(カパーヘッド)、ヌママムシといったマムシ亜科のヘビによるものです。その毒はかまれた周囲の組織を傷め、血液の凝固を乱すことがあります。全国データでは、2001〜2017年の死者は平均で年6人(年2〜12人)、救急外来で手当てを受けた死亡以外のヘビのかみ傷は、毒の有無を問わず年約9,192件でした。

危険はどこに集中しているか

点描の抽象画:低い地平線の上、陸地の左上の隅に暗い点の球が密集し、右へ行くにつれてまばらな点だけになっていく。上には均一な淡い空。
重みの大半は、地図のひと隅に集まる。

日本の過去最多の1年は、場所と季節に集中していました。東北6県で238人のうち158人を占め、最も多かったのは秋田の67人、続いて岩手の40人、福島の24人で、死者は岩手が最多の5人でした。9月から11月だけで161人が被害に遭い、クマが冬眠に入る12月からは急減しています。北海道と九州・沖縄を除く出没件数は、2月末時点で過去最多の50,359件に達しました。

危険の中心は山道ではありませんでした。環境省の資料によると、2025年度に国立公園内で起きたクマ関連の事故は12月半ば時点で19件と、全国の総数のごく一部です。秋田魁新報が秋田県内の被害者に行った調査では、生活圏での遭遇が目立ち、鈴やスプレーを持っていなかった人が多いという結果でした。ハイカーにとっての教訓は、クマのすむ地域の秋はとくに注意が必要だということです。

日本のクマによる人身被害

年度(4月〜翌3月)ごとの被害者数。かっこ内は死者数。2025年度は速報値。

2023年度(死亡6人)219
2024年度(死亡3人)82
2025年度(死亡13人)238

出典:環境省「国立公園におけるクマ被害対策について」(2025年12月15日時点のデータ)、2025年度速報値を伝えた共同通信(2026年4月7日)。

北米では、危険の大きさはグループの人数と見通しのよさに左右されます。1880年以降のアラスカでのクマとのトラブル682件では88%にグリズリー(ハイイログマ)が関わっており、2人以上のグループは対峙する可能性が低く、見通しが悪い場所ほど至近距離での遭遇が起きやすくなっていました。1872年から2018年にイエローストーン国立公園で起きた8件の死亡事故では、75%が男性、88%が少人数のグループ、75%が人里離れた奥地でした。

ヘビのかみ傷は足と手に集中します。北米ヘビ咬傷レジストリーには、2013〜2015年に14施設から450件が登録されました。大半はガラガラヘビによるもので、脚をかまれた人の4分の1以上は靴を履いていませんでした。米国の中毒センターに寄せられた子どものアメリカマムシ咬傷は2000年から2013年に137%増えており、かまれる場所の多くが山奥ではなく、家や庭の周りであることを物語っています。

誰が、どこをかまれているか

北米ヘビ咬傷レジストリーに登録された450件のヘビ咬傷の特徴(2013〜2015年)。

ガラガラヘビにかまれた56.3%
アメリカマムシにかまれた29.4%
脚や足をかまれた54%
脚をかまれた人のうち靴を履いていなかった27%
抗毒素(抗毒素血清)を投与された84%

出典:Ruha et al., Journal of Medical Toxicology(2017)、ToxICヘビ咬傷研究グループ。

このレジストリーの症例は病院の中毒専門チームから集められたもので、専門医が必要になるほど重い例に偏っています。それでも、素足、茂みに伸ばした手、家の近くでの被害というパターンは、中毒センターの報告と一致しています。山道では、しっかりした靴を履き、手足を置く場所をよく見るだけで、危険の多くを取り除けます。

効果が確かめられている対策

点描の抽象画:平らな地平線に立つ背の高い点の柱が低い点の球と向き合い、柱から球へ向かって細かな点がやわらかな扇形に広がって、球の手前で止まっている。
小さな霧が、距離を保つ。

クマ対策で最もよく知られた数字は、アラスカで得られたものです。研究者が1985年から2006年のクマよけスプレーの使用例83件を調べたところ、身を守るためにクマに噴射したのは72件でした。トウガラシ成分のスプレーは、ヒグマの望ましくない行動を92%、アメリカクロクマでは90%の割合で止めています。至近距離での遭遇でスプレーを携帯していた人の98%はけがをせず、記録されたけが3件はいずれも軽く、入院は必要ありませんでした。

スプレーにも弱点があります。7%の例では風が邪魔をしましたが、それでもクマには届いていました。また14%の使用者は自分もスプレーの影響を受け、軽い刺激から動けなくなる寸前までの症状が出ています。同じグループは、1883年から2009年にアラスカで銃が関わったクマとの事故269件も調べました。拳銃は84%、ライフルなどの長銃は76%の割合でクマを止めましたが、銃を持っていた人がけがをする割合は、撃っても撃たなくても同じで、クマの61%が死んでいます。

アラスカで攻撃的なクマを止める

クマの攻撃的な行動が止まった事例の割合と、スプレー携帯者のうちけがをしなかった人の割合。直接比較した試験ではなく、別々の2つの事例集です。

至近距離の遭遇でけがをしなかったスプレー携帯者98%
スプレーでヒグマが止まった92%
スプレーでアメリカクロクマが止まった90%
拳銃でクマが止まった84%
長銃でクマが止まった76%

出典:Smith et al., Journal of Wildlife Management(2008年、2012年)。

ただし、この数字には注意が必要で、その点が一緒に語られることはほとんどありません。2つの研究はいずれも報告された事例を集めたもので、集めた年代も違い、試験ではありません。スプレーを持つ人とライフルを持つ人とでは歩き方が違うかもしれませんし、銃を持つハンターはクマを引き寄せる肉や魚の近くにいることが多くありました。世界の襲撃研究も一部は報道をもとに作られており、著者自身がロシアなど東側は過少に数えられている可能性が高いと述べています。スプレーのほうがよさそうですが、その差の大きさははっきりしません。

食料をクマから遠ざける対策は、最もはっきりした実績があります。ヨセミテ国立公園での人とクマのトラブルは、1998年に1,584件でピークに達しました。公園が予算を得て職員を増やし、ごみの回収を増やし、クマに開けられない食料保管設備を改善すると、2011年には114件、2018年11月末までには22件と、99%減りました。2004年からは、公園内の原生地域の大部分で、バックパッカーに認定された保管容器の携帯が義務づけられています。

ヨセミテでの人とクマのトラブル

1年あたりに記録された人とクマのトラブルの件数。2018年は11月末までの数字です。

1998年(ピーク)1,584
2011年114
2018年22

出典:Mazur et al., Human–Wildlife Interactions 12(3), article 8(2018)、ヨセミテ国立公園職員による報告。

遭遇したときについて、米国立公園局は、落ち着いて話しかけて人間だとクマにわからせること、決して走らないこと、グループで歩くことを勧めています。グリズリーやヒグマに襲われたら、ザックを背負ったまま死んだふりをし、うつ伏せになって両手を首の後ろで組みます。アメリカクロクマに襲われたら死んだふりはせず、顔を狙って反撃します。後をつけてきたクマやテントを襲ったクマには、種類にかかわらず反撃するよう求めています。日本のツキノワグマについての助言は異なります。新潟県は、襲われたら地面に伏せて頭・首・腹を守るよう呼びかけており、秋田大学の研究ではこの防御姿勢をとった人に重症者はいなかったとしています。

ヘビにかまれたときの応急手当は、主に「してはいけないこと」の話です。CDC、米国赤十字社、世界保健機関(WHO)の見解は一致しており、止血帯、傷を切ること、毒を吸い出すこと、冷やすこと、電気ショックはいずれも禁物です。救急車を呼び、かまれた人を動かさず落ち着かせ、腫れが始まる前に指輪や腕時計を外し、病院へ向かいます。特異的な治療法は抗毒素しかないからです。赤十字社は、マムシ亜科のヘビにかまれた場合に圧迫包帯を使わないよう付け加えています。

オーストラリアでは逆の方法をとります。危険なヘビはコブラ科で、その毒はかまれた部位よりも、主に神経、血液、筋肉を侵すためです。標準は圧迫固定法で、伸縮性のある包帯で手足全体をしっかり巻き、添え木を当て、横にして動かさないようにします。WHOがこの方法を勧めるのは、局所の腫れを起こさない神経毒のヘビに限られます。それでも、ケアンズの医師は、包帯を何時間も巻いたままにされた患者2人に害が出たことを受け、効果を示す確かな根拠は乏しいと指摘しています。

山歩きをやめることが答えではない理由

点描の抽象画:手前から穏やかな地平線まで、細かな点でできた細くまっすぐな道がのび、道から大きく離れた片側に小さな点の球が遠く置かれている。道の上には小さな琥珀色の四角がひとつある。
道はその線を保ち、よそ者はその距離を保つ。

イエローストーン国立公園では、1872年から2018年までにクマによる死亡事故が8件記録されており、そのうち7件はグリズリーによるものでした。公園への訪問2,620万回につき死亡1人という計算になります。死亡事故の件数は近年増えていますが、訪問者数がそれ以上に増えたため、訪問者1人あたりの危険は下がっています。研究の著者は、3人以上のグループで歩くこと、登山道から外れないこと、クマから決して走って逃げないこと、クマよけスプレーを持つことを勧めています。

ヘビも同じ計算で考えられます。ハイキングやキャンプ、庭仕事をする米国人全体の中で、年に約5人という死者数は小さな数字です。重いかみ傷の多くは、見えない場所に伸ばした手や素足で起きています。登山とハイキングの死亡事故を取り上げた記事でも見たとおり、山での死亡事故では、動物よりも転落、暑さ、溺水のほうがはるかに大きな割合を占めます。靴を履き、暗くなったらライトを使い、道でヘビを見たら一歩下がる。それでヘビの危険の大半には対処できます。

クマから身を守る習慣は手軽なものばかりです。やぶの濃い場所では音を立て、複数人で歩き、勧められている地域ではスプレーを持って使い方を覚え、食料は保管容器やロッカーに入れ、犬にはリードをつけます。秋の日本では、出かける前に地元のクマ出没情報を確かめましょう。どれも山をあきらめろというものではなく、山の中で注意深く歩こうというものです。

行動の手順

役に立つ時期の順に並べている。各項目に根拠の強さを示した:データあり 公的機関の推奨 未検証

起きる前に

  • 勧められている地域ではクマよけスプレーを持ち、使い方を覚える。アラスカの事例ではヒグマの92%、アメリカクロクマの90%を止めた。 データあり 参考文献を参照
  • 食料は認定された保管容器やロッカーに入れる。ヨセミテでは食料保管の改善で人とクマのトラブルが99%減った。 データあり 参考文献を参照
  • 秋の日本では、出かける前に地元のクマ出没情報を確かめる。 公的機関の推奨 参考文献を参照

起きたら

  • 複数人で歩き、やぶの濃い場所では音を立て、犬にはリードをつける。 公的機関の推奨 参考文献を参照
  • しっかりした靴を履き、手足を置く場所をよく見る。米国のレジストリーでは脚をかまれた人の27%が靴を履いていなかった。 データあり 参考文献を参照
  • クマが近づいてきたら、落ち着いて話しかけ、決して走らない。 公的機関の推奨 参考文献を参照
  • ツキノワグマに襲われたら、地面に伏せて頭・首・腹を守る(新潟県の呼びかけ)。 公的機関の推奨 参考文献を参照

その後

  • クマによるけがは、軽く見えても必ず受診する。かみ傷や爪の傷は見た目より深いことがある。 公的機関の推奨 参考文献を参照

してはいけないこと

  • オーストラリア以外では、マムシ亜科のヘビにかまれた傷に圧迫包帯を巻かない。 公的機関の推奨 参考文献を参照

医学的な助言ではありません。ヘビにかまれたら、すぐに救急車を呼んでください。

よくある質問

クマよけスプレーは銃より有効ですか?

アラスカの事例集では、スプレーは攻撃的なクマを約90%の割合で止め、携帯者の98%がけがをしませんでした。銃がクマを止めた割合は76〜84%です。直接比較した研究ではありませんが、スプレーのほうが扱いやすく、クマを殺すこともめったにありません。

死んだふりをすべきですか、反撃すべきですか?

米国立公園局は、グリズリーやヒグマが身を守るために襲ってきたら死んだふりを、アメリカクロクマには反撃を勧めています。後をつけてきたり、テントに入ってきたりしたクマには、種類を問わず反撃してください。日本のツキノワグマについては、新潟県が地面に伏せて頭・首・腹を守る防御姿勢を呼びかけています。

ヘビにかまれたらどうすればいいですか?

救急車を呼び、できるだけ動かず落ち着いて、指輪や腕時計を外し、病院へ向かいます。傷を切る、吸う、冷やす、止血帯で縛る、はいずれもしないでください。オーストラリアでは、圧迫包帯を巻いて手足に添え木を当てます。

クマよけの鈴は効きますか?

グレイシャー国立公園のハイカーを調べた1984年の研究では、鈴によってクマが突進してくる可能性が下がりましたが、著者自身は暫定的な結果だとしています。公的機関が勧めているのは、声を出すことと複数人で行動することです。

まとめ

  • 日本では2026年3月までの1年間にクマによる人身被害が238人、うち死亡が13人で、どちらも過去最多でした。多くは秋の東北で、生活圏での被害も目立ちました。
  • 世界のヒグマ(ブラウンベア)の襲撃では半数近くが子連れの母グマによるもので、北米のアメリカクロクマによる死亡事故の多くは捕食目的のクマでした。
  • アラスカの事例集では、クマよけスプレーが攻撃的なクマを止めた割合は約90%、銃は76〜84%でした。食料をクマから遠ざけたヨセミテでは、トラブルが99%減りました。
  • 米国では毒ヘビにかまれる人が年に7,000〜8,000人、亡くなる人は約5人です。かまれた傷を切る、吸う、冷やす、止血帯で縛る、はいずれも禁物です。
  • 訪問1回あたりの危険はごくわずかで、イエローストーンでは2,620万回の訪問につき死亡1人でした。複数人で歩き、靴を履き、スプレーを携帯し、食料をきちんと保管しましょう。

この記事は公表された研究と公的機関の指針をまとめたもので、医学的な助言ではありません。ヘビにかまれたら、すぐに救急車を呼んでください。クマに襲われてけがをした人は、軽く見えても必ず医療機関を受診してください。かみ傷や爪による傷は見た目より深いことがあり、感染を起こすこともあります。回復については医師や理学療法士に相談してください。

さらに読む:世界のヒグマの襲撃は Bombieri et al., Scientific Reports(2019)。クマよけスプレーは Smith et al., Journal of Wildlife Management(2008)。米国立公園局「Staying safe around bears」。WHOのヘビ咬傷の治療指針。

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