抗議行動の暴力と警備:根拠から言えること
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- 抗議行動の大半は平穏に終わります。ACLEDによると、2020年夏の米国のブラック・ライブズ・マター(BLM)関連デモの93%超では参加者が非暴力で、2023〜24年の大学での抗議行動の97%は平穏なままでした。
- 1件あたりで見ると負傷はまれです。2020年の米国の反人種差別の行動約1万2,000件のうち、参加者の負傷が記録されたのは2.4%、警察官の負傷は1.4%でした。
- 記者や居合わせた人も被害を受けます。2020年の米国では、記録された記者への暴行640件のうち80%超が警察官などによるものでした。
- 群衆心理の研究では、群衆全体に向けた実力行使が、おおむね平穏な群衆を警察と対立させうるとされ、対話・連絡担当の警察官は混乱の減少と結びついています。
テレビで見る抗議行動は危険に見えます。広く出回るのは、燃える車、並んだ機動隊の盾、立ちこめるガスの映像です。デモに加わろうと考えている人や、行進が通る場所の近くに住む人が、それが暴力的になる可能性はどれくらいか、そうなったとき誰がけがをするのかを知りたいと思うのは当然です。
この記事では、出来事のデータベース、社会心理学者、調査機関が明らかにしてきたことを見ていきます。抗議行動のうち暴力を伴うものの割合、誰が負傷するのか、そして警備のやり方がリスクをどう変えるのかです。「エスカレートする実力行使」から交渉による警備への移行、対話・連絡担当の警察官の背景にある社会的アイデンティティの研究、ケトリングについての根拠、群衆はパニックになるという古い考え方も取り上げます。
どの主張の側にも立ちません。抗議行動が目的を達成するかどうかは、抗議行動の効果についての別の記事で扱っています。出来事は場所と年で示し、数字はすべてそれを報告した出典と結びつけています。

抗議行動はどれくらい暴力的になるのか
最も信頼できる集計は、報道や地元の報告をもとに出来事を記録するデータベースによるものです。世界の政治的暴力を追跡する非営利団体ACLEDは、2020年5月下旬から8月下旬までに米国でBLMに関連するデモを7,750件超記録しました。その93%超では、参加者は非暴力でした。ACLEDは、ほかの社会正義を求める抗議行動も含めれば、この割合はさらに高くなるとしています。
誰が数えても、抗議行動の大半は平穏
暴力や損壊のなかった米国の抗議行動の割合(データセットと定義別)。
出典:ACLED(2020年8月31日、2024年5月10日)、Ulfelder、Crowd Counting Consortium、ハーバード大学アッシュ・センター(2021年2月15日)。
ハーバード大学とコネティカット大学による別のプロジェクト、クラウド・カウンティング・コンソーシアムは、2020年5月25日以降の反人種差別の行動を約1万2,000件数えました。その96%超では、器物損壊は報告されていません。2023年10月から2024年5月までのイスラエル・パレスチナ紛争をめぐる学生の抗議行動について、ACLEDは97%が平穏なままだったとしています。
これらの数字が数えているのは出来事であって、人ではありません。この違いは重要です。大都市での暴力的な一夜には、何百もの小さな集会より多くの人が関わることがあります。どちらのプロジェクトも報告に頼っているため、誰も書かなかった出来事は抜け落ち、コンソーシアムの執筆者も合計はおそらく過少だと述べています。それでも傾向は一貫しています。抗議行動で暴力は例外であり、普通のことではありません。
誰がけがをするのか
クラウド・カウンティング・コンソーシアムは負傷も記録しました。参加者の負傷が報告されたのは288件(全体の2.4%)、警察官の負傷は172件(1.4%)でした。参加者が負傷した行動のほとんど、288件中212件では警察官の負傷はなく、被害が一方に偏ることが多かったことがうかがえます。逮捕は約7%の行動で、化学刺激剤の使用は約2.5%で記録されました。
2020年の米国の反人種差別の行動で起きたこと
2020年5月25日以降の約1万2,000件のうち、それぞれの結果が報告された割合。
出典:Ulfelder「Contours of the George Floyd uprising」、Crowd Counting Consortium、ハーバード大学アッシュ・センター(2021年2月15日)。人数ではなく出来事の割合で、過少集計の可能性があります。
記者は特別な立場にあります。仕事柄、双方のあいだに身を置くことになるからです。米国の報道の自由トラッカーは、2020年5月25日から8月25日までに暴行を受けた記者を500人近く、逮捕・拘束された記者を100人超数えました。ジョージ・フロイドさんの死亡後に記録された暴行640件のうち、80%超は地元、州、連邦の警察官などによるものでした。ゴム弾などの武器によるけがは、群衆制圧用の武器についての記事で扱っています。
2020年の米国の抗議行動での記者
米国の報道の自由トラッカーが記録した事案。
出典:U.S. Press Freedom Tracker「BLM and unprecedented aggressions against media」。記録された事案のみ。
居合わせた人の被害は数えにくいものです。データベースが記録するのは出来事で、近くに誰がいたかではないからです。警察官もけがをします。コンソーシアムのデータでは約70件に1件で警察官が負傷しており、冒頭のニュースでも警察署長が重傷を負いました。2025年のケニアでは、後で紹介する監視機関が、抗議行動に紛れ込んだ集団による歩行者への襲撃も報告しています。
抗議行動への警備の二つのモデル
社会学者は大きく二つのやり方を区別しています。1960年代の米国で一般的だった「エスカレートする実力行使」では、警察はデモを脅威として扱い、早い段階で実力を行使し、広く逮捕しました。その後の数十年で主流になった「交渉による管理」では、警察は事前に主催者とルートや条件を取り決め、ある程度の混乱は許容し、逮捕は最後の手段とします。
この変化は現実のものですが、一様ではありません。パトリック・ラフェイル、サラ・スール、ジョン・マッカーシーが1960〜1995年の米国の抗議行動15,965件を調べた研究は、逮捕や実力行使が全体として減ったことを確かめましたが、その変化はなだらかではなく、警察の対応は誰が誰に対して抗議しているかによってなお異なっていました。2025年のBLMの抗議行動の研究も、訴えや手法が似た抗議行動どうしでさえ、警察の対応は大きく異なっていたとしています。
実力行使が当たり前になっているところでは、被害は大きくなりえます。ケニアの独立警察監視機関(IPOA)は2025年6〜7月の抗議行動を監視し、監視した郡のうち一つを除くすべてで、警察が抗議行動を暴動として扱い、催涙ガス、ゴム弾、実弾を使ったと結論づけました。名札や職員番号をつけていない警察官がいたことも指摘しています。
ケニア2025年の抗議行動:監視機関の集計
2025年6月12日〜7月7日の抗議行動。独立警察監視機関が7月23日までに記録したもの。
出典:The Eastleigh Voice が報じたIPOAの調査結果(2025年7月24日)。居合わせた人と記者は別に数えられていません。
警備が群衆をどう変えるか
19世紀にさかのぼる古い群衆観では、集団の中の人は判断力を失い、最も暴力的な人に従うとされていました。その見方に立つ警備は、群衆全体を脅威として扱います。スティーブン・ライカー、クリフォード・ストット、ジョン・ドルリーらが発展させた「精緻化された社会的アイデンティティ・モデル(ESIM)」は逆の立場をとります。群衆には共有された規範があり、対立は集団どうしの扱い方から生まれる、という考え方です。

この考え方によれば、一部の人の行為を理由に警察が全員に実力を行使すると、争うつもりのなかった人まで警察を敵対的で正当性のないものと見るようになります。警察と対立している人たちに自分を重ね、対立が広がっていきます。1998年ワールドカップでのイングランドとスコットランドのサポーターの研究や、環境保護の抗議行動の研究はこの型に当てはまり、2019年の香港の分析も、解散させる手法が抗議行動の拡大と先鋭化に結びついたとしています。
警察官自身の考え方も関わっています。英国の警察官80人の調査では、群衆は混成だと見ながらも、力のある少数が残りを動かしうると恐れ、すばやい介入を支持し、そうした手法が対立をあおる可能性は否定していました。イタリアの警察官352人では、群衆との衝突を経験しているほど古典的な群衆観をもち、その見方は強硬なやり方と結びついていました。見る側も影響を受けます。2025年の調査実験では、警察が大勢配置されている様子を見た人ほど、参加者を暴力的だと表現しやすくなりました。
対話・連絡担当の警察官
最もよく引用される検証は、2004年にポルトガルで開かれたサッカー欧州選手権(ユーロ2004)です。イングランドのサポーターは暴力的だという評判がありましたが、文民警察PSPが目立たない友好的なやり方で警備した試合開催都市では、サポーター自身が抑えたり、警察が特定の人だけに対処したりして、騒ぎが立ち消えになった場面が記録されました。イングランドのサポーターが関わった二つの暴動は、準軍事組織のGNRが担当したアルガルヴェ地方で起きました。
ユーロ2004:二つの警察、二つの結果
2004年欧州選手権(ポルトガル)でイングランドのサポーターが関わった混乱(警察組織別)。
出典:Stott, Adang, Livingstone, Schreiber, Eur J Soc Psychol(2007)、Times Higher Education(2009年3月12日)、Scientific American 300(3)(2009)。観察による比較で、試験ではありません。
スウェーデンは別の道筋で同じところに行き着きました。2001年のヨーテボリでのEU首脳会議では、デモ参加者3人が撃たれ、約150人が負傷しました。警察はその後、全国的な「特別警察戦術」を設け、「対話警察」を置きました。行事の前に団体と会い、行事中も連絡を保ち、群衆の雰囲気を指揮官に伝える警察官です。スウェーデンのサッカー警備を3年間調べた研究では、対話と円滑化は良い結果と結びついていましたが、全国的な調整にはむらがありました。
英国の警察も、2009年のロンドンでのG20抗議行動の警備が批判されたのを受けて、同じ方向に進みました。2011年にシェフィールドで開かれた政党大会では、淡い青のベストを着た警察連絡チームが約4,000人の群衆の中に入りました。安全のための門を、自分たちを封じ込める準備だと参加者が受け取ったとき、連絡担当の警察官がそれを指揮官に伝え、指揮官は門を閉めるかどうかの判断に抗議側の世話役を加えました。研究者は、群衆が自ら秩序を保つ様子を目にしました。
その後の英国の2都市での抗議行動6件の研究では、連絡活動は、警察が問題を解決し、限度を示し、仲介するのに役立つ場合に機能していました。米国では、2021年に連邦裁判所がコロンバス市警に非暴力の参加者への催涙ガス、催涙スプレー、警棒の使用を禁じた後、同市警はこの研究に基づく対話主導のモデルを導入しました。このモデルは、2026年に発表された論文で60件を超える行事を対象に検証されています。
根拠の限界
ここは研究を慎重に読む必要があるところです。根拠のほとんどは事例研究と観察です。無作為化試験はなく、ポルトガルの二つの警察の比較のような研究では、場所、サポーター、時期の違いを除くことはできません。アン・ナッサウアーが米国とドイツの抗議行動30件を調べた研究では、暴力は特定のやりとりの組み合わせに続いて起きており、一つのやりとりだけでは起きていませんでした。単純なルールを検証するのが難しい理由です。
重要な研究の多くは、記述している作戦の計画に関わった研究者が書いたものです。シェフィールドでは、クリフォード・ストットが計画段階で警察の相談役を務めており、著者らはそのことを明らかにしたうえで論じています。コロンバスの研究は、警察組織の内部での参加型アクションリサーチでした。こうした関わりには価値がありますが、独立した評価ではありません。
対話が何のためにあるのかを問う批判もあります。同じシェフィールドの抗議行動を調べた別の研究は、連絡担当の警察官が情報も集め、主催者を警察の望むルートに誘導していたと論じ、1990年代初めのロンドンの専門部隊のやり方と似ているとしました。スウェーデンの研究者は、対話が警備をより民主的にするのか、それともより巧妙にするだけなのかと疑問を呈しました。2014年にブリスベンで開かれたG20では、評価の高い地域密着型の警備だったにもかかわらず、抗議者全体に強く自分を重ねる参加者ほど警察を脅威と見ていました。

ケトリング(封じ込め)
「ケトリング」とは、群衆を解散させずに、警察の非常線の内側に何時間も閉じ込めることです。2001年5月1日、ロンドンのオックスフォード・サーカスで、警察は最大2,000人を囲い、一部の人は最長7時間、食べ物も水もトイレもないまま留め置かれました。2012年、欧州人権裁判所の大法廷は、その例外的な事実関係のもとでは自由の剥奪にあたらないと判断しましたが、こうした措置を抗議行動の抑え込みや萎縮に使ってはならないと警告しました。
社会的アイデンティティの研究者たちは、少数を理由に全員を囲うことこそ、群衆を警察と対立させる区別のない行動だと主張します。警察のマニュアル、報道、活動家の証言、専門家への聞き取りをもとにした質的研究は、ケトリングが恐怖と退屈を通じて作用する面があると述べています。2009年のG20抗議行動では、警備に巻き込まれた通行人が亡くなり、後に映像から警察官に突き飛ばされていた可能性が示されました。警察監察局はその後、抗議行動を円滑にする方向への転換を各警察に求めました。
ケトリングが負傷を減らすのか増やすのかを、多くの出来事にわたって測った研究は見つかりませんでした。根拠は判決、調査報告、事例研究で、それぞれ別の方向を指しています。裁判所は危険な状況での最後の手段として封じ込めを認めてきた一方、群衆の研究者はそれを対立激化の原因になりやすいものと見ています。
「パニックになる群衆」という神話
群衆は緊急時にパニックになり、逃げようとして互いを踏みつけるという考え方は、古く根強いものです。災害研究者は長年、逆の結果を見いだしてきました。社会学者リー・クラークは2002年の論考で集団パニックは比較的まれだとし、ジョン・ドルリーらのその後のレビューも、緊急時の人々はむしろ助け合い協力することが多いと結論づけています。ただし、避難が個人の奪い合いに崩れることもあります。
この神話はいまも実務に影響しています。ドルリー、デイヴィッド・ノヴェッリ、ストットが警察官、民間の安全管理の専門家、イベントの係員、一般の人を調べた調査では、回答者は「集団パニック」や「市民の無秩序」という考えを支持しており、そうした考えは強制的で管理的な群衆管理の見方と結びついていました。ドルリーがその後まとめた緊急時の計画担当者向けの提言は、群衆とのはっきりした意思疎通と、人々が自ら助け合う力を支えることを重視しています。
行動の手順
役に立つ時期の順に並べている。各項目に根拠の強さを示した:データあり 公的機関の推奨 未検証
起きる前に
起きたら
してはいけないこと
- 警察の配置の多さだけで、抗議行動を暴力的と判断しない。2025年の実験では、警察が大勢いるだけで見る人が参加者を暴力的と表現しやすくなった。 データあり 参考文献を参照
一般的な情報であり、法的助言や安全上の助言ではありません。
よくある質問
抗議行動の大半は暴力的なのですか?
いいえ。2020年の米国のデータと2023〜24年の大学での抗議行動では、93%から97%の行動が平穏だったと記録されています。ただし、大規模な暴力的な出来事一つに多くの人が関わることはあります。
抗議行動で最もけがをしやすいのは誰ですか?
データが数えているのは人ではなく出来事です。2020年の米国のデータでは、参加者の負傷が報告された行動は警察官の負傷より多く、参加者が負傷した行動のほとんどで警察官の負傷はありませんでした。記者もしばしば標的になりました。
警察の連絡担当官は暴力を減らしますか?
ポルトガル、スウェーデン、英国、米国の事例研究は、対話と連絡活動を混乱の減少と結びつけていますが、試験はなく、多くの研究は作戦に関わった研究者が書いたものです。
ケトリングは合法ですか?
国と事実関係によります。2012年に欧州人権裁判所は、ロンドンでの一件の封じ込めを例外的な事実関係のもとで適法と認めつつ、抗議行動を萎縮させるために使ってはならないと警告しました。
群衆は緊急時にパニックになりますか?
まれです。災害や緊急事態の研究では、群衆の中の人々はたいてい助け合っており、「パニック」という考え方はかえって悪い群衆管理につながりうるとされています。
まとめ
- 抗議行動の大半は平穏に終わります。ACLEDによると、2020年夏の米国のブラック・ライブズ・マター(BLM)関連デモの93%超では参加者が非暴力で、2023〜24年の大学での抗議行動の97%は平穏なままでした。
- 1件あたりで見ると負傷はまれです。2020年の米国の反人種差別の行動約1万2,000件のうち、参加者の負傷が記録されたのは2.4%、警察官の負傷は1.4%でした。
- 記者や居合わせた人も被害を受けます。2020年の米国では、記録された記者への暴行640件のうち80%超が警察官などによるものでした。
- 群衆心理の研究では、群衆全体に向けた実力行使が、おおむね平穏な群衆を警察と対立させうるとされ、対話・連絡担当の警察官は混乱の減少と結びついています。
- ただしその根拠の多くは事例研究で、作戦の計画に関わった研究者自身が書いたものも多く、連絡活動は情報収集だと抗議する側から疑われることもあります。
- 集団「パニック」はまれです。緊急時、群衆の中の人々はたいてい互いに助け合います。
この記事は、研究、調査報告、報道を一般的な情報としてまとめたものです。法的な助言や安全上の助言ではなく、抗議行動や警察活動に関する法律は国によって異なります。抗議行動の場やその後にけがをした場合は、医療機関を受診してください。
さらに読む:群衆心理が警察の指針にどう生かされたかは、Reicher、Stott、Cronin、Adang『Policing: An International Journal』(2004)。連絡活動による警備の実際は、Gorringe、Stott、Rosie『Journal of Investigative Psychology and Offender Profiling』9(2)(2012)。集団パニック説への反証は、Drury ほか『Frontiers in Public Health』(2019)。
参考文献
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- ACLED. US student pro-Palestine demonstrations remain overwhelmingly peaceful (10 May 2024).
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