24% 全負傷に占める割合

サッカーのハムストリングのけが、使われない予防運動

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  • 欧州トップクラブの男子サッカーで、全負傷に占めるハムストリングのけがの割合は2001/02年の12%から2021/22年には24%に増えました。25人のチームなら1シーズンに約8件が見込まれます。
  • 危険は試合中、スプリント、前後半それぞれの最後の15分、そして何より過去にけがをした選手に集中しています。
  • デンマークの試験では、ノルディック・ハムストリング・エクササイズで新規のけがが100選手・シーズンあたり8.1件から3.1件に、再発が45.8件から7.1件に減りました。
  • プログラムを最後まで実施したのはトップクラブのおよそ10シーズンに1つだけで、より厳密な再解析では、試験の根拠は評判ほど確かではないとされました。

2026年4月22日、バルセロナのラミン・ヤマル選手はセルタ戦でPKを決め、これがこの試合唯一の得点になりました。ところが直後に脚を引きずり、医療スタッフに支えられてピッチを出ました。翌日の検査で左脚のハムストリング(太もも裏の筋肉)のけがと確認され、リーグ戦の残りは欠場に。クラブは保存療法で治療し、ワールドカップには間に合う見込みだと発表しました。男子プロサッカーで最も多いけがが、注目の選手を襲った形です。

その背景にある数字は、2001年から欧州トップクラブの医療記録を追い続けている「UEFAエリートクラブ傷害研究」から得られています。最初のシーズン、ハムストリングのけがは全負傷の12%でした。2021/22年には24%に達し、けがで休んだ日数全体の5分の1を占めました。25人のチームなら1シーズンに約8件が見込まれます。その間ずっと、試験でけがを半減させた安上がりな運動がありながら、ほとんど使われてきませんでした。

この記事では、ハムストリングのけががサッカー選手に何をもたらすのか、危険がどこに集中するのか、ノルディック・ハムストリング・エクササイズを中心に何が効くと測定されたのか、試験の根拠がその評判ほどすっきりしたものではない理由、そして答えがプレーをやめることではなく、慎重にプレーすることである理由を見ていきます。

ハムストリングのけがはサッカー選手に何をもたらすか

ハムストリングは太ももの裏にある3つの筋肉です。全力疾走では、前に振り出される下腿にブレーキをかけながら引き伸ばされるときに最も大きな力を出し、その瞬間に傷つきます。UEFAの研究は2011年以降、損傷の部位を記録しています。部位が特定できたけがの80%は外側の大腿二頭筋で、約7割は画像検査で筋線維の損傷が見える「構造的」なけがでした。

多くの選手は数週間で復帰します。21シーズン・2,636件のハムストリングのけがで、離脱期間の中央値は13日でした。構造的なけがは機能的なけがより長く、中央値17日対6日です。危ないのは復帰後です。ハムストリングのけが全体の約18%は再発で、その3分の2以上は復帰から2か月以内に起きていました。1シーズンでは、選手の約5人に1人がハムストリングのけがで練習か試合を休んでいます。

増え続けるハムストリングのけがの割合

欧州トップレベルの男子サッカーで、練習や試合を休むけが全体と、けがによる離脱日数全体に占めるハムストリングのけがの割合。

全負傷に占める割合、2001/02年12%
全負傷に占める割合、2021/22年24%
離脱日数に占める割合、2001/02年10%
離脱日数に占める割合、2021/22年20%
1シーズンに1回以上けがをする選手20%

出典:Ekstrand et al., British Journal of Sports Medicine(2023)、UEFAエリートクラブ傷害研究。20か国54チームの選手3,909人。

割合が増えた理由の一部は、ほかのけがが減ったことです。2019年までの18シーズンで、けが全体の発生率は1シーズンに3%ずつ下がり、靱帯のけがはそれ以上に減った一方、筋肉のけがは横ばいでした。ただし、ハムストリングのけがは絶対数でも増えています。2014/15年から2021/22年にかけて、練習中の発生率は年6.7%ずつ上昇し、試合中も上昇しましたが、こちらは統計的に有意ではありませんでした。

危険が集中するところ

点描の抽象画:長い地平線の右端近くに細い縦線が1本立ち、点の球がその線に向かって集まり、近づくほど密に重くなっていく。
時間が尽きるところに、重みが集まる。

危険なのは試合です。21シーズンを通じて、ハムストリングのけがは試合1,000時間あたり4.99件、練習1,000時間あたり0.52件で、試合のほうが10倍近く高く、再発でも同じ比率でした。それ以前の13シーズンの分析では、1シーズンに22%の選手が少なくとも1回ハムストリングを痛めています。女子のトップチームでは差が小さく、女子チャンピオンズリーグ出場クラブの1シーズンでは、試合中の危険は練習の4倍、ハムストリングは全負傷の13%でした。

試合の中では、けがは特定の時間と動きに集中します。最も多い受傷機転はランニングやスプリントで、構造的なけがの62%を占めました。試合中のけがの半分近くは、前後半それぞれの最後の15分に起きています。研究者は増加の理由として2つの可能性を挙げています。トップレベルのサッカーには、より速い高強度のランニングが以前より多く含まれるようになったこと、そして選手が1年の大半を試合に費やし、シーズン間の休みが4〜6週間しかないことです。

日程も影響します。13万件を超える出場記録を14年間分析した研究では、試合間隔が6日あると、3日以内の場合より筋肉のけがの発生率が21%低く、7〜10日では19%低くなっていました。けが全体の発生率には差がありませんでした。観察研究であり、どの選手を休ませるかは無作為に決まるわけではありませんが、方向はそれまでの研究と一致していました。

ハムストリングのけがの危険を高めるもの

さまざまな競技の選手71,324人・ハムストリングのけが8,319件を含む前向き研究78件の2020年メタ解析によるリスク比。1倍は上乗せなし。

最近のハムストリングのけが4.8x
過去のハムストリングのけが(時期を問わず)2.7x
前十字靱帯(ACL)損傷の既往1.7x
ふくらはぎの肉離れの既往1.5x
こうした既往なし1x

出典:Green et al., British Journal of Sports Medicine(2020)、doi:10.1136/bjsports-2019-100983。年齢が高いことも有意な危険因子でした。

最も強い警告サインは、その選手自身のけがの歴史です。危険因子に関する2020年のメタ解析では、最近ハムストリングを痛めた選手の危険は4.8倍、時期を問わず過去に痛めた選手では2.7倍でした。年齢が高いこと、膝の靱帯損傷やふくらはぎの肉離れの既往も、これより小さい危険を上乗せします。復帰後の最初の2か月に最も注意が必要なのも、試験が過去にけがをした選手を分けて分析したのも、そのためです。

効果が測定された対策

点描の抽象画:平らな地平線の上でゆっくりと前に傾く1本の点の柱。根元に固定された細い直線がそれを支え、その後ろの地面に小さな琥珀色の四角が置かれている。
ゆっくり下ろせば、倒れることが力になる。

ノルディック・ハムストリング・エクササイズに器具はいりません。ひざ立ちになってパートナーに足首を押さえてもらい、ハムストリングでブレーキをかけながら上体をできるだけゆっくり地面に向けて倒し、手で押し返して戻ります。標準のプログラムは10週間・27回で段階的に負荷を上げ、週1回・5回×2セットから始めて、週3回・12回、10回、8回の3セットまで増やし、その後は週1回の維持に移ります。

最大の試験はデンマークで行われました。プロとアマチュアの男子50チーム・942人を、このプログラムを行う群と普段どおりの練習を続ける群に無作為に分け、1シーズン追跡しました。急性のハムストリングのけがはノルディック群で15件、対照群で52件。100選手・シーズンあたり3.8件対13.1件で、調整後の発生率比は0.29でした。新規のけがでは3.1件対8.1件、過去にけがをした選手では7.1件対45.8件です。

2015年に発表されたオランダの試験は、40チームのアマチュア選手579人で同じ考え方を検証し、13週間に25回の運動を行いました。ハムストリングのけがは、ノルディック群で選手1,000時間あたり0.25件、対照群で0.8件で、実施率は91%でした。さまざまな競技の選手8,459人を含む15研究の2019年メタ解析は、この運動を含むプログラムでハムストリングのけがが51%減ると推定し、ランダム化試験とされる研究だけをまとめても0.52でした。

デンマークのノルディック・ハムストリング試験

ノルディック・プログラム群と通常練習群に無作為に分けたデンマークの男子50チームで、1シーズンの急性ハムストリングのけが(100選手・シーズンあたり)。

再発、通常練習45.8
再発、ノルディック・プログラム7.1
すべてのけが、通常練習13.1
すべてのけが、ノルディック・プログラム3.8
新規のけが、通常練習8.1
新規のけが、ノルディック・プログラム3.1

出典:Petersen et al., American Journal of Sports Medicine 39(11):2296(2011)。必要治療数は、新規のけが1件の予防に25人、再発1件の予防に3人。

それでも、トップクラブの多くは試験どおりには使っていません。2012〜2014年にチャンピオンズリーグとノルウェー1部の50チームを調べた研究では、プログラムを最後まで実施したのは150クラブ・シーズンのうち16、10.7%でした。英国のプロ53クラブの調査では、完全に実施していたのは17%で、選手の受け止め方や筋肉痛が壁として挙がりました。2020/21年には、男子トップ17チームのうち1チーム、女子トップ11チームのうち1チームしか元のプログラムを使っていませんでした。

実際に取り組んでいるトップチームはどれだけか

ノルディック・ハムストリング・プログラムを最後まで実施したチームまたはクラブ・シーズンの割合。プロサッカーの4つの調査より。

チャンピオンズリーグとノルウェー(2012〜2014年)10.7%
英国のプロクラブ(2020年)17%
女子トップチーム(2020/21年)9%
男子トップチーム(2020/21年)6%

出典:Bahr et al., BJSM(2015)、Chesterton et al., Translational Sports Medicine(2020)、Ekstrand et al., BMJ Open Sport & Exercise Medicine(2022、2023)。いずれも自己申告の調査。

チーム全体で取り入れたクラブは、結果がよくなっていました。2020/21年、チーム練習にこの運動を組み込んだ男子トップチームは、けがをした選手だけに使ったチームと比べ、ハムストリングのけがが1チームあたり5件対11件、1,000時間あたりの離脱日数が12日対35日でした。女子チームでは、試合中の発生率が1.4対4.0でした。ただし、いずれも小規模な観察的な比較で、予防に熱心なクラブはほかの点でも違っているかもしれません。

効果の大きさは、まとめ方しだい

ノルディック・エクササイズを含むプログラムでのハムストリングのけがのリスク比。1未満ならけがが少ないことを示します。括弧内は95%信頼区間。

2019年メタ解析、全15研究(0.32〜0.74)0.49
ランダム化とされた8試験(0.32〜0.85)0.52
バイアスの危険が高い研究を除外(0.34〜0.89)0.55
2021年の再評価、真にランダム化した5試験(0.20〜1.52)0.56
2021年の再評価、ランダム化試験6件(0.27〜1.29)0.59
効果なし1.00

出典:van Dyk et al., BJSM 53(21):1362(2019)、Impellizzeri et al., Journal of Clinical Epidemiology(2021)。

ここで、根拠はその評判より弱くなります。2021年の再評価は、主要なメタ解析に含まれた15研究のうち、実際に選手をこの運動に無作為に割り付けていたのは5件だけだと指摘しました。その5件をまとめたリスク比は0.56で、信頼区間は0.20〜1.52。新しい試験1件を加えると0.59(0.27〜1.29)でした。どちらの区間も「効果なし」を含みます。女性を対象にした2研究では有意な減少は見られず、参加者や評価者を盲検化することもできませんでした。

答えがプレーをやめることではない理由

点描の抽象画:広い地平線を横切って等間隔に並ぶ点の球の列。どの球も短い点の柱に載り、ほかより少し低い1つの球の下にだけ小さな琥珀色の四角が置かれている。
一歩ずつ支えがあれば、列は崩れない。

ハムストリングのけがはよくある厄介なけがですが、選手生命を断つことはまれで、ほとんどの選手は2〜3週間で戻ってきます。しかも危険は均等に散らばっていません。練習より試合、スプリント、前後半の終盤、過密日程の週、そして何より過去のけがの後の数か月に集まっています。どれも計画で避けたり備えたりできるので、この危険はプレーの代償として決まったものではなく、チームが動かせる分布だと言えます。

デンマークの試験はこれを分かりやすく示しています。新規のけがを1件防ぐには25人がプログラムを行う必要がありましたが、過去にけがをした選手なら3人で再発を1件防げました。本当の効果が初期の試験の示したより小さかったとしても、かかるのは自重を使った運動を数セットと多少の筋肉痛で、元の段階的なプロトコルでは筋肉痛はごくわずかだったと報告されています。

アマチュアの選手にとって、やることは多くありません。シーズン前にノルディック・エクササイズを少しずつ増やし、シーズン中も週1回続けること。過去のハムストリングのけがを最も強い警告サインと考え、全力で走る前にリハビリを最後までやり切ること。できるだけ試合と試合の間に回復の時間をとること。ほかのけがに対するウォームアップの試験については、以前の記事サッカーの膝と頭のけがで紹介しています。

よくある質問

ハムストリングのけがで、サッカー選手はどれくらい離脱しますか?

欧州トップレベルの男子サッカーでは、21シーズンの離脱期間の中央値は13日、筋線維の損傷が見えるけがでは17日でした。再発が多く、その多くは復帰から2か月以内に起きています。

ノルディック・ハムストリング・エクササイズは効きますか?

デンマークとオランダの男子サッカーのランダム化試験では大きな減少が見られ、メタ解析はけがを約半分に減らすと推定しました。ただ、ランダム化試験だけを厳密に再解析すると効果は不確かとされ、有望ではあるものの疑いなく証明されたとまでは言えません。

なぜこれほど多くのプロクラブが使わないのですか?

調査では、筋肉痛、選手の抵抗感、過密日程で時間がないこと、医療スタッフが練習内容に口を出しにくいことが挙がっています。多くのクラブは、根拠のより乏しいほかの運動を使っています。

女性にも効きますか?

根拠はまだ薄いのが実情です。女性を対象にした2研究では有意な減少は見られませんでした。ただし、観察的な1シーズンの調査では、チーム全体で取り入れた女子トップチームの試合中のハムストリングのけがは少なくなっていました。

まとめ

  • 欧州トップクラブの男子サッカーで、全負傷に占めるハムストリングのけがの割合は2001/02年の12%から2021/22年には24%に増えました。25人のチームなら1シーズンに約8件が見込まれます。
  • 危険は試合中、スプリント、前後半それぞれの最後の15分、そして何より過去にけがをした選手に集中しています。
  • デンマークの試験では、ノルディック・ハムストリング・エクササイズで新規のけがが100選手・シーズンあたり8.1件から3.1件に、再発が45.8件から7.1件に減りました。
  • プログラムを最後まで実施したのはトップクラブのおよそ10シーズンに1つだけで、より厳密な再解析では、試験の根拠は評判ほど確かではないとされました。
  • 慎重にプレーを。シーズン前に段階的に始めて週1回続け、けがから復帰して最初の2か月を最も危ない時期と考えることです。

この記事は公表された研究の要約であり、医学的な助言ではありません。全力疾走中やその後に太ももの裏に痛みがある方、ハムストリングのけがから復帰しようとしている方は、全力で走ることを再開する前に医師または理学療法士に相談してください。

さらに読む:欧州トップレベルのサッカーにおける21シーズンのハムストリングのけがは Ekstrand et al., British Journal of Sports Medicine(2023)。デンマークのノルディック試験は Petersen et al., American Journal of Sports Medicine(2011)。懐疑的な再解析は Impellizzeri et al., Journal of Clinical Epidemiology(2021)。

おすすめの3冊
  • Net Gains、Ryan O’Hanlon(2022)。データがトップサッカーをどう変えたかを追うジャーナリストの本。スカウトから、現代の試合をより速くした要求まで描きます。
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参考文献

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