アメフトの熱中症、命を救う冷水槽
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- 運動性熱射病で亡くなったアメフト選手は1996年以降73人。多くは高校生とラインの選手で、8月に最も多く起きています。
- 熱中症はプレシーズンの最初の2〜3週間に集中します。フロリダの研究では、最初の19回の練習のリスクがその後の23.7倍でした。
- 要となる治療は現場での冷水浸漬です。あるロードレースでは、この方法で治療した熱射病患者274人全員が助かりました。
- 段階的な暑熱順化を義務づけた州では熱中症の発生率が55%低くなりました。ただし、その推計は少ない症例数に基づいています。
2024年8月14日、暑さ注意報が出ていた米カンザスシティ郊外で、ショーニー・ミッション・ノースウエスト高校のフットボール部はウエートトレーニングのあと、午後4時40分から120ヤード走を4本、40ヤード走を6本こなしました。15歳で体重384ポンド(約174キロ)のラインの選手、オベット・ゴメス・レガラードさんは、顔色が悪く、大量の汗をかき、水を求めた末に倒れました。冷却を始めた時点の体温は40.3度(華氏104.6度)。2日後に亡くなり、検視官は死因を熱中症(熱射病)の合併症としました。
こうした死は、研究者が何十年も前から指摘してきた型に当てはまります。ノースカロライナ大学の重大スポーツ傷害研究センターによると、1996年以降に運動性熱射病で亡くなったアメフト選手は73人で、その多くが高校生です。死亡は夏の終わり、練習の序盤に、体の大きな選手に集中しています。一方で医学の文献では、ほぼ完全に防げるとされています。米マサチューセッツ州のあるロードレースでは、冷水で冷やされた熱射病患者274人が全員助かりました。
この記事では、防具をつけた選手の体に暑さが何をするのか、危険がどこに集中するのか、州の暑熱順化ルールから冷水槽まで何が効くと測定されたのか、記録が自信に満ちた主張ほど確かではない理由、そして答えが練習をやめることではなく、暑さの中で慎重にプレーすることである理由を見ていきます。
暑さはフットボール選手の体に何をするのか
運動による熱中症には、けいれんや失神、熱疲労から、最も重い運動性熱射病までの段階があります。熱射病は、深部体温がおよそ40度を超え、同時に混乱や意識障害、異常な行動など脳の働きが乱れた状態です。激しく動く筋肉は、高温多湿の空気の中で体が逃がせる以上の熱を生み出し、肌を覆う防具は熱を運び出すはずの汗の蒸発を妨げます。体へのダメージは、高い体温が続いた時間で決まります。
軽い症例はよくあります。2012〜2014年のシーズンに大学34チームを担当したアスレティックトレーナーは、熱中症を選手1人の参加1回(アスリート・エクスポージャー)1万回あたり1.67件記録しました。高校では0.57件、ユースでは1.82件で、どの年代でもプレシーズンの発生率が高くなっていました。大学60校の別の研究では、熱中症の約4分の3はけいれんで、命に関わる種類ではありませんでした。
死亡はまれで、しかも暑さが最も多い原因ではありません。1998〜2018年に高校・大学のフットボール選手に起きた、原因のわかっている外傷以外の死亡182件のうち、58%は心臓突然死、24%は運動性熱射病、12%は鎌状赤血球形質に関連した虚脱でした。2000年以降、こうした内因性の死亡は衝突による死亡を上回っており、心肺蘇生とAEDもすべての練習で欠かせません。
タックルなしでフットボール選手が亡くなる理由
米国の高校・大学フットボール選手の、原因が判明している外傷以外の死亡182件の内訳(1998〜2018年)。
出典:Boden et al., Orthopaedic Journal of Sports Medicine(2020)。全米重大スポーツ傷害登録のデータ。
危険が集中するところ

危険の大半はプレシーズンの最初の数日にあります。フロリダ州中北部の高校13校のアスレティックトレーナーは、2013〜2018年の代表チームの練習で起きた熱中症をすべて記録しました。54件のうち51件はシーズン最初の19回の練習で起き、ほぼ半数は最初の6回に集中していました。最初の19回の発生率は、体が暑さの中での運動に慣れたあとの44回の23.7倍でした。
体の大きさも関係します。1980〜2009年のフットボール選手の熱中症死58件を調べた研究では、死亡は米国東部に集中し、8月に最も多く、半数以上が湿度の高い朝の練習で起きていました。選手の86%はラインの選手で、79%はBMIが30を超えていました。すべての死亡が、米国スポーツ医学会の暑さ指数(WBGT)の区分で「高い」か「極端」にあたる条件で起きていましたが、ヒートインデックスではもっと低く評価される日も多くありました。
3つ目の要因は練習の中身です。2024年の臨床総説によると、フットボールの熱射病死の97%はラインの選手で、最近の報告では高校・大学の死亡はすべてコンディショニング中に起きていました。ポジションに合わないドリルや、罰としての走り込みがよく見られました。ノースカロライナ大学のセンターも、2016〜2020年の熱射病死12件のうち7件をコンディショニング中としています。鎌状赤血球形質もあったカンザスの選手は、まさにこの型に当てはまります。
高校フットボールで熱中症が起きるとき
フロリダ州中北部の高校13校、8〜10月、2013〜2018年。アスリート・エクスポージャー1万回あたりの熱中症件数。
出典:Tripp et al., Orthopaedic Journal of Sports Medicine(2021)。WBGT(暑さ指数)は、気温・湿度・日射・風を組み合わせた指標です。
基準値も地域ごとに変えるべきだとされています。1980〜2014年に熱射病で亡くなったフットボール選手61人を調べた2018年の研究では、北で起きた死亡ほど、その日のWBGTが低くなっていました。涼しい州の選手は暑さに慣れておらず、南のチームなら練習を続ける値でも危険な状態に陥ります。著者らは、全国一律ではなく地域別の基準を設けるよう求めました。
効果が測定された対策

まず治療から見ます。生死を分けるのは治療だからです。冷水を張った槽に全身を沈める方法は、研究された中で最も速く体を冷やせます。指針は「まず冷やし、それから運ぶ」、つまり救急車が出る前に現場で体温を下げることです。マサチューセッツ州のファルマス・ロードレースでは、18年間に運動性熱射病の274人がこの方法で治療されました。到着時の平均体温は41.4度で、1分あたり約0.22度ずつ下がり、274人全員が助かりました。
ただし、備えができているかは別の問題です。2017年に高校フットボールを担当するアスレティックトレーナー910人に尋ねた調査では、練習前に冷水槽に氷水を満たしていたのは57%、現場でWBGTを測っていたのは53%でした。推奨される6つの備えをすべて整えていたのは28%にとどまりました。備えは最も暑い南部の州で最も進み、涼しい北部で最も遅れていました。北部では、熱中症死は起きるまでは起こりそうにないことに思えるのです。
高校フットボールの熱射病への備え
2017年のプレシーズンに各対策を実施していたと答えたアスレティックトレーナー910人の割合。自己申告の調査で、回答完了率は12.7%。
出典:Kerr et al., Journal of Athletic Training 54(9):921(2019)。
予防の基本は暑熱順化です。最初の1〜2週間、練習時間や防具、1日2回の練習を段階的に増やしていきます。全米の作業部会は2009年に高校向けの指針を出しました。2005〜2017年の州・年ごとのデータを比べた研究では、指針を義務づけた州のプレシーズン練習での熱中症発生率は1万回あたり0.42件、義務づけていない州では0.72件で、8月の気温や長期的な傾向を調整すると55%低くなっていました。ただし観察研究です。
州の義務化の有無とプレシーズンの熱中症
高校フットボールのプレシーズン練習、2005/06〜2016/17年度。アスリート・エクスポージャー1万回あたりの熱中症件数。
出典:Kerr et al., Environmental Health Perspectives(2019)、doi:10.1289/EHP4163。
ここでは、よく語られる話ほど根拠は強くありません。指針を満たしていたのは8州、455の州・年のうち32だけで、義務化の数字はわずか7件の症例に基づいています。大学はさらにはっきりした例です。2001年にミネソタ・バイキングスのタックル、コーリー・ストリンガー選手が亡くなったことは各段階の暑さ対策のきっかけになり、全米大学体育協会(NCAA)は2003年、最初の5日間は1日1回の練習とし、防具を段階的に加えるよう義務づけました。しかし2020年の分析では、その後も大学の熱中症死に有意な変化はなく、その後の6件のうち4件はこの5日間の外で起きていました。
答えがプレーをやめることではない理由

約110万人いる高校選手の数と比べれば、1人あたりのリスクは小さなものです。1998〜2018年の熱射病による死亡率は、高校選手10万人あたり年約0.15人、およそ70万分の1でした。大学選手はその約4倍ですが、それでも10万分の1未満です。全米の死亡数は2016〜2020年の12人から、その後の5年間で減りました。
リスクは固定されたものではありません。ルールや習慣で動く分布です。最初の2週間、体の大きな選手、いちばん暑い時間帯、そしてコンディショニングのドリルにその大半が集まっていて、どれも変えられます。テキサス州は2026年8月から、学校スポーツでWBGTの現場測定と冷水槽または冷却シートの設置を義務にしました。2025年にランカスターの15歳の選手が熱中症で亡くなったことがきっかけです。一方カリフォルニア州は2026年9月、暑さに慣れた砂漠地域では練習の中止が多すぎるという議員の主張を受け、基準値を毎年見直す法律を定めました。
保護者と選手が確かめることは多くありません。学校にアスレティックトレーナーがいるか、WBGTを測っているか、練習前に冷水槽を満たしているかを尋ねましょう。最初の2週間をシーズンで最も危ない時期として扱うこと。ラインの選手や鎌状赤血球形質のある人は、より注意して見守る必要があります。暑さの中での混乱、ふらつき、転倒は、すぐに冷水、それから救急車です。
フットボールで熱射病死がどれほどまれか
NCAAの2003年の暑熱順化ルールの前後での、選手10万人あたり年間の運動性熱射病死亡数。
出典:Boden et al., Orthopaedic Journal of Sports Medicine(2020)、全米重大スポーツ傷害登録、1998〜2018年。差は統計的に有意ではありませんでした。
よくある質問
熱射病で亡くなるフットボール選手は年に何人ですか?
米国では年に数人です。ノースカロライナ大学のセンターは、1996年以降のフットボールの熱射病死を73人と数えており、多くは高校生です。2016〜2020年の5年間では12人で、その後はそれより少なくなっています。
運動性熱射病は助かりますか?
すばやく冷やせば、ほぼ必ず助かります。あるロードレースでは、冷水槽で治療した熱射病患者274人が全員助かりました。冷却は搬送の前に、現場で始めるべきです。
なぜラインの選手は危険が高いのですか?
チームで最も体が大きく、2024年の総説によると、ラインの選手はほかの選手より体温が上がりやすく、下がりにくいからです。2つの症例集積研究では、フットボールの熱射病死に占めるラインの選手の割合は86%と97%でした。
WBGT(暑さ指数)とは何ですか?
気温・湿度・日射・風を組み合わせた暑さのストレスの指標です。スポーツでは気温やヒートインデックスより役に立ち、基準値は地域によって異なります。
まとめ
- 運動性熱射病で亡くなったアメフト選手は1996年以降73人。多くは高校生とラインの選手で、8月に最も多く起きています。
- 熱中症はプレシーズンの最初の2〜3週間に集中します。フロリダの研究では、最初の19回の練習のリスクがその後の23.7倍でした。
- 要となる治療は現場での冷水浸漬です。あるロードレースでは、この方法で治療した熱射病患者274人全員が助かりました。
- 段階的な暑熱順化を義務づけた州では熱中症の発生率が55%低くなりました。ただし、その推計は少ない症例数に基づいています。
- 高校選手1人あたりのリスクは年に約70万分の1です。慎重にプレーを。ゆっくり始め、暑さを測り、冷水槽を満たしておくことです。
この記事は公表された研究の要約であり、医学的な助言ではありません。暑さの中で運動中に混乱したり、ふらついたり、倒れたりした人には救急処置が必要です。すぐに冷水で冷やし始め、救急車を呼んでください。熱中症のあとの競技復帰やご自身のリスクについては、医師や理学療法士に相談してください。
さらに読む:州による暑熱順化の義務化は Kerr et al., Environmental Health Perspectives(2019)。ファルマス・ロードレースでの冷水浸漬は DeMartini et al., Medicine & Science in Sports & Exercise(2015)。NCAAのルールを批判的に検証したものは Boden et al., Orthopaedic Journal of Sports Medicine(2020)。
- The Heat Will Kill You First、Jeff Goodell(2023)。極端な暑さが体と社会に何をするのかを描いたジャーナリストのルポ。暑さが思った以上に速く命を奪う理由がわかります。
- Exercised、Daniel E. Lieberman(2021)。ハーバードの生物学者が、体がどう動き、汗をかき、暑さに耐えるよう進化したかを解説し、トレーニングへの意味を考える本。
- Burn、Herman Pontzer(2021)。体が実際にどうエネルギーを使うかを描いた本。大きな体が激しく動くとなぜ大量の熱が出るのかの背景がわかります。
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