バレーボールの肩のけが、数えるべきはスパイクの本数
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- 3シーズンの調査で、プロと大学の男子選手の67%が肩の不調を報告し、平均的な1週間でも19%が不調を抱えていました。
- 危険の大半を背負うのはアウトサイドヒッターとオポジットです。過去に肩を痛めたことが、単独では最も強い予測因子です。
- 肩甲上神経の障害による棘下筋のやせは、トップ選手の最大3分の1に見つかっており、痛みがないことも少なくありません。
- 肩のウォームアッププログラムは、トップレベルのハンドボールで肩の不調を28%減らしました。バレーボールで同じ効果を示した試験はまだありません。
2026年7月8日、フィリピンのクラブNxledは、主将のブルック・ヴァン・シックル選手がPVL on Tourを全休すると明らかにしました。プレミア・バレーボールリーグで3度MVPに選ばれた選手で、右肩に軽い断裂がありました。エットーレ・グイデッティ監督はSPIN.phに「肩に軽い断裂があるが、次のカンファレンスには戻ってくる」と話しています。リーグによると、本人は当初、痛みを腱炎だと思っていたそうです。
彼女のケースが珍しいのは、ニュースになったという点だけです。日本、カタール、トルコ、米国のプロと大学の男子選手75人を3シーズン追った研究では、シーズン中に肩の不調を報告した選手は67%、練習量やパフォーマンスを大きく落とすほどの不調があった選手は27%でした。平均的な1週間をとっても、19%が不調な肩のままプレーしていました。その大半は使いすぎによるものです。
この記事では、スパイクとサーブが肩に何をもたらすのか(バレーボールに多く、しかも痛みのないことが多い神経の障害を含めて)、危険がどこに集中するのか、何がそれを減らすと測定されたのか、そして答えがプレーをやめることではなく、慎重にプレーすることである理由を見ていきます。もうひとつの代表的なけがである足首のねんざは別の記事で取り上げています。
スパイクとサーブが肩に何をもたらすか
スパイクは、ジャンプをつけた投球動作です。腕は外側へ極端にひねられた位置まで引かれ、ボールに向かって振り抜かれたあと、肩の後ろにある小さな筋肉で急ブレーキをかけられます。米国の大学1部リーグの選手14人を調べた実験では、スパイクとサーブではボールに触れる瞬間の肩の外転と水平内転が、野球の投球より大きいことがわかりました。著者は、ある神経の障害がバレーボールでとりわけ多い理由がここにあるかもしれないとしています。
よくある診断は、腱板の腱障害、インピンジメント、関節唇の損傷、不安定症です。プロとマスターズの選手95人を8か月追った研究では、52.6%が肩の痛みを訴え、38.9%が1日以上練習や試合を休みました。けがをした選手のMRIで多かったのは、肩峰下滑液包炎(94%)、上方関節唇の損傷(73%)、肩鎖関節の関節症(62%)でした。
バレーボール選手の肩はどれくらい不調を訴えるか
4つの研究で肩の不調を報告した選手の割合。定義はそれぞれの研究によります。自己申告の質問票では、試合を休むほどではない不調も拾われます。
出典:Skazalski et al., Journal of Athletic Training 59(1):81(2024)、Forthomme et al., Medicine & Science in Sports & Exercise(2013)、Frisch et al., Orthopaedic Journal of Sports Medicine(2017)。
バレーボールに最も特有なのは、肩甲上神経障害です。肩甲上神経は肩甲骨の背中側を通って棘下筋に向かいます。棘下筋は腕を外側にひねり、振り抜いた腕にブレーキをかける筋肉です。関節の近くのくぼみで神経が引き伸ばされたり圧迫されたりすると、筋肉に信号が届かなくなり、目で見てわかるほどやせていきます。1994年、神経内科医が高いレベルの男子選手30人を調べたところ、12人にこの障害が見つかり、うち8人は自覚症状のない潜在的なものでした。国際レベルの選手36人を加えると有病率は33%で、すべてスパイクを打つ腕の側でした。
その後の推定はもっと低くなっています。ジャンプトップスピンサーブが最も一般的なサーブになっていた2020年、プロ選手82人を調べた研究では、棘下筋のやせが男子の9%、女子の12%に見つかりました。どの例も外にひねる力が弱くなっていましたが、痛みやパフォーマンスの低下を訴えた選手はいませんでした。著者はサーブの変化で頻度が下がったと予想していましたが、1回きりの横断研究では、なぜ下がったのかまでは示せません。
スパイクを打つ側の肩に見られる神経障害と筋肉のやせ
肩甲上神経の異常または棘下筋のやせが見つかったトップ選手の割合(研究別)。神経検査、診察、MRIなど方法は研究ごとに異なります。
出典:Eggert・Holzgraefe(1993)、Holzgraefe et al., British Journal of Sports Medicine 28(3):177(1994)、Witvrouw et al., BJSM 34(3):174(2000)、Miura et al.(2019)、Mazza et al.(2020)。
危険が集中するところ

いちばんはっきりした目印はポジションです。超音波検査と質問票で数シーズン追跡された男子代表チームでは、12週間のうちに肩の不調が出たのは、アウトサイドヒッター19人中11人、オポジット4人中2人でした。これに対してミドルブロッカーは19人中2人、セッターは12人中0人、リベロは5人中1人です。アウトサイドヒッターとオポジットを合わせると、不調が出る可能性はほかの選手の12.2倍でした。ミドルも同じくらい跳びますが、著者はアタックの負荷が軽く、打ち方も違う点を挙げています。
同じ傾向はプロの世界から遠く離れた場所でも見られます。米国中西部の女子高校生175人では、転倒や衝突によらない肩の痛みを繰り返していたのは、アタッカーの43.8%に対し、セッターとディフェンスの専門選手では29.8%でした。学校のチームに加えてクラブのシーズンもプレーしている選手は、学校だけの選手より多く、43.3%対32.6%でした。
ポジション別に見た肩の不調の出やすさ
男子代表チームで、開始時に不調のなかった選手のうち12週間の追跡中に不調が出た割合。人数が少ないため括弧内に人数を記載。
出典:Skazalski・Bahr・Whiteley, Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports(2020), doi:10.1111/sms.13831。
個人の要因で最も強いのは、以前にも不調を訴えたことのある肩です。9チームの1部・2部の選手66人を調べた研究では、利き腕側の肩を痛めた経験のある選手は、シーズン中に再び痛みが出るリスクが9倍で、肩をひねる筋肉の伸張性の筋力が強いことは予防的に働いていました。プロ男子の研究では、肩の不調を抱えてシーズンに入った選手は全体の38%の週で不調を報告し、問題なく始めたチームメートは8%でした。
負荷は、コーチが変えられる要因です。中西部の調査では、1週間に何回打ったりサーブしたりしたかを尋ねました。100回増えるごとに痛みを繰り返すオッズは約1.3倍になり(調整後は有意性が境界線上)、週250回を超えると痛みのある選手の割合がはっきり増えました。内容のわからないオフシーズンのウエイトトレーニングはオッズ3.2倍で、著者は種目が適切でないか休養が足りないのではないかと推測しています。1回きりの自己申告の調査なので、示せるのは関連であって因果ではありません。
肩の痛みは負荷と既往とともに増える
2つの研究。上:米国の女子高校生で痛みを繰り返す人の割合を、危険因子(週250回超のアタックとサーブ、学校で5年超のプレー、オフシーズンのウエイト)の数別に。下:プロ男子で肩の不調があった週の割合。
出典:Frisch et al., Orthopaedic Journal of Sports Medicine(2017)、Skazalski et al., Journal of Athletic Training 59(1):81(2024)。
ほかの目印は結果がそろいません。95人のコホートでは、肩甲骨の動きのリズムが乱れる「肩甲骨ジスキネジア」で痛みのオッズが4.2倍、けがのオッズが3.5倍、レギュラーであることでけがのオッズが2.7倍でした。一方、性別、年齢、ポジション、練習の過負荷とははっきりした関連がありませんでした。小さなコホート同士では、このように結果が食い違うことがよくあります。
効果が測定された対策

肩の不調を防ぐと示されたバレーボール専用のプログラムは、まだありません。いちばん確かな根拠は、同じく頭上からの投げる動作を繰り返すハンドボールから得られています。ある試験では、トップレベルの45チーム・660人をチーム単位で無作為に分けました。半数はオスロ・スポーツ外傷研究センターの肩のプログラムを週3回ウォームアップに加えました。狙いは、ハンドボールの研究で見つかった危険因子、つまり回旋の可動域の低下、外にひねる力の弱さ、肩甲骨の制御の悪さです。
7か月のシーズンを通じた肩の不調の平均有病率は、プログラムを行ったチームで17%、対照群で23%でした。オッズ比は0.72で、28%低い計算です。大きな不調は8%から5%に減りましたが、この差は偶然の可能性がありました。試験を行ったのはプログラムを作ったセンター自身で、対象はバレーボールではなくハンドボールです。
ウォームアッププログラムと使いすぎの不調(ランダム化試験)
シーズン中の平均有病率。ハンドボール:トップ選手660人の肩の不調。バレーボール:愛好家の成人672人のあらゆる使いすぎの不調。
出典:Andersson et al., British Journal of Sports Medicine 51(14):1073(2017)、Gouttebarge et al., Journal of Sports Sciences(2020)。
バレーボールで唯一の大規模な試験は、肩に関しては期待に届きませんでした。オランダで、愛好家の成人672人を地域単位で、VolleyVeiligと呼ばれる15分のウォームアップ(ゴムバンドを使った外旋運動など、肩の運動4〜5分を含む)か、普段どおりの練習に分けました。急性のけがは粗い分析で21%少なかったものの、調整後は有意でなくなり、使いすぎの不調には差がありませんでした。著者のうち3人は、オランダ協会とともにこのプログラムの開発に関わっていました。
残るのは負荷の管理で、これはもっともらしいものの、まだ証明されてはいません。実験室ではスパイクの打ち方を比べ、肩の角度が変わることが示されていますが、打ち方でけがが防げるかを確かめた研究はありません。男子代表の研究では、超音波で利き腕側の滑液包が厚くなっている選手は10.2倍、腱に新しい血管ができている選手は6.5倍不調が出やすく、著者はこうした選手の負荷を見守るよう勧めています。
答えがプレーをやめることではない理由
よく引用されるバレーボールの肩の「事実」には、見た目ほど確かでないものがあります。トップ選手は1シーズンに4万回スパイクを打つという話は、トップのアタッカー数人を診た小さな臨床研究の推定がもとで、その後の総説で繰り返されてきただけです。実際に数えた人はいません。打つ腕の内旋が減ることは野球では警告サインとされますが、システマティックレビューによると、バレーボールでは体のつくりの適応とみられ、2025年の前向きコホートでも痛みやけがとの関連は見られませんでした。棘下筋のやせも痛みのないことが多く、棘下筋だけがやせていた選手38人の報告では35人に痛みがなく、5年半後に再診した16人のうち13人がまだプレーを続けていました。

だからといって、バレーボール選手の肩に問題がないわけではありません。画像で見つかった所見がそのまま障害を意味するわけではないこと、そして危険の多くが動かせるものにあることを意味します。1週間に強く腕を振る回数、休み明けにどれだけ急に量を増やすか、すでに痛む肩に休養とリハビリを与えるか、腕にブレーキをかける筋肉が強いかどうか、です。
実際には、まず数えることから始まります。野球が球数を数えるように、コーチはサーブとアタックの数を記録し、打つ量を1週間に分散させ、オフ明けは段階的に増やし、アウトサイドヒッターの繰り返す痛みを無理をする理由ではなく練習を調整する理由と考えることができます。ハンドボールで試された肩の筋力トレーニングは手間がかからず、同じ筋肉を鍛えます。痛みが続く肩や、目に見えるやせ、力の弱さがあれば、スポーツ医か理学療法士に診てもらいましょう。
バレーボール全体のけがの発生率はほかのチームスポーツに比べて低めで、肩の問題の多くは休養、筋力、負荷の調整で改善が見込めるものです。答えは慎重にプレーすること。打つ腕の仕事量を、管理すべきものとして扱うことです。
よくある質問
バレーボール選手はなぜ肩を痛めるのですか?
主な原因は繰り返しです。スパイクとサーブでは腕を限界までひねってから強くブレーキをかける動作を、1シーズンに何千回も繰り返します。腱、滑液包、関節唇、肩甲上神経のいずれも傷むことがあります。
棘下筋がやせているのは危険ですか?
肩甲上神経の障害のしるしなので診察を受けるべきですが、痛みがないことも多いです。ある報告では、棘下筋だけがやせていた選手の多くは痛みがなく、外にひねる筋肉を鍛えながら何年もプレーを続けていました。
ウォームアッププログラムでバレーボールの肩のけがは防げますか?
まだ証明されていません。肩のプログラムはトップレベルのハンドボールで肩の不調を28%減らしましたが、肩の運動を含むオランダのバレーボール用ウォームアップでは、愛好家の成人の使いすぎの不調は減りませんでした。
1週間に何本スパイクを打つと多すぎますか?
検証された上限はありません。女子高校生の調査では、アタックとサーブが週250回を超えると痛みが目立って増えましたが、自己申告の観察研究です。急に量を増やすことを避けるほうが確かです。
まとめ
- 3シーズンの調査で、プロと大学の男子選手の67%が肩の不調を報告し、平均的な1週間でも19%が不調を抱えていました。
- 危険の大半を背負うのはアウトサイドヒッターとオポジットです。過去に肩を痛めたことが、単独では最も強い予測因子です。
- 肩甲上神経の障害による棘下筋のやせは、トップ選手の最大3分の1に見つかっており、痛みがないことも少なくありません。
- 肩のウォームアッププログラムは、トップレベルのハンドボールで肩の不調を28%減らしました。バレーボールで同じ効果を示した試験はまだありません。
- 慎重にプレーを。サーブとアタックの数を数え、量は少しずつ増やし、繰り返す痛みは練習を調整する合図と考えることです。
この記事は公表された研究の要約であり、医学的な助言ではありません。打つときやサーブのときに肩が痛む、痛みが繰り返す、肩の後ろのやせや力の弱さに気づいた、という場合は、練習量を増やす前に医師または理学療法士に相談してください。
さらに読む:プロ男子の毎週の肩の不調は Skazalski et al., Journal of Athletic Training(2024)。肩甲上神経障害は Holzgraefe et al., British Journal of Sports Medicine(1994)。ハンドボールの肩の試験は Andersson et al., British Journal of Sports Medicine(2017)。
- Outlive、Peter Attia(2023)。生涯にわたる筋力と安定性のトレーニングを勧める医師の本。肩については運動の章が参考になります。
- The Art of Uncertainty、David Spiegelhalter(2024)。ケンブリッジの統計学者が、バレーボールの肩の予防のように根拠が有望でも決着していないときの判断のしかたを解説します。
- Proof、Adam Kucharski(2025)。疫学者が「何かが本当だ」とどう判断するのかを描いた本。いちばん良い予防の試験が別の競技のものであるとき、どこまで当てはめてよいかを考える助けになります。
参考文献
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- Skazalski C, Bahr R, Whiteley R. Shoulder complaints more likely in volleyball players with a thickened bursa or supraspinatus tendon neovessels. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports (2020), doi:10.1111/sms.13831.
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