アイスホッケーの首の切り傷、まれでも5分が勝負のけが
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- スケートの刃による負傷はまれです。米国の大学の試合では、1,000アスリート・エクスポージャーあたり0.11件で、選手同士の接触による7.36件を大きく下回りました。
- 頸動脈が切れると、約5分で命に関わるほどの出血に至ることがあります。氷上での最初の数分が結果を左右します。
- 事例は転倒、ゴール前やボード際での絡み合い、氷上に低い姿勢でいる選手に集中しています。NHLでは首より手首や脚が切られることのほうが多くなっています。
- 2015年の実験では14モデル中13モデルの首ガードが中程度の力に耐えましたが、600ニュートンではほぼすべてが破れました。NHLは現在、カットレベルA5を求めています。
2024年12月7日、カナダ・サスカチュワン州のサスク・イースト・ホッケーリーグで、チャーチブリッジ・インペリアルズの主将コール・キューシター選手(35)がフェイスオフの後に氷上へ倒れました。別の選手のスケートの刃があごの下を切り、傷は頸静脈まで約1.3センチのところに達していました。首ガードは着けていませんでした。手術を受けて80針を縫い、数日で退院しています。チームはその後、全選手に首ガードを着けさせることを決めました。
医師がこうした傷を恐れるのは、時間との勝負になるからです。総頸動脈には1分間に約395ミリリットルの血液が流れています。米国整形外科スポーツ医学会(AOSSM)向けの2024年の解説によると、ここを切ると5分以内に全血液量の40%を超える出血が起き、血圧や脈が保てなくなることがあります。同じ解説が引用する研究では、原因を問わず首の動脈に刺し傷・切り傷を負って病院に着いた患者の26%が亡くなりました。
この記事では、スケートの刃が首に何をするのか、誰がどんな場面で切られるのか、首ガードや手首ガード、ソックスの実験で何がわかったのか、義務化が命を救うとまだ示されていない理由、そして答えが競技をやめることではなく、ガードを正しく着け、緊急時の手順を練習しておくことである理由を見ていきます。
スケートの刃が首に何をするか
スケートによる負傷は、ホッケーのけがの中でも最も少ない部類です。米国の大学の傷害調査10シーズン分で、少なくとも1日休む必要があった男子のけがのうち、スケートとの接触が原因だったのは22件、原因が記録されたもののおよそ1%でした。試合中の発生率は1,000アスリート・エクスポージャーあたり0.11件で、選手同士の接触の7.36件とは大きな差があります。高校男子では6シーズンで3件でした。
大学ホッケーのけがは何から起きるか
NCAA男子アイスホッケーの試合で起きた、休養を要するけがの発生率(1,000アスリート・エクスポージャーあたり、2004〜05年から2013〜14年)。1エクスポージャーは選手1人の1試合出場。
出典:Lynall et al., Journal of Athletic Training 53(12):1129(2018)、NCAA傷害調査プログラム。24時間以上プレーを制限されたけがのみを数えています。
ただし首に関しては、まれだからといって安心はできません。首の中ほどには頸動脈、頸静脈、気道が皮膚のすぐ下に集まっています。1996年の報告は、スケートで首を切られたアマチュア選手3人を取り上げています。2人が亡くなり、1人は血液が気道に流れ込んだことによる窒息、もう1人は首の太い血管からの出血が原因でした。3人とも首の防具を着けていませんでした。
とはいえ、首の傷の多くはずっと軽いものです。メイヨー・クリニックの研究者が米国ホッケー連盟(USAホッケー)の会員26,342人を調査し、首を切ったことがあると答えた33人に聞き取りをしたところ、61%は絆創膏や包帯だけで済んでいました。同じ調査では、切られた人の27%がその時点で首の防具を着けていました。この調査の有病率や重大事故の登録件数は、ボディチェックとけがについての以前の記事で紹介しています。
首の傷はどこまで重くなるか
重症度に関する主な数字。病院の数字は、スポーツに限らずあらゆる原因による首の動脈の貫通性損傷を対象としています。
出典:Stuart et al., Clinical Journal of Sport Medicine(2009)、DiBartolomeo et al.(Murray and Chambers, AOSSM Sports Medicine Update、2024年冬号での引用)。
危険が集中する場面

首が切られた場面を記録する登録制度はないため、傾向は個々の事例から読み取るしかありません。1989年3月22日、バッファローのゴールキーパー、クリント・マラーチャク選手がゴール前のクリースにいたところ、セントルイスのスティーブ・タトル選手が目の前で逆さまに倒れ込み、そのスケートがマラーチャク選手の頸静脈を切りました。300針を縫う傷でした。2008年2月にはリチャード・ズェドニク選手の頸動脈が、フロリダのチームメイト、オリ・ヨキネン選手のスケートでほぼ断たれました。2人とも緊急の血管修復手術で助かっています。
共通しているのは、氷上やその近くに体があり、そのそばで刃が持ち上がることです。キューシター選手はフェイスオフの後に倒れていました。2009年にはカナダ・オンタリオ州のジュニアリーグで、審判のケビン・ブラウンさんが乱闘を止めようとした際、2人の選手が氷上に倒れ、あごひもの下を切られました。ゴールキーパーは混み合うクリースでプレーし、NHLの新しい首ガード規則もスケーターと並んでゴールキーパーを対象にしています。発生率ではなく逸話ですが、転倒、ゴール前やボード際での絡み合い、そして氷上で低い姿勢にある人が危険だとわかります。
NHLの1シーズンの一部で起きたスケートによる裂傷
2019〜20年のNHLシーズン、新型コロナによる中断前の14週間に報告されたスケートによる裂傷を部位別に集計。計6件。
出典:Murray and Chambers, AOSSM Sports Medicine Update(2024年冬号)、New York Timesの報道を引用。
トップレベルでは、首より手首や脚が切られることのほうが多くなっています。手首はグローブの袖口とエルボーパッドの間で露出しており、刃がそこの腱に届くことがあります。スケート靴のすぐ上を切る「ブーツトップ裂傷」は、皮膚の傷が小さくても腱や神経、血管を傷つけることがあります。2016年の総説は、スケートのタンを下に折り返すと脚の露出が増えると警告し、切れにくいソックスを勧めています。
測定でわかった有効な対策

最もよく引用される実験は、2015年のメイヨー・クリニックのチームによるものです。14モデル46個の首ガードを首の模型に取り付け、切れ目が通ればわかるよう下に発泡材を敷いて、研いだスケートの刃を秒速5メートルで引きました。300ニュートンまでの力では、1モデルを除いてすべてが耐えました。600ニュートンでは、1モデルと、別のモデルの3個中1個を除き、すべてのガードが破れました。最も成績がよかったのはスペクトラ繊維を使ったガードでした。
実用上大切な発見がほかに2つあります。刃が45度で当たると、接触面積が小さいため90度より切れやすくなりました。また、ガードの見た目の傷みからは、どれだけ防護力が残っているかを確実には判断できませんでした。カナダでは首ガードをBNQ 9415-370規格で認証しています。1996年に初めて制定され、2026年に再確認されたこの規格は、決められた範囲でスケートの刃から守れるかを試験します。国際版のISO 10256-5は2025年に原案の段階に達しました。
2015年のスケート刃による実験
首の模型と裂傷試験機を使い、刃の速度は秒速5m。荷重は刃をガードに押し付ける力。
出典:Loyd et al., Clinical Journal of Sport Medicine 25(3):254(2015)。600Nの条件は、より厳しい状況を想定したものです。
NHLは別のものさしを選びました。2026〜27年シーズンから、NHLでの出場経験がない選手は、ANSI/ISEAのカットレベルでA5以上の首ガードを試合とウォームアップで着けなければならず、巻き下げたりテープで留めたり切ったりすることは認められません。この等級は、荷重を増やしながらまっすぐな刃を布地の上で引く試験機で決まり、A5は切断に2,200グラム以上を要することを意味します。欧州では同じ試験機をISO 13997のもとで使っています。
カットレベルが意味するもの
ANSI/ISEA 105のカットレベル。TDM試験機(ASTM F2992)で、素材を切断するのに必要な試験刃への荷重(グラム)。NHLが新人選手に求める最低基準はA5。
出典:Ansell「Understanding ANSI/ISEA 105」(2016)、NHL規則9.8(The Hockey News、2026年9月15日の報道)。手袋用の試験の等級は、倒れてくる選手のスケートの力を測ったものではありません。
こうした結果は、ガードが命を救うことを証明するものではありません。実験の荷重は、選手が刃の上に倒れ込むときの実測の力ではなく、米国の調査では切られた選手の27%がすでに防具を着けていました。首ガードの試験は切れにくさだけです。2025年のパック衝突試験では、3製品のうち1つは衝撃力を39%減らしましたが、残りは4〜6%でした。10代の選手46人で試したところ、どのガードも首の動きを狭めました。切れにくいホッケー用ソックスの公開された比較として見つかったのは、サンプル6つの2025年の高校生の研究だけでした。
プレーをやめることが答えではない理由

数分で命に関わる傷では、氷上で何が起きるかが結果を決めます。AOSSMの解説は最初の手順をこう示しています。頸動脈の傷は、動脈全体を圧迫すると脳卒中の危険があるため、指1本で傷口をふさぐ。頸静脈の傷はガーゼなどを詰めて出血を抑える。手足には止血帯を使う。救急車の中でも圧迫を続ける。どの場合も、次の手順は救急隊によるただちに病院への搬送です。
NHLの緊急時対応計画は、毎試合3人の医師、2台の救急車、各アリーナでのAEDを求めています。地域のホッケーではそこまでの体制は望めないため、書面の計画がその代わりになります。誰が救急車を呼ぶのか、誰がゲートを開けるのか、誰が入り口で救急隊を迎えるのか、救急箱はどこにあるのか。2026年4月の審理で検視官は、アダム・ジョンソン選手を手当てした救急隊員が、氷上へ案内する人がいなかったため柵を乗り越えなければならなかったと述べました。
ガードは持っているだけでなく、正しく着けることが同じくらい大切です。巻き下げたり、テープで留めたり、緩く着けたりすると、守るはずの部分がむき出しになります。フルフェイスマスク、切れにくい手首用スリーブ、タンを立てたスケートの下のソックスが、ほかのすき間をふさぎます。規則は根拠より先に進んでいます。イングランド、USAホッケー、そしてNHLが首ガードを義務づけ、2026年5月にはNCAAの規則委員会が2027〜28年からの首・手首・足首の防具着用を提案しました。各リーグは導入前後の裂傷の件数を数えるべきです。
よくある質問
首ガードはスケートによる傷を防げますか?
実験では、ほとんどのガードが中程度の力ではスケートの刃に耐えますが、強い力では破れるものもあります。米国の調査では、切られた選手の27%が首ガードを着けていました。ガードで何人の死亡が防げるかを測った研究はまだありません。
カットレベルA5とはどういう意味ですか?
ANSI/ISEAの等級の1つで、素材を切断するのに試験刃へ2,200グラム以上の荷重が必要なことを示します。NHLは2026〜27年から、新人選手の首ガードにこの等級を求めています。
氷上で選手の首が切れたらどうすればいいですか?
すぐに救急に通報し、傷口を押さえてください。スポーツ医学の解説は、頸動脈の傷は指1本でふさぎ、頸静脈の傷はガーゼなどを詰め、病院に着くまで圧迫を続けるよう勧めています。リンクの緊急時対応計画には、誰が救急隊を氷上へ案内するかを決めておくべきです。
ゴールキーパーは危険が高いのですか?
ポジション別の発生率はありません。ゴールキーパーは混み合うクリースでプレーし、最もよく知られた事例の1つである1989年のクリント・マラーチャク選手のけがもそこで起きました。NHLの新しい規則は、スケーターだけでなくゴールキーパーも対象にしています。
子どもにも切れにくいソックスや手首ガードを着けさせるべきですか?
値段は手ごろで、NCAAの規則委員会も大学選手向けに手首と足首の防具を提案しています。公表された試験は少ないため、カット等級が明記された製品を選び、ソックスが隠れるようスケートのタンを立てておきましょう。
まとめ
- スケートの刃による負傷はまれです。米国の大学の試合では、1,000アスリート・エクスポージャーあたり0.11件で、選手同士の接触による7.36件を大きく下回りました。
- 頸動脈が切れると、約5分で命に関わるほどの出血に至ることがあります。氷上での最初の数分が結果を左右します。
- 事例は転倒、ゴール前やボード際での絡み合い、氷上に低い姿勢でいる選手に集中しています。NHLでは首より手首や脚が切られることのほうが多くなっています。
- 2015年の実験では14モデル中13モデルの首ガードが中程度の力に耐えましたが、600ニュートンではほぼすべてが破れました。NHLは現在、カットレベルA5を求めています。
- 義務化で死亡が減ったことを示した研究はまだありません。ガードを正しく着け、手首と足首まわりも守り、リンクでの緊急時対応計画を練習しておきましょう。
この記事は公表された研究の要約であり、医学的な助言ではありません。出血が止まらない傷には、すぐに救急に通報し、傷口をしっかり押さえ続けてください。防具の選び方やけがからの回復については、医師、理学療法士、アスレティックトレーナーに相談してください。
さらに読む:スケートによる裂傷の氷上での対応は Murray and Chambers, AOSSM Sports Medicine Update(2024年冬号)。首ガードのスケート刃試験は Loyd et al., Clinical Journal of Sport Medicine(2015)。首ガード義務化の総説は Morrissette et al., American Journal of Sports Medicine(2026)。
- The Emergency、Thomas Fisher(2022)。シカゴの救急医が最前線で過ごした1年の記録。病院に着く前の数分がどれほど大切かを思い出させてくれます。
- The Data Detective、Tim Harford(2021)。統計を読み解く10のルール。衝撃的な事例とごく低い発生率が食い違って見えるときに役立ちます。
- The Art of Uncertainty、David Spiegelhalter(2024)。ケンブリッジの統計学者が、まれなリスクと、根拠がそろう前に行動することについて解説します。首ガードの義務化を考えるのに役立ちます。
参考文献
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- Murray JC, Chambers CC. The cutting edge: a deeper look at skate blade lacerations in hockey. AOSSM Sports Medicine Update, Winter 2024.
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- “Chaotic scene” at Sheffield Steelers game in which player Adam Johnson received fatal neck cut – inquest. The Star (Sheffield), 28 April 2026.
