20キロを背負うラッキング

20キロを背負うラッキング、軍の研究者が練習を2週間に1回までとする理由

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  • 体重75キロの人にとって20キロの荷物は体重の27%で、軍の戦闘時の装備重量に近く、専門家がウエイトベストに勧める上限(体重の10〜15%)を大きく超えます。
  • パンドルフの式で計算すると、平地の速歩きに必要なエネルギーは20キロを背負うと約22%増えます。上り坂では心拍数がランニング並みになることがあります。
  • 典型的なけがは靴ずれ、腰痛、疲労骨折、ベルトによる神経まひです。20キロを背負った2時間の行軍では、経験の浅い兵士の約60%に靴ずれができました。
  • フレーム、ヒップベルト、段階的な負荷の引き上げ、重い荷物での練習は10〜14日に1回まで。軍の研究に裏づけがあるのはこうした対策です。

2025年5月までの1年間に、米国でのウエイトベストの売上は50%以上伸びて2,700万ドルに達しました。市場調査会社サーカナの数字を米ニュースサイトのアクシオスが伝えたものです。重りを入れたリュックやベストを身につけて速く歩く「ラッキング」は、軍の訓練場から公園や街の歩道へと広がりました。この記事では、その中でも重い部類、約20キロを背負った速歩きを取り上げます。

体重75キロの大人にとって、20キロは体重の27%にあたります。米陸軍の公衆衛生部門の報告書は、戦闘時の装備重量を体重の20〜30%としています。一方、2026年8月にHealioの取材を受けた専門家は、ウエイトベストは体重の5%ほどから始め、ふつうは10〜15%までにとどめるよう勧めていました。20キロを背負って長い距離を歩くことについてわかっていることは、ほとんどが兵士の研究から来ています。

この記事では、20キロの荷物がエネルギー消費や心拍数、体にどんな影響を与えるのか、けがはどこに集中するのか、何が害を減らすのか、そしてウエイトベストの試験で何がわかったのかを見ていきます。結論は、荷物を置いて出かけることではありません。重さには少しずつ慣らし、正しく背負い、走らずに歩くことです。

20キロの荷物が体にもたらすもの

荷物を運ぶのに必要なエネルギーは、動かす総重量にほぼ比例します。推定によく使われるのは、米陸軍のために研究していたケント・パンドルフ、バルーフ・ギボニ、ラルフ・ゴールドマンが1977年に発表した式で、体重、荷物の重さ、速度、勾配、地面の種類から計算します。体重75キロの人が平らな道を時速5.4キロで歩く場合、荷物なしで約366ワット、20キロを背負うと約447ワットと、22%増える計算です。5%の上り坂では、20キロを背負った場合の値は約696ワットになります。

荷物を背負った速歩きのエネルギー消費(モデルによる推計)

体重75キロの大人がトレッドミルまたは舗装路を時速5.4キロで歩いたときの代謝量(ワット)を、パンドルフの式で計算した推計値。実測値ではありません。

20キロの荷物、5%の上り坂696 W
30キロの荷物、平地501 W
20キロの荷物、平地447 W
10キロの荷物、平地402 W
荷物なし、平地366 W

出典:Pandolf, Givoni, Goldman(1977)、式は Potter et al., PLoS ONE(2015)による。計算は当サイト。2021年の米陸軍の分析では、重い荷物でこの式は消費量を約7%低く見積もっていました。

2021年に米陸軍が体重の66%までの荷物について分析したところ、この式は実測の代謝量を1キロあたり約0.46ワット、率にして約7%低く見積もっていました。1981年のイスラエルの研究では、男性15人が20キロを背負って5%の傾斜のトレッドミルを進みました。速度を上げたときの酸素消費の増え方は、歩いたときが走ったときの2倍で、時速約8.2キロを超えると歩くほうが走るより多くのエネルギーを使いました。

心拍数も同じことを示しています。26キロを背負って時速4.8キロで歩いた男性兵士11人の平均心拍数は、平地で毎分122拍、5%の坂で155拍でした。2024年の研究では、時速8キロで走った若い成人の心拍数は、何も背負わないときが毎分142拍、17キロを背負うと160拍でした。重い荷物を背負って坂を上ると、ランニングと変わらない負担になりえます。

荷物を背負ったときの心拍数

平均心拍数(毎分の拍数)。2つの研究の別々の若い成人のグループなので、個々の値より傾向を比べてください。

時速8キロで走る、17.1キロを背負う160 bpm
時速4.8キロで歩く、26キロ、5%の坂155 bpm
時速8キロで走る、荷物なし142 bpm
時速4.8キロで歩く、26キロ、2.5%の坂135 bpm
時速4.8キロで歩く、26キロ、平地122 bpm

出典:Legg, Ramsey, Knowles, Ergonomics(1992)、男性兵士11人、フレーム付きリュック。Hagstrom, Conger, Steeves(2024)、民間人11人、小銃とリュック。

軍や登山者のデータをまとめた総説は、足の靴ずれ、疲労骨折、ひざや腰のトラブル、足の指の付け根の痛み、そして神経の圧迫を挙げています。神経の圧迫には、肩ベルトが腕神経叢を押して腕に力が入らなくなる「リュックサックまひ」も含まれます。疲労骨折は長い行軍から戻ったプロイセン軍の兵士で最初に報告され、かつては「行軍骨折」と呼ばれていました。まひはまれですが、回復に数か月かかることがあります。

危険が集中するところ

点描の抽象画:低い地平線に立つ細く高い点の柱の上に、点でできた球がひとつ載っている。柱は根元に近いほど点が密になり、そばには何もない地面が長く続き、空にはまばらな点が散っている。
重さは、地面が始まるところに沈んでいく。

危険は荷物の重さ、速度、距離が重なるほど高まり、慣れていない人ほど大きな打撃を受けます。1992年、米陸軍の研究者は、46キロを背負って20キロメートルを全力で行軍した軽歩兵335人を追跡しました。12日以内に24%が少なくとも1つけがをし、そのすべてが脚、足、腰でした。けがのうち35%が靴ずれ、23%が腰のトラブルでした。最近行軍の訓練をしていない部隊では、この程度のけがを覚悟すべきだと著者は警告しています。

この研究の荷物は20キロの2倍以上でしたが、足の靴ずれはもっと軽い荷物でも起きます。英国で比較的経験の浅い兵士が20キロを背負い、決められたペースでトレッドミルを2時間行軍した研究では、約60%に靴ずれができました。肩の不快感は背負ってすぐに始まって着実に強まり、足の痛みは遅れて現れたあと急に強まりました。早い段階の肩の痛みや足のひりつきは、長い行軍の後半でもっと大きなトラブルにつながる前ぶれかもしれない、と著者は指摘しています。

荷物を背負った行軍で体を痛める頻度

影響を受けた兵士の割合。荷物の重さ、時間、定義が異なる3つの軍の研究から。

20キロを背負った2時間のトレッドミル行軍で靴ずれ60%
勤務中に荷物運搬で1回以上けが(338人の調査)34%
46キロを背負った20キロメートルの行軍1回でけが(335人)24%
そのけがのうち靴ずれの割合35%
そのけがのうち腰のトラブルの割合23%

出典:Birrell, Hooper(2007)、Orr et al.(2017)オーストラリア陸軍、Knapik et al., Military Medicine 157(2):64(1992)。

荷物の負担は骨にも届きます。2025年の韓国の研究では、運動靴で歩いた兵士と元兵士10人のすねの骨にかかる曲げの力の最大値が、15キロで15%、30キロで33%増えました。2025年の米国の研究では、20.4キロの荷物で膝蓋骨の裏にかかるストレスの増え方が、身長や体重、太ももの筋力を考慮しても、女性のほうが男性より大きくなりました。

ラッキングはよく「衝撃の少ない運動」と紹介され、一歩ごとの最大の力はある程度それを裏づけます。ヒップベルト付きのリュックで20キロを背負い、自分のペースで歩いた男性9人が地面から受けた力は体重の約1.5倍で、ランニングの2〜2.9倍より小さくなりました。ただ、一歩ごとの力がすべてではありません。ランニングのけがについての記事で見たように、ランニング自体も、思われているほど関節を壊すものではありません。

一歩ごとの最大の力

地面から受ける垂直方向の力の最大値(体重の何倍か)。研究も対象者も異なります。荷物を背負った歩行の値は荷物の重さを含みます。

ランニング、測定した最速(秒速6メートル)2.9x
ランニング、測定した最も遅い速度(秒速1.5メートル)2.0x
25キロのリュックで歩く、ヒップベルトあり1.56x
20キロのリュックで歩く、ヒップベルトあり1.48x
15キロのリュックで歩く、ヒップベルトあり1.43x
荷物なしで歩く(速度により1.0〜1.5倍)1.2x

出典:Nilsson, Thorstensson, Acta Physiologica Scandinavica(1989)、Oberhofer et al., Applied Bionics and Biomechanics(2018)、Keller et al., Clinical Biomechanics(1996)。

距離で比べると、ランニングとの関係は逆になります。米陸軍の歩兵831人の調査では、荷物を背負った行軍の1マイルあたりのけがのリスクは、ランニングの1マイルあたりの1.8倍で、重い荷物で長い距離を歩いた兵士ほどけがが多くなりました。ただ、軍のデータを一般の人にそのまま当てはめることはできません。兵士は命令で、決められたペースで、多くはもっと重い荷物を背負って歩きます。アトランタの理学療法士がアクシオスに語ったように、ラッキングの研究の多くは、ラッキングをする人を運動しない人と比べたもので、ウォーキングや筋トレをする人と比べたものではありません。

害を減らすと確かめられていること

1987年の報告では、行軍中に腕神経叢を傷めた陸軍の訓練兵18人を調べたところ、フレームのないリュックを背負っていた人では、けがの発生率が7.4倍高くなっていました。兵士の荷物運搬についてよく引用される総説は、肩の負担を減らすためにできるかぎりヒップベルトを使い、荷物を体の重心の近くに寄せるよう勧めています。そのほうがエネルギーの消費も最も少なくなります。

点描の抽象画:穏やかな地平線の上で、点でできた球が細い点の柱の脇にぴったりと寄り添い、中ほどの高さで一本の水平な点線が両者を結んでいる。近くの地面には小さな琥珀色の四角がひとつ置かれている。
寄り添わせれば、軽く運べる。

どれだけ背負うかと同じくらい、どれだけの頻度で背負うかが大切です。軍の研究者による2021年の国際的な総説によると、荷物を背負った専用の練習を7〜14日に1回行うと運搬能力が向上し、月に4回を超えると、能力はそれ以上伸びずにけがが増えました。総説は、筋力トレーニングや有酸素運動と組み合わせたうえで、こうした練習は10〜14日に1回までにするよう勧め、荷物を背負った行軍のあと神経や筋肉の働きが戻るまでに48〜72時間かかることがあると指摘しています。

負荷を上げるときは、速度、勾配、地面、荷物の重さのうち1つずつ変えるよう総説は提案しています。例として、荷物を15キロから20キロに増やす代わりに、速度を時速5.0キロから4.5キロに落とし、きつさを同じくらいに保つ方法を挙げています。一般の人向けの助言は、もっと軽いところから始まります。Healioの記事では、専門家の1人が体重の5%ほどを勧め、週2〜3回、2〜3週間痛みなく続けられてから重くするよう助言していました。ただし、効果が測定されているのは、ほとんどがリュックではなくベストの試験です。

ウエイトベストの試験でわかったこと

ベストを着けたトレーニング後の変化率。主に高齢女性を対象とした小規模なランダム化試験から。ベストの重さは体重の最大15%で、20キロよりずっと軽いものでした。

足首で蹴り出す筋力、ベストを着けた12週間のトレーニング40%
椅子からの立ち上がり、7%のベストでエアロビクスダンス、8週間38.1%
椅子からの立ち上がり、同じダンスをベストなしで11.3%
血液中の骨の分解を示す指標、ベストを着けた12週間のトレーニング−14.5%
股関節の骨密度、1年間の減量、ベスト群を含む全群(−1.2〜−1.9%)−1.9%

出典:Klentrou et al., Journal of Aging and Physical Activity 15(3):287(2007)、Sukjit et al., Physical Activity and Nutrition(2026)、Beavers et al., JAMA Network Open(2025)、PMID 40540267。

ベストの試験はどれも小規模で、期間も短いものです。2003年の試験では、ベストを着けて歩き、階段を上り、筋力トレーニングを32週間続けた60代後半の女性9人は、運動しなかった9人に比べて大腿骨頸部の骨密度が改善しました。骨量の少ない高齢女性31人を対象にした2026年の試験では、8週間でTスコアがベストありで0.08上がり、ベストなしで0.18下がりました。57人の女性を対象にした別の2026年の試験では、筋力は伸びたものの骨密度は変わらず、トレーニングによるけがもありませんでした。

答えは荷物を下ろすことではない

最大の試験は、期待しすぎないよう教えてくれます。ウェイクフォレスト大学のINVEST試験では、肥満のある高齢者150人が1年間で体重を約10%減らしました。減量だけのグループ、筋力トレーニングを加えたグループ、減った体重の分を補うように重りを足すベストを1日約7時間着けたグループに分かれました。股関節の骨密度はどのグループでも1.2〜1.9%下がり、ベストのグループは減量だけのグループと変わりませんでした。

同じ試験を追加で分析した2026年の論文(Frontiers in Aging)が、その理由を示唆しています。ベストのグループでは、立っている時間や歩いている時間が長い人ほど骨密度が良好だった一方、減量だけのグループでは逆に骨密度の低下と結びついていました。筆頭著者のジェイソン・ファニング氏は大学のニュースサイトに「ベストはすばらしい道具になりえますが、どんな道具もそうであるように、代わりに仕事をしてくれるわけではありません」と語っています。

点描の抽象画:広く穏やかな地平線に沿って、点でできた4つの球が並び、ひとつ前より少しずつ大きくなっていく。列の向こう端には、小さな琥珀色の四角がひとつだけ立っている。
一歩ごとに、ほんの少し重く。

荷物を背負って歩く力は、鍛えることもできます。荷物を背負って数週間歩くと、運ぶのに必要なエネルギーは減ります。2019年のオーストラリアの研究では、若い男性15人が筋力トレーニングと重りを付けた歩行を10週間組み合わせ、23キロのベストを着けて時速5.5キロで5キロメートル歩く課題で、その課題に特化した向上を示しました。多くの人にとって、リュックはふだん楽しんでいる散歩に筋力トレーニングの要素を加えてくれます。

椎間板の病気や腰痛、股関節やひざの関節症、骨粗しょう症、心臓病、高血圧がある人、妊娠中の人は、まず医師や理学療法士に相談してください。Healioの取材を受けた専門家は、重すぎたり偏ったりした荷物は背骨の圧迫骨折や転倒の危険を高めるため、骨粗しょう症の人は専門家の管理のもとで行うよう助言しています。新しい痛み、胸の不快感、めまい、腕や脚のしびれやピリピリ感が出たら中止してください。そして、重い荷物を背負ったら走らず、歩きましょう。

よくある質問

ラッキングに20キロは重すぎますか?

始めたばかりの人には、たいてい重すぎます。体重75キロの大人の27%にあたり、軍の戦闘時の装備重量に近い重さです。2026年に取材を受けた専門家は、ベストなら体重の5%ほどから始め、ふつうは10〜15%までにするよう勧めています。慣れた人も20キロには少しずつ近づけています。

ラッキングはランニングより関節にやさしいですか?

一歩ごとに見れば、そうです。20キロを背負った歩行で地面から受ける最大の力は体重の約1.5倍で、ランニングは2〜2.9倍でした。ただし1マイルあたりで見ると、兵士のけがのリスクはランニングより荷物を背負った行軍のほうが高くなりました。

重りを入れたリュックで走ってもいいですか?

重い荷物では避けたほうが無難です。時速8キロで走ると、17キロの荷物で心拍数が毎分約142拍から160拍に上がり、20.4キロの荷物ではすねの骨にかかる最大の力も増えました。

ラッキングで骨は強くなりますか?

ウエイトベストの小規模な試験では、主に高齢女性で筋力と一部の骨の指標が改善しました。ただ、最大の試験では、減量中の股関節の骨量減少をベストで防ぐことはできませんでした。

まとめ

  • 体重75キロの人にとって20キロの荷物は体重の27%で、軍の戦闘時の装備重量に近く、専門家がウエイトベストに勧める上限(体重の10〜15%)を大きく超えます。
  • パンドルフの式で計算すると、平地の速歩きに必要なエネルギーは20キロを背負うと約22%増えます。上り坂では心拍数がランニング並みになることがあります。
  • 典型的なけがは靴ずれ、腰痛、疲労骨折、ベルトによる神経まひです。20キロを背負った2時間の行軍では、経験の浅い兵士の約60%に靴ずれができました。
  • フレーム、ヒップベルト、段階的な負荷の引き上げ、重い荷物での練習は10〜14日に1回まで。軍の研究に裏づけがあるのはこうした対策です。
  • ウエイトベストの試験では筋力がそこそこ伸び、骨への効果はまちまちでした。効果が出やすいのは、着けたまま体を動かし続けた場合です。

この記事は公表された研究と報道の要約であり、医学的な助言ではありません。腰や関節、心臓の病気、骨粗しょう症、高血圧がある方、妊娠中の方、ラッキング中に痛みやしびれ、ピリピリ感が出た方は、重い荷物を背負う前に医師または理学療法士に相談してください。

さらに読む:兵士の荷物運搬に向けた体づくりは Orr et al., International Journal of Environmental Research and Public Health 18(8):4010(2021)。兵士の荷物の歴史と生体力学は Knapik, Reynolds, Harman, Military Medicine 169(1):45(2004)。ウエイトベストのINVEST試験は Beavers et al., JAMA Network Open(2025)。

おすすめの3冊
  • The Comfort Crisis、Michael Easter(2021)。ジャーナリストがあえて不便を選ぶ価値を説いた本で、ラッキングや荷物を運ぶことにも多くのページを割いています。読み物として面白い一方、健康効果の主張は根拠ではなく出発点として読むのがおすすめです。
  • Burn、Herman Pontzer(2021)。進化人類学者が、体が実際にどうエネルギーを使っているかを描きます。荷物を足すと消費カロリーがどう変わり、どう変わらないかを考える手がかりになります。
  • Exercised、Daniel E. Lieberman(2021)。ハーバード大学の進化生物学者が、人はなぜ歩き、運び、走るのか、運動の助言がなぜ混乱しがちなのかを語ります。

参考文献

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