マルチ商法(MLM):研究データでわかったこと
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- 米国のMLM参加者の47%が損をし、27%は収支トントンでした。利益が出たのは4分の1で、たいていは少額です。
- 参加は、仕事をしていない女性が多い地域で多い一方、損失は格差の大きい地域で大きくなっています。
- 勧誘は友人や家族を通じて行われ、やめた人の39%が「知り合いに売り込むのが気まずかった」と答えています。
- 収入の開示は期待を下げますが、参加したい気持ちはほとんど変えません。
誘いはたいてい、知り合いから来ます。学生時代の友人、いとこ、公園で知り合ったママ友。「子育てしながらできて、自分がボスになれて、何人かに紹介すれば元が取れる仕事を見つけた。話だけでも聞いてみない?」
これがマルチレベル・マーケティング(MLM)、日本でいうマルチ商法です。参加者は会社から商品を買い、一部を顧客に売り、自分の売上と、自分が勧誘した人(さらにその人が勧誘した人)の売上の両方から報酬を得ます。米国では、これまでに2,000万人以上が参加したことがあると推定されています。
企業側は、MLMを柔軟に働ける小さなビジネスだと説明します。消費者団体は、ほぼ全員が損をする仕組みだと説明します。研究の結論は、消費者金融の多くの問題に比べればはっきりしていますが、研究の量は本来あるべき水準よりも少ないのが実情です。押さえておきたい数字は、米国初の全国代表調査によるものです。参加者の47%が損をし、さらに27%は何も得ていませんでした。
参加者は実際にいくら稼いでいるか
2018年、AARP財団(米国の高齢者団体の関連財団)は、米国でMLMへの参加について初めての全国代表調査を委託しました。調査を率いたのはMarguerite DeLiema、Stephen Bosley、Doug Shadelです。1,016人を対象とし、そのうち601人がMLMの現役または元販売員で、フォーカスグループも4回実施しました。
参加経験者のうち、47%が損をした、27%が収支トントンだった、25%が利益を得たと答えました。利益を得た人の半数以上は、参加していた全期間を通じて5,000ドル未満しか稼いでいません。3分の2は同じ会社には二度と参加しないと答え、62%はどのMLMにも二度と参加しないと答えました。
これらは自己申告の数字なので、記憶違いや、損失を認めたくない気持ちが入り込む可能性はあります。ただ、一部の企業が自ら公表している収入開示とおおむね一致しています。そうした開示でも、ふつうは参加者の大半が1年間にほとんど、あるいはまったく稼いでいないことが示されています。
もっと厳しい数字を挙げる批判者もいます。消費者擁護活動家のJon Taylorは、米国連邦取引委員会(FTC)に提出した報告書で、経費を含めるとMLM参加者の約99%が損をしていると推定しました。この推定は広く引用されていますが、査読を受けておらず、コストの前提は分析者によって変わります。AARPの調査のほうが控えめな情報源です。
MLM参加者が申告した収支
現役・元参加者、米国の全国代表調査
AARP Foundation, Study of Multilevel Marketing, 2018(DeLiema, Bosley and Shadel、実査はGfK)。利益が出た人の半数以上は、合計5,000ドル未満。
仕組みが問題になる理由
米国では、参加者が主に実際の顧客への商品販売で収入を得ているなら、MLMは合法です。報酬が主に他人の勧誘から生まれ、勧誘された人が参加費を払ったり、報酬の資格を保つために商品を買わなければならなかったりする場合は、違法なねずみ講(ピラミッド・スキーム)になります。
この線引きは、聞こえるほど簡単ではありません。多くのMLMでは、「アクティブ」な状態を保ってボーナスの資格を得るために、毎月一定額の商品購入が求められます。参加者が主に自分用に買っている場合、会社の売上は本物でも、お金は外部の顧客ではなく販売員から出ていることになります。
経済理論は、この仕組みが懸念される理由を説明する助けになります。Yair Antlerは2023年にTheoretical Economicsに発表した論文で、MLMの報酬プランをモデル化し、参加者が確率を理解していて、商品自体に価値がない場合でも、会社が利益を上げられることを示しました。そのために必要なのは2つ。参加費と、各参加者の下の少なくとも2階層の勧誘者に対する報酬の支払いです。モデルによれば、本当に良い商品と十分な情報を持つ参加者がいる会社なら、どちらも使う理由はほとんどありません。
Claudia GroßとDirk Vriensは2025年にJournal of Public Policy and Marketingに発表した論文で、MLM企業が自社の参加者にどう購入を促しているかを調べました。論文のタイトルが結論を要約しています。参加者は繰り返し商品の購入を迫られ、その結果、会社の販売員ではなく主要な顧客になってしまうことがある、というものです。
合法と違法の境目
米国の規制当局が合法なMLMとねずみ講をどう区別しているか(簡略化)
| 特徴 | 合法なMLM | ねずみ講 |
|---|---|---|
| 報酬の主な源 | 実際の顧客への販売 | 勧誘と参加費 |
| 商品を買う人 | 主に外部の顧客 | 主に参加者自身 |
| 最低購入額 | 報酬を得るのに不要 | 資格維持に必要 |
| 収入に関する宣伝 | 典型的な結果を開示 | トップの稼ぎ手を普通の例として紹介 |
Federal Trade Commission, Business Guidance Concerning Multi-Level Marketing。要約であり、法的な判定基準ではありません。
コストが積み上がる仕組み
MLMでの損失の多くは、劇的なものではありません。始める時点では見落としがちな、ありふれたコストが積み重なって生まれます。
消費者団体が説明する典型的な流れは、まずスターターキットを買い、次に「アクティブ」を保って報酬の資格を得るために毎月の購入をする、というものです。そこにサンプル、送料、イベントや研修、ときにはウェブサイトやアプリの利用料が加わります。一つひとつは小さく見えても、合計すると新しい参加者が販売で得る額を簡単に上回ります。
特定の会社をもとにしたものではない、仮の例で考えてみましょう。資格維持のための購入に月100ドル、サンプル・送料・イベントにさらに50ドルを使う参加者は、年に1,800ドルを支出します。小売マージン25%で元を取るには、外部の顧客に年7,200ドル、月約600ドル分の商品を売る必要があります。これは、かけた時間を数える前の話です。
この計算があるからこそ、多くの分析者は商品よりも毎月の購入義務に注目します。アクティブを保つために、現実的に売れる量より多く買わなければならないなら、参加者自身が顧客になってしまいます。
誰が、なぜ参加するのか
AARPの調査によると、人はたいてい知り合いを通じて参加します。約3分の1は友人から、12%は家族から勧誘されていました。大半はお金を稼ぐために参加したと答え、約63%は他の人に売ってお金を稼ぎたかったと答えています。
Claes BäckmanとTobin Hanspalは、FTCと大手MLMの1社との和解で返金を受けた約35万人のデータを使い、郡単位の情報と結びつけました。その結果、返金請求者は、所得の中央値が高く、労働市場の外にいる女性が多い郡で多いことがわかりました。家庭の事情に合わせて柔軟に働けるという約束が、実際に人を引きつけていることがうかがえます。一方、大きな損失は、格差が大きく、ソーシャル・キャピタル(人のつながりや信頼)が少ない郡に集中していました。コストがより弱い立場の人たちに重くのしかかっていることを示唆しています。
個人の信念も関係しています。Katharine Howieらは2024年にActa Psychologicaで、同じFTCのデータ(326,487人分)と消費者515人への調査を組み合わせて分析しました。その結果、「勤勉に働けば成功する」というプロテスタント的労働倫理を強く支持する人ほど、MLMに参加しやすいことがわかりました。この結果は、MLMが自らを「運ではなく努力で収入が決まるビジネス」と打ち出していることとよく合っています。
MLMの返金請求者が住んでいた地域
FTCの和解に基づく約35万人の請求者の郡単位の分析
Bäckman C, Hanspal T, Financial Planning Review, 2022
友人に売ることの社会的なコスト
MLMは個人的な人間関係に頼っています。それが効果的な理由の一つであり、やめにくい理由の一つでもあります。
AARPの調査では、やめた人の39%が、友人や家族に売り込むのが気まずかったことを理由に挙げています。41%は、経済的に成功できる見込みについて会社に誤解させられたと答えました。
友情を通じた勧誘は、商売の関係を人間関係に変えてしまいます。うまくいっていない人は、損をしていると認めることが、誘ってくれた友人や自分自身の評価を下げると感じるかもしれません。上位の「アップライン」の指導者は、失敗を努力や信念の不足として語ることが多く、これはHowieらが指摘した労働倫理への訴えと合致します。その結果、数字が合わなくなった後も長く在庫を買い続けてしまうことがあります。
当サイトがMLMを「マインドコントロールと集団」のセクションで扱っているのは、これが理由の一つです。リスクはお金だけではありません。信頼、アイデンティティ、集団への帰属意識を使って、ほとんどの人が損をするビジネスの機会を売り込む仕組みそのものにあります。
参加者がやめた理由と、今ならどうするか
MLMの現役・元参加者、AARPの調査
AARP Foundation, Study of Multilevel Marketing, 2018
確率を伝えれば効果はあるか
問題が非現実的な期待にあるなら、すぐ思いつく対策は開示です。参加者が実際にいくら稼いでいるかを、企業に公表させればいいわけです。
これに関する研究結果は、残念なものです。Mariah Miller、Stephen Snyder、Stephen BosleyがJournal of Consumer Affairsに発表した実験では、一部のMLMが公表しているような収入開示書を参加者に見せました。開示によって、自分が稼げると思う額の期待は下がりました。しかし、参加したいという気持ちはほとんど変わりませんでした。
これは、他の消費者保護の分野でもおなじみのパターンです。ほとんどの参加者が損をすることは受け入れつつも、「自分なら努力すれば、成功する少数派に入れる」と信じてしまうのです。
研究そのものについての疑問もあります。Claudia GroßとWilliam Keepは2025年のレビューで、法学系の学術誌とトップクラスのマーケティング学術誌でMLMがどう論じられているかを比較しました。マーケティング研究は、虚偽の収入宣伝や参加者の損失を軽く扱い、MLMをより好意的に描く傾向があり、業界とつながりのある著者がその文献に大きな影響を与えていたことがわかりました。
規制当局の対応
米国で近年最大の摘発事例はHerbalifeです。2016年7月、同社は収入に関する虚偽の宣伝をしたとするFTCの申し立てについて和解し、2億ドルを支払い、事業を再編することに合意しました。2017年1月、FTCは、2009〜2015年にHerbalifeのビジネスを行い、1,000ドル以上を投じたもののほとんど見返りがなかった約35万人に返金小切手を送りました。小切手の多くは100〜500ドルでした。
その後、FTCが返金を勝ち取れる範囲は狭まりました。2021年のAMG Capital Management v. FTC判決で、連邦最高裁は、FTCが設置法の重要な条項を使って金銭的救済を得ることはできないと判断しました。これにより、Herbalifeのような事例を繰り返すことは難しくなりました。
2025年1月、FTCはMLM事業者向けの新しい「収入表示規則(Earnings Claim Rule)」を提案しました。虚偽の収入宣伝を禁止し、参加者が稼げる額について主張する場合には、書面の証拠を保持することを企業に義務づけるものです。FTCはあわせて、MLMに典型的な収入の開示を義務づけるべきか、支払いを受ける前に待機期間を設けるべきか、参加者が経験を語れなくする口止め条項の使用をやめさせるべきかについても意見を募りました。本稿執筆時点で、この提案はまだ確定していません。提案は政権の最後の週に出され、その直後に委員会の指導部が交代したため、当時から法律の専門家はその行方を不透明だと見ていました。どうなるにせよ、この提案は規制当局が考える核心の問題を明確に示しています。ほとんどの参加者が決して届かない収入の宣伝です。
Herbalifeとの和解を数字で見る
米国連邦取引委員会、2016〜2017年
米国連邦取引委員会プレスリリース(2017年1月)。小切手の多くは100〜500ドルで、最高額は9,000ドルを超えました。
研究データからは言えないこと
MLMで誰も儲かっていない、ということではありません。AARPの回答者の約4分の1は利益を報告しています。ただし、その多くは少額でした。
すべてのMLMがねずみ講だ、ということでもありません。法的な線引きはお金がどこから来ているかで決まり、会社によって違います。
大規模で独立したデータに基づいているわけではありません。米国の最良の根拠は1つの全国調査と1件のFTCの和解のデータで、マーケティング研究の多くは業界とつながりがあります。
そして、開示だけで人を守れるということも示していません。確率を伝えると期待は下がりますが、実験では参加したい気持ちはほとんど変わりませんでした。
よくある質問
Q. MLMではほとんどの人が損をするのですか?
米国の全国代表調査では、参加者の47%が損をし、27%が収支トントンでした。利益が出たのは4分の1で、その多くは合計5,000ドル未満です。
Q. MLMとねずみ講は同じものですか?
法律上は違います。報酬が本当の小売販売ではなく主に勧誘から生まれる場合、MLMは違法なねずみ講になります。ただし、その線引きは難しいことがあります。
Q. 人はなぜMLMに参加するのですか?
主にお金を稼ぐためで、家庭の事情に合わせて働きたいという理由が多く見られます。大半は友人や親族から勧誘されています。
Q. 収入の開示は役に立ちますか?
収入への期待は下がりますが、ある実験では参加したい気持ちはほとんど変わりませんでした。
Q. FTCはMLMにどう対応していますか?
2025年1月に、MLMが収入について主張する場合は書面の証拠で裏付けることを義務づける「収入表示規則」を提案しました。まだ確定していません。
まとめ
- 米国のMLM参加者の47%が損をし、27%は収支トントンでした。利益が出たのは4分の1で、たいていは少額です。
- 参加は、仕事をしていない女性が多い地域で多い一方、損失は格差の大きい地域で大きくなっています。
- 勧誘は友人や家族を通じて行われ、やめた人の39%が「知り合いに売り込むのが気まずかった」と答えています。
- 収入の開示は期待を下げますが、参加したい気持ちはほとんど変えません。
- Herbalifeは2016年に2億ドルを支払いました。FTCが提案したMLM向けの収入表示規則は、まだ確定していません。
この記事は、マルチ商法(MLM)に関して発表された研究と公的記録をまとめたもので、金融や法律のアドバイスではありません。また、公的な摘発で名前が出た企業以外の特定の会社について述べるものではありません。MLMへの参加を考えているなら、まずFTCのMLMに関する消費者向けガイダンスを参考にするとよいでしょう。
さらに詳しく知りたい方へ:DeLiema, Bosley and ShadelのAARP Study of Multilevel Marketing(2018年)は短く、読みやすい資料です。Groß and Keepの‘The law and consumer harm in multi-level marketing: a review’(2025年)は、MLMをめぐる学術研究がなぜここまで割れているのかを説明しています。
- Selling the Dream、Jane Marie(2024年)。米国のマルチ商法の歴史を、その起源からSNS時代までたどったジャーナリストの本です。
- Hey, Hun、Emily Lynn Paulson(2021年)。MLMで上位の販売員だった著者が、ビジネスの内側の仕組みと、なぜやめたのかを語った本です。
- Cultish、Amanda Montell(2021年)。忠誠を求める集団の言葉づかいを言語学者が分析した本で、MLMについての章もあります。
参考文献
- DeLiema M, Bosley S, Shadel D. AARP Study of Multilevel Marketing: Profiling Participants and Their Experiences in Direct Sales. AARP Foundation, 2018. Press summary: PR Newswire, October 2018.
- Bäckman C, Hanspal T. Participation and losses in multi-level marketing: evidence from a Federal Trade Commission settlement. Financial Planning Review, 2022;5(1):e1137. doi:10.1002/cfp2.1137.
- Howie KM, Mesler RM, Tu K, Chernishenko J. Associations between Protestant work ethic and multilevel marketing participation and financial outcomes. Acta Psychologica, 2024;249:104409. doi:10.1016/j.actpsy.2024.104409.
- Miller M, Snyder S, Bosley S. Income disclosure and consumer judgment in a multilevel marketing experiment. Journal of Consumer Affairs, 2023;57(1):92–120. doi:10.1111/joca.12492.
- Groß C, Vriens D. Buy! Buy! Buy! How multilevel marketing companies pressure their participants to buy their products. Journal of Public Policy and Marketing, 2025;44(4):559–578. doi:10.1177/07439156241301737.
- Groß C, Keep WW. The law and consumer harm in multi-level marketing: a review. 2025. Radboud University repository.
- Antler Y. Multilevel marketing: pyramid-shaped schemes or exploitative scams? Theoretical Economics, 2023;18(2):633–668. doi:10.3982/TE4890.
- Taylor JM. The Case (for and) against Multi-level Marketing. Consumer Awareness Institute, 2011. Submitted to the Federal Trade Commission; not peer-reviewed.
- Federal Trade Commission. Business guidance concerning multi-level marketing.
- Federal Trade Commission. FTC sends checks to nearly 350,000 victims of Herbalife’s multi-level marketing scheme. Press release, January 2017.
- AMG Capital Management, LLC v. Federal Trade Commission, 593 U.S. 67 (2021).
- Federal Trade Commission. FTC proposes rule changes and new rule to deter deceptive earnings claims by multilevel marketers and money-making opportunity sellers. Press release, 13 January 2025.
