投資で大きく損をしたら:動く前に確認すること

執筆 Seung Hyoun Kim · 2026年10月15日 確認 · 行動ガイド一覧

2025年4月の第1週、米国の新たな関税が市場を揺らすなか、米国株の個人投資家は差し引き75億ドルを売り越し、その月の後半には買いに転じた(S&P Global Market Intelligence、2025年5月)。どちらの動きが正しかったかは、その後の展開しだいで、当時は誰にもわからなかった。損失についてのガイドは、正直に言えばここから始めるしかない。

このページにできるのは、否応なく迫られる判断(信用取引、現金の必要、詐欺)とそうでない判断を分けること、そして大きな損失のあと投資家がどう動いたかを研究から示すことだ。分析記事「株式投資で多くの人が損をする理由:研究データが本当に示すこと」の実践編である。

各手順に、根拠の強さを示すラベルを付けた。データあり 結果のデータがある/公的機関の推奨 公的機関が勧めているが効果の測定は少ない/未検証 常識的だが研究は見つからなかった。ラベルに触れると定義が出る。

事前に:落ち着いているうちにルールを書いておく

  1. お金がいつ必要か、どのくらいの下落なら売らずに耐えられるかを書いておく。 未検証 落ち着いた月に決めたルールは、下がっている月に決めたルールより守りやすい。
  2. 信用取引を使うなら、いま規約を読む。 公的機関の推奨 証券会社はあなたに相談せず、保有する証券の一部または全部を売ることがある。投資した額以上を失うことがあり、追証に対して猶予を求める権利もない。Investor.gov
  3. 自分のファンドが実際に何を持っているかを確かめる。 データあり 私たちの分析を書いた時点で、S&P 500 の上位10銘柄が指数の40.8%を占めていた。米国のファンドを3本持っていても、同じ会社を3回持っているだけということがある。
  4. どうなったら投資の判断を見直すかを、前もって決めておく。 未検証 不安になる価格ではなく、自分の見立てが間違っていたと示す事実を決める。
点描のイラスト:淡い空を背にした屋根の上の風見。
次にどちらへ向くかは、誰にもわからない。

起きたとき:ニュースより先に口座を見る

狼狽売りについて、研究がはっきり示していることが一つある。狼狽売りはよく起き、そして特定の時期に集中する。2003年から2015年までの、証券口座を持つ米国の29万8,556世帯のうち、9.0%が少なくとも1回は狼狽売り(1か月以内に保有株の大半を売ること)をしていた。その割合は、相場の急落時には通常の最大3倍に上がった(Elkind et al., 2021)。

  1. まず追証が来ていないかを確かめる。 データあり 上限に近いなら、その判断はあなたの代わりに下されるかもしれない。2015年の中国の暴落では、上限に近い信用口座が大量に売り、そうした口座が持っていた銘柄はほかより大きく下がり、その後に値を戻した(Bian et al., 2018)。
  2. 今後数か月に必要な現金と、その出どころを確かめる。 未検証 それ以外のお金とは分けて考える。
  3. 値段だけでなく、取引の回数も数える。 データあり 米国の6万6,465世帯のうち、最も頻繁に売買した上位5分の1は、市場を年に約6.5ポイント下回っていた。その差は取引コストだった。分析記事を参照
  4. 買った理由が変わったのか、変わったのは値段だけなのかを自問する。 未検証 答えは書いておく。あとで役に立つ。

そのあと:損失の計算と、取り戻したい衝動

損失と利益は対称ではない。元の水準に戻るのに必要な上昇率は損失率より大きく、その差はすぐに広がる。

損失元に戻るのに必要な上昇率
10%11.1%
20%25%
30%42.9%
50%100%
75%300%
90%900%

式は、必要な上昇率 = 1 ÷ (1 − 損失率) − 1。これは過去の計算であって、未来の予測ではない。回復にどれだけかかるか、そもそも回復するかについては何も言っていない。

  1. すぐに取り戻したいという衝動に気づく。 データあり スウェーデンの投資記録を使ったある研究では、1年で50%以上を失った投資家は、宝くじ型の株の保有比率を平均で約1.5ポイント増やし、それを買う確率も約3ポイント高かった。著者は、効果は小さいと強調している(Stålnacke, 2024)。
  2. 何を、なぜ買い、どうなったかを短く記録しておく。 未検証 運が悪かったのか、ルールが悪かったのかを見分ける方法はそれしかない。
  3. 売ったのなら、どう買い戻すかを、必要になる前に決めておく。 データあり 狼狽売りをした世帯の30.9%は、研究期間の終わりまでリスク資産を買い戻さなかった。戻った世帯の多くは1〜5か月以内に戻っていた(Elkind et al., 2021)。
  4. 住んでいる国での税の扱いを確かめる。 未検証 損失の扱いは国や口座の種類によって違う。私たちは税務の助言はしない。
点描のイラスト:明かりのついた窓の下、淡い壁に立てかけた横木が一本欠けたはしご。
戻る道のりは、落ちた距離より長い。

やってはいけないこと

  1. 損を取り戻すためにお金を借りない。 公的機関の推奨 信用取引では、さらに下がると最悪のタイミングで売られることがあり、入れた額以上の借りが残ることもある。Investor.gov
  2. 損失を取り戻せると連絡してくる相手の話に乗らない。 公的機関の推奨 投資の損失は、被害回復をうたう詐欺を呼び寄せる。日本の消費者庁も、返金の条件として別の投資を求める、国の救済制度だと称する、返金手続きの代行を持ちかけるといった二次被害に注意を呼びかけ、きっぱり断って消費者ホットライン188に相談するよう勧めている。警察相談専用電話 #9110 でも相談できる。消費者庁 · 警察庁。私たちの詐欺被害の対応ガイドも参照。
  3. 夜中の2時に決めない。 未検証 いつ売るべきかを示す根拠はない。前もって書いておいたルールが、いちばんそれに近いものだ。

チェックリスト

  • 信用取引やレバレッジを使っているか、追証までどれだけ余裕があるかを把握している
  • 今後6か月に必要な現金と、その出どころを把握している
  • ファンドの名前だけでなく、実際の中身を確かめた
  • 保有する銘柄ごとに、買った理由と、判断を見直す条件を書いた
  • 今月の損失だけでなく、取引の回数も数えた
  • 売った場合に買い戻すルールがある
  • 損を取り戻すためにお金を借りていない

住んでいる国別の窓口

日本米国英国オーストラリア
規制当局の投資家向け情報金融庁Investor.gov (SEC)FCA の消費者向けページASIC Moneysmart
投資詐欺が疑われるとき最寄りの警察署・#9110、消費者ホットライン188(消費者庁)ReportFraud.ftc.gov と SECReport FraudScamwatch

根拠はどのくらい確かか

研究は、損失のあと投資家が何をするかはよく描けても、何をすべきかはほとんど教えてくれない。狼狽売りの研究はこの点に慎重だ。狼狽売りをした人が逃したリターンは、その後の相場の動きと強く連動していた。つまり、売ったことが賢明に見える下落もあれば、高くついた下落もあった(Elkind et al., 2021)。市場から離れていた間の狼狽売りの中央値のリターンはゼロからマイナスで、狼狽売りを巧みな売買とみなすことには否定的な材料になる。ただし、持ち続けるのが常に正しいという証明にはならない。

損失を取り戻そうとする効果は実在するが小さく、データも2007年までしかない(Stålnacke, 2024)。信用取引の証拠は、2015年の中国という特殊な一つの市場から来ている(Bian et al., 2018)。これらの手順に「データあり」のラベルを付けたのは、結果のデータがあるからであって、問題に決着がついたからではない。

次に読む

このガイドは一般的な情報であり、金融・投資・税務の助言ではない。また、特定の証券の売買を勧めるものでもない。確認すべき点と、公表された研究でわかったことを説明しているだけだ。自分のお金に関する判断は、登録を受けた専門家に相談してほしい。

出典