遊具の下の安全マットは、ランダム化試験で砂に5対1で負けた
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- 米国では毎年21万3,000人以上の子どもが遊具のケガで救急を受診しています。多くは5〜12歳です。
- 内訳はジャングルジムなどの登る遊具が36%、ブランコが30%、すべり台が20%。4分の3は転落によるものです。骨折はケガ全体の35%ですが、入院例では90%を超えます。
- 地面の素材を比べた唯一のランダム化試験では、腕の骨折が10万人月あたり砂で1.9件、ウッドチップで9.4件でした。ただし骨折は合計22件しかなく、有意差はぎりぎりで、ケガ全体の件数には差がありませんでした。
- 衝撃吸収の基準が試験しているのは真上から落ちたときの頭部外傷です。一方、救急外来を埋めているのは腕の骨折です。この2つは別物です。
ジャングルジムの下の地面は、公園の中で「安全のためだけに」存在する唯一の部分です。誰もそこで遊びません。子どもを受け止めるためにあり、費用もかなりかかります。素材として選ばれるのは、たいてい加工ウッドチップ(エンジニアード・ウッドファイバー)です。衝撃基準を満たし、水はけがよく、見た目もきれいな、白っぽい木の削りくずです。
2009年、トロントの複数の学校を対象に、この素材とふつうの花こう岩質の砂を比べるクラスターランダム化試験が行われました。地面への転落による腕の骨折は、砂で10万人月あたり1.9件、ウッドチップで9.4件。約5倍の差で、しかも誰も予想していなかった方向の結果でした。
この結果には大きな注意点があり、それもきちんと紹介します。対象となった骨折の総数が少ないからです。それでも、遊具の地面について行われたランダム化試験はこれしかありません。そして、知っておく価値のあることを示しています。業界が認証に使っている衝撃基準は「真上から落ちたときの頭部外傷」を測るもので、遊具でのケガの大半はそういうケガではない、ということです。この記事では、年21万3,000件の救急受診が実際にどこから来ているのか、根拠が支持するのは何か、そして子どもを安全にするどころか危険にしてしまうもの2つ(安全装備1つと、設計上の発想1つ)を取り上げます。
ケガはどこで起きているか
米国では毎年、18歳未満の子ども21万3,000人以上が遊具に関連するケガで救急外来の治療を受けています。大半は5〜12歳です。そして、ケガの起こり方は驚くほど単純です。
遊具の種類とケガの内容
米国の子どもの遊具関連の救急受診に占める割合
出典:米国の遊具関連の救急受診に関する全国調査(Center for Injury Research and Policy, Nationwide Children’s Hospital)
2つ目の数字の形に注目してください。骨折はケガ全体の3分の1ですが、入院が必要なほど重いケースでは10分の9以上を占めます。遊具の問題を正確に言い表すなら、それは腕の骨折です。
唯一のランダム化試験とその結果
Andrew Howard らは、もともと遊具の地面を張り替える予定だったトロントの小学校37校を集め、加工ウッドチップか花こう岩質の砂のどちらかをランダムに割り当てました。新しい地面で試験を最後まで終えたのは28校、対象児童は1万5,074人です。ケガの記録は2年以上にわたり前向きに集められました。主要評価項目は、地面への転落による上肢(腕)の骨折です。
地面への転落による腕の骨折
割り当てどおりの素材を設置した学校での、10万人月あたりの発生率
出典:Howard, A.W. et al., “School Playground Surfacing and Arm Fractures in Children: A Cluster Randomized Trial Comparing Sand to Wood Chip Surfaces”, PLOS Medicine, 2009.
大事な注意点
この数字を、弱点抜きで紹介するつもりはありません。注意点は4つあり、どれか1つだけでも「試験をやり直してほしい」と思うのに十分です。
鵜呑みにしないほうがいい4つの理由
正直にまとめると、ランダム化試験は1件だけ、有意差はぎりぎり、そして業界の慣行とは逆の方向を指している、ということです。知っておく価値はありますが、これを理由に遊び場を作り直すほどではありません。
もう1つ、仕組みの話をしておきます。結果が見かけほど奇妙ではない理由がわかるからです。衝撃吸収の基準は真上から落ちたときの頭部外傷を軸に作られています。頭部模型に、命に関わるケガに相当する力がかかる「臨界落下高さ」を測るものです。最悪の結果を防ぐための試験としては正しいのですが、腕が折れる状況を試しているわけではありません。手首は体重を乗せたまま、斜めの角度で地面に着きます。このとき効いてくるのは、小さく硬い接触面の下で地面がどれだけ動くかです。さらさらの砂は動きます。踏み固められたウッドチップは動きません。
弱点は「厚さ」
遊具の下の素材が何であれ、効果を発揮するのは十分な厚さがあるときだけです。そして、砂やチップのような敷き詰め型の素材は移動します。ブランコの下からは蹴り出され、すべり台の降り口ではこすれて減り、子どもが実際に走る通り道では踏み固められます。これらはまさに着地点です。4月に点検を受けて夏じゅう使われた遊び場は、9月には別物になっています。しかも認証にはそれがまったく反映されません。
上で挙げた注意点をすべて踏まえても残る、実用的な教訓はこれです。素材の種類より、着地点の下の厚さが保たれているかを見るほうが役に立ちます。ブランコの下やすべり台の降り口で、敷き材の間から硬い下地が見えているなら、素材が何であれ、地面は想定された役目を果たしていません。
ヘルメットは外してから
短い話ですが、あまり知られておらず、実際に子どもが亡くなっています。
1999年、米国消費者製品安全委員会(CPSC)は警告を出しました。ペンシルベニア州の3歳の男の子が、自転車用ヘルメットをかぶったまま遊具で遊んでいて亡くなったためです。遊具をすり抜けようとして挟まり、ヘルメットのあごひもで首が絞まりました。その2年前にはカナダの7歳の女の子が、遊具のすき間に引っかかって同じように亡くなっています。CPSCは、死亡に至らなかった事例も4件把握していました。木登り中の2人と、遊具で遊んでいた2人です。
原因はヘルメットそのものです。ヘルメットをかぶると、子どもの頭は「すき間を通り抜けたあと、戻って来られない」形になります。しかも、あごひもはすでに首に回っています。遊具には、ヘルメットなしの頭が通る大きさのすき間がたくさんあります。
ヘルメットは自転車に乗るときだけ。それ以外では外す。
CPSCの委員長の言葉はこれ以上ないほど明快です。「自転車に乗るときは必ずヘルメットを。ただし、自転車を降りたらヘルメットは外してください」。
自転車で集まる子どもたちを、登下校やスカウト活動、誕生日会などで見守る立場なら、この記事でいちばん価値があるのはこの一文です。
もう1つの失敗:退屈すぎて誰も遊ばない遊び場
ここまでの話は、遊び場をより安全にする方向に向かっています。しかし、それと同じ重みで考えるべき反対側の根拠もあります。リスクをなくそうとする発想にも、それなりのコストがあるからです。
2015年のシステマティックレビューは、リスクのある屋外遊び(高い所での遊び、取っ組み合い、大人の目の届かない所で子どもが自分で動き回ること)について、3〜13歳前後の約5万人を対象とした研究を調べました。根拠の質にはばらつきがあり、レビュー自体もそれを認めています。高い所での遊びを扱った研究は1件だけで、最も強い根拠があるのは子どもの自立的な移動についてでした。それでも、結果は一貫して同じ方向を示していました。自分で動き回れる範囲が広い子どもほど、身体活動量がかなり多かったのです。ある研究では、自立的な移動の度合いが高い女の子は、推奨される活動量を満たす確率が4.5倍でした。取っ組み合い遊びは、運動能力の発達や社会性の高さと関連していました。
著者らは、基準に従って作られた遊び場を「Kit, Fence, Carpet(遊具・柵・マット)」と呼んでいます。認証済みの遊具、囲い、ゴムマットの3点セットのことで、子どもにとって魅力が乏しいというのが彼らの批判です。子どもが遊びたがらない遊び場では、ケガも起きませんが、得るものもありません。トレードオフについての彼らの考え方はそのまま紹介する価値があります。ケガは身体活動に避けられない副作用であり、身体活動は健康な子ども時代に欠かせないものだ、というものです。
逆方向の2つの失敗
出典:Howard et al., PLOS Medicine, 2009/Brussoni, M. et al., “What is the Relationship between Risky Outdoor Play and Health in Children? A Systematic Review”, International Journal of Environmental Research and Public Health, 2015.
実際にチェックすべきこと
90秒でできるチェック(重要な順)
| チェック項目 | この順番の理由 |
|---|---|
| 1. 遊具の前にヘルメットを外す | このリストで唯一、実際の死亡例が記録されている項目です。しかも費用はゼロ、かかる時間は1秒です。 |
| 2. 着地点の下の厚さ | ブランコの下、すべり台の降り口、登る遊具の根元まわり。硬い下地が見えていたら、素材が何であれ地面は役目を果たしていません。 |
| 3. 登っているものの高さ | ケガの4分の3は転落で、エネルギーの大きさを決めるのは落ちる高さです。年長の子ども向けの遊具が、4歳児の遊ぶ場所に置かれているのはよくあるミスマッチです。 |
| 4. ひも付きの服、マフラー、ネックレス | ヘルメットのあごひもと同じ事故パターンです。首まわりに何かがあり、すき間があれば起こります。冬に注意したい項目です。 |
| 5. 大人の立ち位置 | ベンチではなく、登る遊具の下に。転落を防ぐ見守りは、最も高い所から落ちうる遊具、たいていはジャングルジムに手が届く位置でなければ意味がありません。 |
| 6. 遊び場として十分おもしろいか | 本気でリストに入れています。子どもが10分で飽きてしまう遊び場には、ケガの統計には表れないコストがあります。 |
出典:米国消費者製品安全委員会のヘルメットによる窒息に関する警告(1999年)、Center for Injury Research and Policy による遊具のケガの疫学データ、Brussoni et al., 2015
遊具の安全グッズはおすすめしません
この記事で最も根拠のある2つの対策、つまり「ヘルメットを外す」と「地面の厚さを保つ」は、どちらも無料です。
よくある質問
Q. 学校にウッドチップを砂に替えてもらうよう頼むべき?
有意差がぎりぎりの試験1件だけでは、答えはノーです。費用に見合うだけの根拠ではありませんし、同じ試験でケガ全体の件数には差がありませんでした。むしろ話題にする価値があるのは管理のほうです。特にブランコの下やすべり台の降り口で、地面が規定の厚さまで補充されているか、誰が確認しているか。これなら費用はほとんどかからず、仕組みもはっきりしていて、今どの素材が敷かれていても当てはまります。どうせ張り替える予定の学校から「どちらを選ぶべきか」と聞かれたなら、この試験を判断材料として示すのは妥当です。もちろん注意点も添えて。
Q. 公園でヘルメットを外されるのを子どもが嫌がります。本当にそこまで重要?
記録されている死亡例2件と、死亡に至らなかった事例4件は、決して多い数ではありません。ある1人の子どもが、ある日の午後に事故に遭う絶対リスクはごくわずかです。それでもリストに入れているのは、避けるためのコストが一言と1秒だけで、損得のバランスが極端に偏っているからです。子どもには「ヘルメットは自転車の道具だから、自転車が止まったら外す。シートベルトと同じ」と伝えるとうまくいきます。
Q. ゴムの一体型舗装は、敷き詰め型の素材よりいい?
衝撃とは関係のない、確かな利点があります。素材が移動しないので厚さが足りなくなることがなく、車いすでも入りやすいことです。選ぶ理由としては十分です。ただ、ケガについては砂とのランダム化比較がないため、「間違いなくより安全」と言う人がいれば、それは根拠の範囲を超えています。言えるのは、敷き詰め型の素材で実際によく起きる失敗、つまり子どもが着地するまさにその場所で素材が散らばって薄くなる問題が、ゴムにはないということです。
Q. 家庭用の遊具はどう考えればいい?
物理法則は同じで、たいていは設置の仕方がもっと雑です。家庭用の遊具は芝生や土の上にそのまま置かれることが多く、どちらも地面としては不十分です。必要な敷き材の厚さにも驚く人が多いでしょう。ぱらぱら撒く程度ではなく、数十cm単位です。家に遊具を置くなら、予算の中で最も見積もりが甘くなりがちなのが敷き材の量です。芝生は安全な地面ではありません。1シーズンで踏み固められ、ちょうどブランコの真下がいちばん硬くなります。
スポーツやレクリエーションでのケガ全般は別のテーマとして、改めて取り上げます。この記事は遊具についての話です。
Q. どのくらい近くで見守るべき?
子どもが落ちる可能性のある最も高い場所の近くに。それ以上近づく必要はありません。この記事の根拠は、あえて両方向を示しています。骨折が起きるのは登る遊具からの転落なので、大人がいる価値があるのはそこです。一方で、遊具のケガを記録した同じレビューは、自分で動き回る子どもほど身体活動量がかなり多いことも示しています。ジャングルジムの下に立つのは役に立ちます。9歳の子どもの後を遊び場じゅうついて回るのは役に立たないうえ、それ自体にコストがあります。
まとめ
- 米国では毎年21万3,000人以上の子どもが遊具のケガで救急を受診しています。多くは5〜12歳です。
- 登る遊具が36%、ブランコが30%、すべり台が20%。4分の3は転落です。骨折はケガ全体の35%、入院例では90%以上を占めます。
- 地面の素材を比べた唯一のランダム化試験では、腕の骨折が10万人月あたり砂で1.9件、ウッドチップで9.4件。ただし骨折は合計22件だけで、有意差はぎりぎり、ケガ全体の件数には差がありませんでした。
- 衝撃吸収の基準が試験しているのは真上から落ちたときの頭部外傷です。救急外来を埋めているのは腕の骨折で、両者は別物です。
- 素材の選択より着地点の下の厚さを保つことが大切です。そして厚さは、夏の間にどんどん失われていきます。
- ジャングルジムの前にヘルメットを外しましょう。遊具でヘルメットのあごひもによる窒息で亡くなった子どもが2人いて、ほかに4人が助かっています。
- 誰も遊びたがらない遊び場には、ケガの統計に表れないコストがあります。自分で動き回れる子どもほど、身体活動量は明らかに多くなります。
- 効果がある対策のリストに「買うもの」は1つもありません。
この記事は、公表されているケガの疫学データ、ランダム化試験1件、システマティックレビュー1件をまとめたものです。一般的な情報であり、安全点検の代わりにはなりません。また、お住まいの地域で適用される遊具の安全基準(国によって異なります)の代わりにもなりません。転んだ子どもの手足が変形している、手足を動かせない、意識を失った、吐いた、ぼんやりして眠そうにしている、といった場合は、記事ではなく医療機関で診てもらってください。
関連書籍:Last Child in the Woods(Richard Louv著、Algonquin Books、2005年)。子どもの行動範囲が狭まっている問題を世に知らしめた本です。ただし、中心となる「自然欠乏障害(nature-deficit disorder)」という言葉は著者の造語で、診断名ではありません。また、ところどころ議論が根拠より先走っています。因果関係の主張ではなく、問題の捉え方を知るために読むのがおすすめです。Amazonで見る (広告リンク)
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参考文献
- Howard, A.W., Macarthur, C., Rothman, L., Willan, A. and Macpherson, A.K., “School Playground Surfacing and Arm Fractures in Children: A Cluster Randomized Trial Comparing Sand to Wood Chip Surfaces”, PLOS Medicine, 2009. (37 schools enrolled, 28 completing with new surfaces, 15,074 students; upper extremity fractures from falls onto the surface at 1.9 per 100,000 student-months on granitic sand, 95% CI 0.04–6.9, against 9.4 on engineered wood fibre, 95% CI 3.7–21.4, p ≈ 0.049; 2 fractures on sand and 20 on wood fibre; 19 of 28 schools compliant with assignment; overall injury rates similar between groups.)
- National study of playground equipment-related injuries treated in US emergency departments, Center for Injury Research and Policy, Nationwide Children’s Hospital. (More than 213,000 children under 18 treated annually; majority aged 5–12; climbers 36%, swings 30%, slides 20%; more than three quarters of injuries caused by falls; fractures 35% of all injuries and more than 90% of those requiring admission.)
- US Consumer Product Safety Commission, “After Recent Death CPSC Warns Against Wearing Bike Helmets on Playgrounds”, 1999. (Death of a 3-year-old boy in Pennsylvania on 4 February 1999 and of a 7-year-old girl in Canada in 1997, both by strangulation on the helmet strap after becoming caught in play equipment; four additional non-fatal incidents, two involving tree climbing; guidance that helmets be worn while cycling and removed when the child leaves the bike.)
- Brussoni, M., Gibbons, R., Gray, C., Ishikawa, T., Sandseter, E.B.H., Bienenstock, A., Chabot, G., Fuselli, P., Herrington, S., Janssen, I., Pickett, W., Power, M., Stanger, N., Sampson, M. and Tremblay, M.S., “What is the Relationship between Risky Outdoor Play and Health in Children? A Systematic Review”, International Journal of Environmental Research and Public Health, 2015. (21 papers from 8 countries, approximately 50,000 participants aged 3 to 12.99; strongest evidence base under independent mobility; girls with high independent mobility 4.5 times more likely to meet recommended activity levels in one study; positive associations for rough and tumble play with motor development and social competence; critique of “Kit, Fence, Carpet” playgrounds.)
