寒さによる死亡:研究データでわかったこと
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- 寒さに関連する死亡は暑さよりはるかに多く、13か国の研究では全死亡の7.29%に対し、暑さは0.42%でした。
- 世界では年間約460万人の死亡が寒さと関連しており、暑さと関連するのは約48万9,000人です。
- 寒さに関連する死亡の大半は、極端な寒波ではなく、ほどほどに寒い日に起きています。
- 冬の死亡のうち、感染症や季節ではなく寒さそのものが原因の部分がどれくらいかについては、研究者の意見が分かれています。
注目を集めるのは熱波です。突然やって来て、目に見え、しかも増えていて、死者数はリアルタイムで報じられます。寒さが同じように注目されることはめったにありません。例外は、2021年2月のテキサス州の電力網崩壊のような劇的な出来事が起きたときくらいです。
しかし世界のほとんどの地域で、寒さは暑さよりはるかに多くの命を奪っています。2015年に The Lancet に発表された、13か国7,400万人の死亡を対象とした研究では、寒さに関連する死亡は暑さの約17倍でした。2021年の世界規模の分析では、寒さに関連する死亡は年間約460万人とされています。
ただし、これらの数字は見た目ほど単純ではありません。冬に死亡が増える分のうち、どれだけが寒さそのものによるものなのか、また気候の温暖化でそれが減るのかについて、研究者の意見は分かれています。この記事では、研究データでわかっていること、不確かな点、そして誰が最もリスクが高いのかについてわかっていることを紹介します。
寒さに関連する死亡はどれくらいか
最も影響力のある研究は、Multi-Country Multi-City Collaborative Research Network の Antonio Gasparrini らによるものです。オーストラリア、カナダ、中国、日本、英国、米国など13か国384地点の7,422万5,200人の死亡を分析し、日々の気温によって、その後3週間の死亡リスクがどう変わるかをモデル化しました。
その推計では、全死亡の7.71%が、死亡率が最も低くなる気温より高い、または低い気温に起因していました。そのうち寒さが全死亡の7.29%、暑さが0.42%を占めていました。
Qi Zhao らは2021年に The Lancet Planetary Health で、この手法を43か国750地点のデータを使って世界全体に広げました。2000〜2019年には、最適でない気温に関連する死亡が年間約508万人、全死亡の9.43%にのぼると推計しています。そのうち約459万人が寒さ、約48万9,000人が暑さに関連しており、比率はおよそ9対1です。
寒さと暑さに起因する死亡の割合(全死亡に占める割合)
13か国384地点、1985〜2012年。
Gasparrini A ら, The Lancet, 2015。棒の長さは寒さの値を基準にしています。
世界で最適でない気温に関連する死亡
年間の推計死亡者数、2000〜2019年。
Zhao Q ら, The Lancet Planetary Health, 2021。43か国750地点のデータ。
多くは極端な寒さではない
Gasparrini の研究で最も重要な知見の1つは、見落とされがちです。極端な気温(暑さと寒さの両方)による死亡は、全死亡のわずか0.86%でした。気温に関連する死亡の大半は、まれな厳しい冷え込みの日ではなく、ほどほどに寒い日に起きていたのです。
理由は頻度です。ほどほどに寒い日の1日あたりのリスクの上乗せは小さいものの、そういう日は毎年の冬にたくさんあります。寒波はリスクをより急激に高めますが、続くのは数日です。1年を通すと、数多い普通の寒い日のほうが、多くの死亡につながります。
これには実際的な意味があります。一般向けの警報や緊急対応は、ふつう極端な出来事をきっかけに発動されます。寒さに関連する死亡の大半がそうした出来事の外で起きているなら、警報だけでは問題の大部分を見逃すことになります。
暑さと寒さで振る舞いが違う理由も、これで説明できます。暑さのリスクは、気温がある閾値を超えると急上昇するので、熱波は死亡を数日間に集中させます。寒さのリスクはもっと緩やかに上がり、長く続きます。心臓病や呼吸器疾患による死亡は、寒い時期から数日〜数週間遅れて起きることがよくあります。
気温に関連する死亡の大半は極端な日ではない
最適でない気温に起因する死亡の全死亡に占める割合。
Gasparrini A ら, The Lancet, 2015。「極端」とは、その地域の気温の2.5パーセンタイル未満または97.5パーセンタイル超を指します。
寒さが体に害を与える仕組み
寒さが命を奪う最も直接的な経路は、体の深部温度が下がる低体温症です。しかし、ほとんどの国で、低体温症は寒さに関連する死亡のごく一部にすぎません。
超過死亡の大半は、心筋梗塞、脳卒中、呼吸器疾患によるものです。寒さで皮膚に近い血管が収縮すると、血圧が上がります。血液は濃くなり、固まりやすくなります。冷たい空気を吸うと気道が刺激され、慢性の肺疾患が悪化することがあります。また冬は屋内で過ごす時間が長くなるため、呼吸器感染症が広がりやすくなります。
1997年に The Lancet に発表された Eurowinter 研究で、William Keatinge、Gavin Donaldson らは、フィンランドからギリシャまで欧州各地の地域を比較しました。その結果、寒さ1度あたりの死亡率の上昇は、冬の厳しい地域よりも冬の穏やかな地域のほうが大きくなっていました。寒い地域の人ほど、家をしっかり暖め、屋外では厚着をし、無防備に外で過ごす時間が短い傾向がありました。
この知見は、その後の考え方の多くを形づくってきました。寒さに関連する死亡は、その場所がどれだけ寒くなるかよりも、人々が経験する寒さからどれだけ守られているかに左右される、ということを示唆しています。英国、アイルランド、ポルトガルのように冬が穏やかで住宅の断熱が不十分な国で、冬がはるかに厳しい北欧諸国よりも季節的な死亡の増加が大きくなりがちな理由の1つも、ここにあります。
住まい、暖房、リスクの高い人
リスクの大半を負っているのは高齢者です。寒さを感じ取って反応する体の能力は年齢とともに衰え、高齢者は寒さで悪化する心臓や肺の病気を抱えていることも多いからです。
住宅も、特に英国で大きな焦点になってきました。Marmot Review Team は、Friends of the Earth のための2011年の報告書で、イングランドとウェールズの冬季超過死亡の21.5%は、最も寒い4分の1の住宅に起因しうると推計しました。死亡が住宅全体に均等に分布していた場合のほぼ3倍です。
しかし個人レベルの根拠は、この推計が示すほど明快ではありません。Peter Tammes らは2018年に British Journal of General Practice で、プライマリケアの記録を使い、イングランドで寒い日に誰が亡くなったかを調べました。3日間の平均気温が1℃下がるごとに、死亡リスクは約1.1%上がりました。社会人口学的な特性や住宅のエネルギー効率による明確な修飾効果は見られませんでしたが、リスクはイングランド北部で高くなっていました。
全体として、寒い住宅が冬の死亡に寄与している可能性は高いものの、住宅の影響は、大まかな集団レベルの推計が示すよりも測定が難しい、というのが現状です。
冬の死亡をめぐる論争
寒さに関連する死亡の大きな数字が、寒さそのものを反映していると誰もが認めているわけではありません。
Patrick Kinney らは2015年に Environmental Research Letters で、米国の36都市とフランスの3都市を調べました。冬の死亡率は、冬の平均気温が氷点下の都市でも20℃を超える都市でも、どこでも夏より約16%高くなっていました。都市の冬の寒さと超過死亡の多さには関係がありませんでした。また、モデルで季節を十分に調整しないと、寒さの影響が実際よりずっと大きく見えることも示しています。
Philip Staddon らは2014年に Nature Climate Change で、イングランドとウェールズでは冬季超過死亡が寒い日の数と連動しなくなっており、年ごとの変動はインフルエンザでよりよく説明できることを見いだしました。そして、気候の温暖化は冬の死亡率を下げないだろうと論じました。
反対の立場の研究者もいます。Donaldson と Keatinge は2002年に BMJ で、イングランド南東部の10年間の冬季超過死亡のうちインフルエンザによるものはわずか2.4%と推計し、主な要因は寒さによるストレスだと論じました。Shakoor Hajat と Gasparrini は2016年に Epidemiology で、12〜3月をほかの月と比べる一般的な「冬季超過死亡」という指標自体に偏りがあると主張しました。この指標は、その期間外に起きる寒さ関連の死亡を見逃し、ほかの理由で季節性がある死亡を数えてしまうからです。
この論争は気候政策にとって重要です。冬の死亡の大半が寒さによるものなら、温暖化は寒い地域で多くの命を救い、暑さによる死亡の増加を一部相殺します。冬の死亡が主に感染症などの季節的な要因によるものなら、その効果は小さくなります。
冬の死亡は本当に寒さのせいか
異なる結論に達した研究。
| 研究 | 結果 | 示唆 |
|---|---|---|
| Kinney ら、2015年 | 寒い都市と暖かい都市で冬の超過は同程度 | 寒さの影響は過大評価の可能性 |
| Staddon ら、2014年 | 冬の死亡はもはや寒い日と連動しない | 温暖化で冬の死亡は減らない可能性 |
| Donaldson・Keatinge、2002年 | インフルエンザは冬季超過死亡のわずか2.4% | 主な要因は寒さによるストレス |
| Hajat・Gasparrini、2016年 | 冬季死亡の指標に偏りがある | 気温に基づく手法が必要 |
Environmental Research Letters、Nature Climate Change、BMJ、Epidemiology
停電したとき:2021年のテキサス
豊かな国での寒さによる死亡として、近年最も劇的だったのは2021年2月の例です。冬の嵐「ウリ(Uri)」がテキサス州に記録的な寒波をもたらし、州の電力網が機能を停止して、数百万人が何日も電気と暖房のない状態に置かれました。
2022年1月に改訂された州の公式な死者数は、77郡で246人、年齢は乳児から102歳まででした。大半は低体温症で亡くなりました。ほかに交通事故、転倒、住宅火災で亡くなった人、家を暖めようとして一酸化炭素中毒で亡くなった人(少なくとも19人)、酸素濃縮装置などの医療機器の電源を失って亡くなった人もいました。独立した超過死亡の分析では、実際の死者数はもっと多かったとされています。
テキサスの例は、極端な寒さに慣れていない土地での極端な出来事でした。穏やかな気候の地域の人ほど寒さから守られていないという Eurowinter の知見とも合致します。また、現代の寒さによる災害で主な危険となるのは、外気温そのものよりも、暖房と電力を失うことである場合が多いことも示しました。
冬の嵐「ウリ(Uri)」、テキサス州、2021年2月
嵐に関連する死亡の州による公式集計。
Texas Department of State Health Services(2022年1月改訂)、NPR の報道による。
リスクを減らすもの
寒さに関連する死亡の大半は普通の冬の日に分散しているので、最も根拠のある対策もまた、ごく普通のものです。
イングランドの公衆衛生ガイダンスは、2015年に発表された National Institute for Health and Care Excellence(英国国立医療技術評価機構、NICE)の「寒い住宅」に関するガイドラインを含め、リスクの高い人(特に高齢者と心臓や肺の病気のある人)を見つけ出し、家を暖かく保てるよう支援することに重点を置いています。暖房や断熱の支援制度への紹介や、暖房費を払えるかどうかの確認も含まれます。
2023年からは、UK Health Security Agency(英国健康安全保障庁)と英国気象庁(Met Office)が、イングランドで「寒さと健康」に関する警報を出しています。警報のレベルは気温だけでなく、医療サービスへの予想される影響によって決まります。この考え方は研究から直接導かれたもので、最も極端な天候のときだけでなく、寒い時期の前と最中に医療・介護サービスの行動を促すことを目的としています。
寒さか感染症かという論争でどちらの立場をとるにしても、季節性インフルエンザと新型コロナウイルスのワクチン接種も重要です。冬の死亡の一部には呼吸器感染症が関わっているからです。そしてテキサスのように寒さがまれな地域では、2021年の経験が示すとおり、まず守りの要になるのは止まらない電力と暖房のシステムです。
研究データからは言えないこと
寒さに起因するとされる死亡のすべてが、寒さによって引き起こされたことを示すものではありません。推計は統計モデルから得られたもので、結果は季節やほかの要因の扱い方に左右されます。
気候の温暖化で、気温に関連する死亡が差し引きで大きく減ることを示すものでもありません。寒い地域での減少を予想する研究もあれば、冬の死亡はあまり変わらず、暑さによる死亡が増えると論じる研究もあります。
寒い住宅がどれほど影響するかに決着をつけるものでもありません。集団レベルの推計は大きいものの、個人レベルの研究では、住宅の質の影響はもっと弱いか、一貫していません。
そして、暑さが重要でないということでもありません。暑さによる死亡は短期間に集中し、増えていて、気候変動の影響をより受けやすいのです。
よくある質問
Q. 寒さは暑さより多くの人の命を奪いますか?
ほとんどの地域ではそうです。7,400万人の死亡を対象とした研究では、全死亡のうち寒さに関連するものが7.29%、暑さに関連するものが0.42%でした。
Q. 寒さによる死亡の大半は厳しい寒波のときに起きるのですか?
いいえ。大半は、はるかに頻度の高い、ほどほどに寒い日に起きています。極端な気温による死亡は全死亡の0.86%でした。
Q. 寒い時期、人は実際に何が原因で亡くなるのですか?
主に心筋梗塞、脳卒中、呼吸器疾患です。低体温症は、寒さに関連する死亡のごく一部にすぎません。
Q. 2021年のテキサスの冬の嵐では何人が亡くなりましたか?
公式の死者数は246人で、大半は低体温症によるものです。独立した分析では、実際の数はもっと多かったとされています。
Q. 気候変動で冬の死亡は減りますか?
研究者の意見は分かれています。冬が暖かくなれば寒さによる死亡は減ると予想する研究もあれば、冬の死亡はもはや寒さと連動しておらず、あまり減らないかもしれないとする研究もあります。
まとめ
- 寒さに関連する死亡は暑さよりはるかに多く、13か国の研究では全死亡の7.29%に対し、暑さは0.42%でした。
- 世界では年間約460万人の死亡が寒さと関連しており、暑さと関連するのは約48万9,000人です。
- 寒さに関連する死亡の大半は、極端な寒波ではなく、ほどほどに寒い日に起きています。
- 冬の死亡のうち、感染症や季節ではなく寒さそのものが原因の部分がどれくらいかについては、研究者の意見が分かれています。
- 2021年のテキサスの嵐では、電力網の崩壊後、少なくとも246人が亡くなり、その大半が低体温症によるものでした。
この記事は、寒さに関連する死亡についての公表済みの研究をまとめたものです。医学的な助言ではありません。寒い時期に、高齢の家族や心臓・肺の病気のある人のことが心配な場合は、かかりつけ医や地域の保健所などに、安全に暖かく過ごす方法を相談してください。
さらに読むなら:現在の推計の多くの土台になっているのは、Gasparrini らの ‘Mortality risk attributable to high and low ambient temperature’(The Lancet、2015年)で、オープンアクセスで読めます。懐疑的な立場を最もわかりやすく示しているのは、Kinney らの ‘Winter season mortality: will climate warming bring benefits?’(Environmental Research Letters、2015年)です。
- The Heat Will Kill You First、Jeff Goodell(2023年)。健康リスクとしての暑さをジャーナリストが描いた本で、暑さと寒さがこれほど違う振る舞いをする理由を理解するのに役立ちます。
- Not the End of the World、Hannah Ritchie(2024年)。気候と環境のトレンドをデータサイエンティストが解説した本で、気温に関連する死亡がどう推計されるかも扱っています。
- Weathering、Arline T. Geronimus(2023年)。社会的な不利がどのように体をすり減らすかを公衆衛生研究者が論じた本で、誰が寒さに最も弱いかを考えるうえで参考になります。
参考文献
- Gasparrini A, Guo Y, Hashizume M, and colleagues. Mortality risk attributable to high and low ambient temperature: a multicountry observational study. The Lancet, 2015;386(9991):369–375. doi:10.1016/S0140-6736(14)62114-0.
- Zhao Q, Guo Y, Ye T, and colleagues. Global, regional, and national burden of mortality associated with non-optimal ambient temperatures from 2000 to 2019. The Lancet Planetary Health, 2021;5(7):e415–e425. doi:10.1016/S2542-5196(21)00081-4.
- The Eurowinter Group. Cold exposure and winter mortality from ischaemic heart disease, cerebrovascular disease, respiratory disease, and all causes in warm and cold regions of Europe. The Lancet, 1997;349(9062):1341–1346. doi:10.1016/S0140-6736(96)12338-2.
- Kinney PL, Schwartz J, Pascal M, and colleagues. Winter season mortality: will climate warming bring benefits? Environmental Research Letters, 2015;10(6):064016. doi:10.1088/1748-9326/10/6/064016.
- Staddon PL, Montgomery HE, Depledge MH. Climate warming will not decrease winter mortality. Nature Climate Change, 2014;4(3):190–194. doi:10.1038/nclimate2121.
- Donaldson GC, Keatinge WR. Excess winter mortality: influenza or cold stress? Observational study. BMJ, 2002;324(7329):89–90. doi:10.1136/bmj.324.7329.89.
- Hajat S, Gasparrini A. The excess winter deaths measure: why its use is misleading for public health understanding of cold-related health impacts. Epidemiology, 2016;27(4):486–491. doi:10.1097/EDE.0000000000000479.
- Tammes P, Sartini C, Preston I, Hay AD, Lasserson D, Morris RW. Use of primary care data to predict those most vulnerable to cold weather: a case-crossover analysis. British Journal of General Practice, 2018;68(668):e146–e156. doi:10.3399/bjgp18X694829.
- Marmot Review Team. The Health Impacts of Cold Homes and Fuel Poverty. Friends of the Earth and the Marmot Review Team, 2011.
- National Institute for Health and Care Excellence. Excess winter deaths and illness and the health risks associated with cold homes. NICE guideline NG6, 2015.
- UK Health Security Agency. Weather-health alerting system: cold-health alerts. 2023 onwards.
- Texas Department of State Health Services. February 2021 winter storm-related deaths, Texas. Revised January 2022; as reported by NPR, 3 January 2022.
