オーストラリアの建物火災:外壁材は改修、バッテリー火災は増加

1930年代、シドニーのセント・ピーターズの工場火災で活動する消防士
歴史写真:セント・ピーターズのコード・テラゾー工場の火災で活動するシドニーの消防隊。撮影はサム・フッド。写真:ニューサウスウェールズ州立図書館(Wikimedia Commons、パブリックドメイン)
外壁材は改修、バッテリーは増加2026年10月4日更新

トレンドの要約

  • オーストラリアの消防が出動する建物火災の数は、10年前とほぼ同じです。燃えやすい外壁材の問題はおおむね対処が進んでいます。いま増えている主なリスクは、倉庫、工場、ごみの流れの中にあるリチウムイオン電池です。
  • 2024-25年度に消防が出動した建物火災は18,073件でした(オーストラリア、生産性委員会)。2022-23年度より7.7%増えましたが、2015-16年度より4.5%少なくなっています。
  • 全国では2024-25年度、建物火災の76.4%が出火した部屋や物の範囲で収まりました。10年間で最も高かった2020-21年度の78.8%からは下がっています。
  • ニューサウスウェールズ州では、外壁材の改修融資制度「プロジェクト・リメディエート」の76棟のうち工事を終えたのは30棟でした(2025年10月時点)。ビクトリア州は事業がほぼ完了したため、「クラッディング・セーフティ・ビクトリア」を廃止する手続きに入っています。
18,073件消防が出動した建物火災、オーストラリア、2024-25年度
76.4%出火した部屋や物の範囲で収まった建物火災の割合、2024-25年度
76棟中30棟工事を終えたニューサウスウェールズ州の改修制度の建物、2025年10月
103件バッテリーが関わったとみられるニューサウスウェールズ州の廃棄物業界の火災、2026年初め

数字が示すこと

全国の基準は、2026年2月3日に公表された生産性委員会の「政府サービス報告2026」(英語)です。2024-25年度に消防が出動した火災101,553件のうち、建物や構造物の中で起きた建物火災は18,073件でした。ニューサウスウェールズ州が6,220件、ビクトリア州が5,961件です。全国の件数はこの10年、年約16,000〜19,000件で推移しています。2015-16年度は18,934件、2021-22年度に15,957件まで下がり、その後は増えています。この数字は住宅と住宅以外の建物を合わせたものです。報告書が別に率を示しているのは失火による住宅火災だけで(住宅火災のページを参照)、州・準州ごとに記録の仕方が少しずつ違うため、州どうしの比較には注意が必要です。

報告書は、火災をどれだけ食い止められたかも測っています。2024-25年度、建物火災の76.4%は出火した部屋、部屋の一部、または物の範囲で収まりました。失火では84.8%でしたが、放火や不審火では64.7%にとどまります。外壁材については、ビクトリア州が1,600棟以上の集合住宅(英語)が「クラッディング・セーフティ・ビクトリア」の支援を受けたとしており、2026年4月には州議会がこの機関を廃止する手続き(英語)を始めました。ニューサウスウェールズ州は遅れています。2021年の州全体の調査で高リスクの集合住宅が338棟見つかりましたが、ABCニュース(英語)が入手した文書では、2025年10月までに工事を終えたのは、制度に残る76棟のうち30棟だけでした。ほかの多くの管理組合は制度を離れ、政府の支援なしに工事を進めています。

背景にあるもの

オーストラリアの外壁材政策を形づくったのは、メルボルンの2つの高層ビル火災です。2014年11月25日、ドックランズのラクロス・ビルで8階のバルコニーに置かれたたばこがアルミ複合パネルの外壁に燃え移り、炎が建物の外側を駆け上がりました。メトロポリタン消防局の事後報告(英語)は、外壁材が急速な延焼の原因だったとしています。2019年2月には、スペンサー・ストリートのNeo200タワー(英語)でも同じような火災が外壁を伝って広がりました。その後、両州は建物を調査し、最も危険なパネルを規制し、改修事業を立ち上げました。もう一つの大きな教訓は介護施設です。2011年11月18日にシドニーのクエーカーズ・ヒル老人ホームで起きた放火事件では、14人の死亡について検視審問(英語)が行われました。この施設にはスプリンクラーがなく、ニューサウスウェールズ州は現在、すべての高齢者向け入所施設にスプリンクラーを義務づけています。

いま増えているリスクは、ためこまれたエネルギーです。ニューサウスウェールズ州消防救助局は2025年に332件のリチウムイオン電池の事案を記録しました。同州環境保護庁(EPA)(英語)によると、2026年4月初めまでに、ごみ収集車、廃棄物処理施設、処分場で少なくとも12件のバッテリー火災があり、さらにバッテリーが関わったとみられる廃棄物業界の火災が103件ありました。同州では2026年10月1日から、バッテリーの供給業者に回収を義務づける規則が適用されます。大量のバッテリーは倉庫火災の消火も難しくします。2025年1月には、3,000個のリチウムイオン電池(英語)を保管していたチェルトナムの倉庫から出た火で2棟が焼け、熱暴走の危険があるため隊員が夜通し現場にとどまりました。

最近の事例

  • 2026年9月28日:ビクトリア州消防救助局が、タラマリンにある30メートル四方のティルトアップ工法の工場の火災を食い止め、近隣への延焼を防ぎました(FRV、英語)。
  • 2026年4月7日:2026年の最初の数か月で、地域でのバッテリー火災が62件、ごみ収集車と廃棄物処理施設での火災が少なくとも12件起きたことを受け、ニューサウスウェールズ州環境保護庁がバッテリーの義務的な規則を発表しました(NSW EPA、英語)。
  • 2026年3月27日:シドニーの電動自転車の倉庫で起きた大規模な火災を、100人以上の消防士が鎮圧しました(ニューサウスウェールズ州消防救助局、英語)。

報道発表・公式報告(2023〜2026年)

直近4年分の主な発表を、1年に5件ずつ、新しい順に載せています。多くはオーストラリア連邦政府、州・準州の機関、規制機関、事故調査機関、国の統計機関の発表で、出来事を最もはっきり記録しているものに限り報道も含めています。タイトルは原文(英語)のままです。2007〜2022年の発表は、2023年の後にある折りたたみリストにあります。

2026

2025

2024

2023

オーストラリアの建物火災に関する主な発表20年分を見る(2007〜2026年)2007〜2022年の24件、1年に最大5件、新しい順

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

さかのぼった年には5件に満たないところがあります。オーストラリア政府の古い発表の多くは元のアドレスで公開されておらず、見つけて確認できたものだけを載せているためです。

写真リスト

市中心部で路面電車の線路をまたいで止まるメルボルンの消防車
資料写真:スペンサー・ストリートで路面電車の線路をまたいで止まるメルボルンの消防車、2012年。写真:Kevin Anslow(Wikimedia Commons、CC0)
航空ショーで展示されたカントリー消防局の消防車
資料写真:ビクトリア州アバロンで開かれた2009年オーストラリア国際航空ショーのカントリー消防局(CFA)の車両。写真:High Speed Chaser(Wikimedia Commons、CC BY 3.0)

このページのつくり方 数値は上にリンクした公式の統計発表によります。暫定値は後で改訂されるため、そう明記しています。オーストラリアの統計は州・準州ごとに別々に公表されることが多く、会計年度は7月から翌年6月までのため、それぞれの数値がどの地域・期間のものかを書いています。写真はパブリックドメインまたはクリエイティブ・コモンズの画像で、各キャプションに出典を記しています。「資料写真」は説明のためのもので、キャプションに書いていない限り、記事中の出来事を写したものではありません。このページは動向をまとめたもので、個人の安全・医療・法律・金融に関する助言ではありません。